BtoBマーケティング
BtoBマーケティングは、ターゲット企業に自社を知ってもらい、検討を進めてもらって、営業が商談を獲得するまでを、マーケティングと営業で分担する取り組みです。
BtoBマーケティングとは、企業を顧客とする会社が、ターゲット企業に自社の商品・サービスを知ってもらい、検討を進めてもらって、営業が商談を獲得するまでの取り組みです。BtoBはBusiness to Businessの略で、企業どうしの取引を指します。マーケティング部門の施策だけを指すこともありますが、この記事では、営業と分担して商談を獲得するまでの取り組み全体の意味で使います。
展示会や資料請求でリードは集まっているのに、商談の数が増えない。GA4とMAとSFAの数字が部署ごとに分かれていて、どの施策から商談が生まれたかを経営に説明できない。BtoBマーケティングを任された担当者や責任者から、よく聞く悩みはこの2つです。原因の多くは、施策を増やす前に、どの会社に・どの順番で当たるかと、成果をどう数えるかが決まっていないことにあります。
この記事では、BtoBマーケティングの意味とBtoCとの違いを整理し、認知・興味・検討・商談獲得の4段階に並べた施策の具体例、進める5つの手順、見る指標を紹介します。BtoBマーケティングに向いている人や、BtoB営業が大変だと言われる理由にも、よくある質問で答えます。
目次
BtoBマーケティングは、ターゲット企業からの商談獲得までを、マーケティングと営業が分担して進める取り組みです。
会社として最後にめざすのは受注です。そのうちマーケティングが営業と一緒に追う目標は、ターゲット企業からの商談獲得です。資料請求や問い合わせで取れるリードの件数は、商談に向かう途中の数字で、ゴールではありません。BtoBの商談は、1社の中で複数の担当者が情報を集め、社内で比べたあとに始まるからです。
対象は、まだ取引の無い会社だけではありません。取引のある会社の別の事業部や、担当者が替わって検討が止まった会社も、ターゲット企業に入れて同じ段階で数えます。既存の取引先は契約の窓口とは別の部署に課題があることもあり、新規の会社より商談に進みやすい場合もあります。
分担のしかたは会社によって違います。リードを集めるマーケティング、連絡して検討を進めるインサイドセールス、提案から受注までを受け持つフィールドセールス、契約後を支えるカスタマーサクセスの4つに工程を分ける体制は、The Model(ザ・モデル)と呼ばれます。分業と各工程の数字の決め方は「The Modelとは?BtoBマーケ・セールスでの4つの分業とKPIの決め方」で紹介しています。
BtoBマーケティングの進め方のうち、先に狙う会社を名前で決め、会社ごとに施策と営業の対応をそろえる考え方を、ABM(アカウントベースドマーケティング)と呼びます。誰に・何を・どこで売り、成果をどう数えるかを決める計画は、GTM戦略(Go-to-Market戦略)です。
GTM戦略は全体の計画、ABMは狙う会社の選び方と施策の合わせ方、The Modelは部署の分け方と言い分けられます。BtoBマーケティングは、GTM戦略の「誰に・何を」を具体的にし、毎月の施策と営業の対応に落とし込む取り組みです。

BtoBは、部署をまたぐ複数の担当者が時間をかけて比べ、会社として決める点がBtoCと違います。

| 比べる点 | BtoBマーケティング | BtoCマーケティング |
|---|---|---|
| 買う相手 | 企業(部署や事業部) | 個人や家族 |
| 決める人 | 現場の担当者、上長、情報システム、購買など複数 | 本人、多くても家族 |
| 検討の期間 | 上長や購買の承認を順に得るため、長くかかることが多い | その場で決まるものも多い |
| 1件の取引の金額 | 大きく、年単位の契約も多い | 小さいものが多い |
| 決め方 | 費用対効果と社内の説明を重く見る | 好みや気分も入る |
| 数える単位 | 会社(1社の担当者が2人でも1社) | 人や購入の件数 |
| 営業の関わり | 商談から受注まで営業が受け持つことが多い | 営業が関わらない売り方が多い |
この違いから、BtoBマーケティングでは「何人が資料を請求したか」に加えて、「どの会社が、どの段階まで進んだか」を数えます。
たとえば経費精算のクラウドサービス(架空)なら、経理の担当者が気に入っても、上長・情報システム・購買の承認がそろうまで契約は決まりません。同じ会社から3人が別々に資料を請求しても、商談につながる会社は1社です。人の件数だけを見ていると、同じ会社への連絡が重なったり、まだ名前の分からない会社の検討を見落としたりします。
施策を認知・興味・検討・商談獲得の4段階に並べると、どの段階の施策が抜けているかを確かめられます。

| 段階 | 相手の状態 | 施策の具体例 | 主な担当 |
|---|---|---|---|
| 認知 | 課題に気づき、解き方を調べ始める | 検索で読まれる記事、広告、展示会、プレスリリース | マーケティング |
| 興味 | 解き方や他社の例を集める | ホワイトペーパー、セミナー・ウェビナー、メールマガジン | マーケティング |
| 検討 | 社内で比べ、複数の担当者が情報を集める | 導入事例、比較の資料、個別の相談会、インサイドセールスの連絡 | マーケティング、インサイドセールス |
| 商談獲得 | 日程が決まり、面談する | 課題と時期を聞いたうえでの提案、営業の訪問 | インサイドセールス、フィールドセールス |
たとえば、経費精算のクラウドサービスを売る会社(架空)なら、次のように並べます。
段階が進むほど会社の数は絞られるため、この並びはファネル(じょうご)とも呼ばれます。4段階に並べると、認知の施策ばかりで検討の段階に置く資料が無い、といった抜けが分かります。施策の数を増やす前に、どの段階に何が無いかを確かめます。
業界では、リードを集める活動をリード獲得(リードジェネレーション)、検討を育てる活動をリードナーチャリング、商談に進める会社を見極める活動をリードクオリフィケーションと呼びます。4段階に当てはめると、認知と興味がリード獲得、興味と検討がリードナーチャリング、検討から商談獲得の間がリードクオリフィケーションにあたります。
| 手法 | 向いている段階 | 使いどころ |
|---|---|---|
| SEO記事(オウンドメディア) | 認知・興味 | 担当者が課題や解き方を検索する場面 |
| リスティング広告 | 興味・検討 | サービスの種類や名前で検索している場面 |
| ディスプレイ広告・SNS広告 | 認知 | 業種や役職を絞って、自社と課題を知ってもらう |
| 展示会 | 認知・興味 | 担当者と直接話し、名刺を交換する |
| セミナー・ウェビナー | 興味・検討 | 解き方を詳しく説明し、参加者の課題を聞く |
| ホワイトペーパー | 興味 | 確認表や手順書を読んでもらい、名前が分かる |
| メールマガジン | 興味・検討 | 今は検討していない会社に、時期をあけて案内する |
| サービスサイト・LP | 興味・検討 | 製品の説明・料金・事例を読み、資料請求や問い合わせに進んでもらう |
| 導入事例 | 検討 | 同じ業種の会社の効果を、社内の説明に使ってもらう |
| インサイドセールス | 検討・商談獲得 | 課題と時期を聞き、商談の日程を決める |
| 会社ごとの提案資料(ABM) | 検討・商談獲得 | ターゲット企業の課題に合わせて、個別に用意する |
| 取引先の別の事業部への案内 | 検討・商談獲得 | 契約中の窓口から、課題のある別の部署を紹介してもらう |
手法の良し悪しは、ターゲット企業がどの段階にいるかで決まります。認知の段階の会社に個別の提案資料を送っても読まれにくく、検討の段階の会社に展示会の案内だけを送っても商談の日程は決まりません。
部署ごとの転換率を引き継ぐ分業のやり方だけでは、商談が増えにくくなりました。
The Model型の分業は、リードが想定した率で商談に進むことを前提にしています。ところが、この前提を崩す変化が4つ重なっています。

4つの変化が重なると、リードの件数を増やしても商談の数がついてきません。電話の件数やメールの配信数を増やすほど、断られる会社や迷惑メールに振り分ける会社も増え、同じ会社に次に連絡しにくくなります。リードを集める量から、どの会社に・どの順番で・誰が当たるかの設計に、重心が移っています。
3つ目の変化は、買い手の調べ方そのものの変化です。調べるときにAIを使う担当者もいて、「〇〇のおすすめは?」とAIに聞き、答えに名前の出た会社から候補を選ぶことがあります。
営業から連絡するころには、比べる候補がほぼ決まっていることになります。認知と興味の段階で、検索の結果やAIの答えに自社の名前と考え方が出ているかどうかが、検討の段階に入れるかを左右します。
もう1つの壁は、ツールの数です。マーケティングはGA4とMA、インサイドセールスはMA、営業はSFAを見ています。同じターゲット企業のデータが、別々の画面に分かれます。
たとえば架空の「サンプル精機株式会社」では、GA4にはどの会社か分からない訪問の数、MAにはリードの件数と架電の数、SFAには商談の数が残り、1社の動きを1か所で読めません。会社の名前で各ツールのデータを1行に集めると、その会社がどの段階にいて、次に誰が当たるかが分かるようになります。
ターゲット企業を決めてから、価値・施策・ツールの役割・数え方の順に整え、毎月の定例で見直します。
この順番は、「GTM戦略の立て方|BtoBマーケ・セールスで答える4つの問いと策定手順」で紹介している4つの問い(誰に・何を・どこで・どう数える)に答える順番とそろえています。
過去1年に受注した会社と失注した会社を並べ、業種・規模・部署・最初の接点の共通点を探します。共通点を条件に書いたもの(ICP・理想顧客プロファイル)ができたら、その条件に合う会社を名前で一覧にします。あわせて、その会社の中で誰が課題を持ち、誰が決めるかをペルソナとして書いておくと、ステップ2の価値の1文を書きやすくなります。
業種と規模だけで止めると、施策の対象が広がりすぎて、営業が当たる順番を決められません。
機能の一覧ではなく、ターゲット企業の担当者が困っていることを主語にして、自社が何を解決するかを1文で書きます。たとえば経費精算のクラウドサービス(架空)なら、「インボイス対応で増えた経理の確認作業を、月末に残さない」のように書きます。
あわせて、比べられる他社のサービスと何が違うかを1文で書き添えます。相手の課題と、自社だから出せる答えを組にしたものを、バリュープロポジションと呼びます。この2文が、記事の見出し、資料の題、営業のトークの軸になります。
認知・興味・検討・商談獲得の4段階ごとに、置く施策と担当を割り振ります。
あわせて、マーケティングからインサイドセールスへ引き継ぐ基準と、インサイドセールスからフィールドセールスへ引き継ぐ基準、それぞれの連絡の期限を、部署の間で合意します。前の基準を満たしたリードをMQL(Marketing Qualified Lead)、後の基準を満たしたリードをSQL(Sales Qualified Lead)と呼びます。
基準が無いと、引き継いだ会社に誰も連絡しないまま止まります。段階ごとの相手の行動と気持ちを並べたカスタマージャーニーマップがあれば、施策を選ぶ下書きに使えます。
入っているツールを1行ずつ書き出し、どの段階を数えるツールかを1つずつ割り当てます。
| ツール | 使う部署 | 数えるもの | 見えないこと |
|---|---|---|---|
| GA4 | マーケティング | サイトへの訪問、流入、ページの閲覧 | どの会社が訪れたか |
| MA | マーケティング、インサイドセールス | 名前の分かった人の行動とスコア | 名前の分からない会社、営業の結果 |
| SFA | フィールドセールス | 商談、見込みの金額と時期 | 商談になる前の会社 |
| CRM | カスタマーサクセス | 契約と対応の履歴 | 同じ会社の別の事業部 |
| 企業データ・インテントデータ | マーケティング | 会社の業種・規模、サイトの外で調べているテーマ | 誰が何をするか |
どのツールも、名乗る前の会社、社内で比べている間の会社、営業のあとの結果の3か所は数えていません。名乗る前の会社と社内で比べている間の会社は、アクセスした企業のデータやサイトの外で調べているテーマのデータで補い、営業のあとの結果はSFAに選択肢の欄を設けて戻します。
ツールを入れ替えなくても、会社の名前でデータを1行に集めれば、1社の動きを1行で読めるようになり、3か所の抜けにも気づきやすくなります。ツールの種類と選び方は「BtoBマーケティングツールの種類|12種類を役割と悩みで選ぶ」で紹介しています。
月に1回、マーケティングと営業が集まり、ターゲット企業ごとに段階の移りと商談の結果を確かめます。営業の結果は、提案に進む・継続・保留・見送りのような決まった選択肢で返してもらいます。定例では、段階が進んだ会社、止まったままの会社、新しく検討に入った会社の順に見直します。商談につながった施策は翌月も続け、止まっている段階には施策を加えます。
リードの件数に加えて、ターゲット企業が段階ごとに何社いるかと、商談化率を見ます。
| 指標 | 数え方 | 分かること |
|---|---|---|
| リードの件数 | 資料請求・問い合わせ(CV=コンバージョン)・名刺の件数 | 興味の段階の施策の反応。補助の数字として見る |
| 段階ごとの社数 | 認知から商談獲得までの段階に、ターゲット企業が何社いるか | どの段階で会社が止まっているか |
| 商談化率 | 商談になった会社の数÷リードを取れた会社の数(同じ期間で) | 引き継ぎの基準と、連絡の順番が合っているか |
| 商談の数 | 日程が決まり、面談をした数 | ゴールに近づいているか |
| 施策ごとの商談の数 | 商談になった会社が、それまでに接した施策 | 翌月も続ける施策 |
段階は、会社ごとに決まった基準で判定します。たとえば、まだ接点の無い会社も含めてリードを取れていない会社は認知、資料のダウンロードやセミナーの参加でリードを取れた会社は興味、課題と時期を聞けた会社や複数の担当者が接した会社は検討、日程が決まり面談をした会社は商談獲得、のように決めます。基準は営業と合意し、毎月同じ基準で数えます。
| 段階 | 9月(見本・架空) | 10月(見本・架空) | 読み方 |
|---|---|---|---|
| 認知 | 150社 | 135社 | 15社が興味から先の段階に移った |
| 興味 | 30社 | 38社 | 資料とセミナーでリードを取れた会社が増えた |
| 検討 | 15社 | 19社 | 課題と時期を聞けた会社が増えた |
| 商談獲得 | 5社 | 8社 | 商談獲得の段階が3社増えた |
ターゲット企業200社(架空)を段階ごとに数えると、どの段階から会社が動いたかが分かります。この例なら、10月は興味と検討の施策が効いており、11月も同じ施策を続けながら、認知の段階に残る135社への施策を見直します。
商談の目標は、受注の目標を過去の受注率で割って逆算します。受注10社が目標で、商談からの受注率が25%なら、商談は40社が目安です(数字は架空)。何を商談と呼ぶかは会社によって違うため、営業と合意した定義で数えます。
リードの件数だけを報告していると、件数が増えた月に商談が減っていても気づけません。商談から逆にたどって施策の効果を確かめる方法は、「BtoBマーケティングの効果検証|商談から逆にたどる4つの手順」で紹介しています。
同じターゲット企業の一覧を見ながら、段階ごとに誰が当たるかを合意し、結果を同じ一覧に戻します。

新しい商材や事業を任された事業部では、施策を本社のマーケティング部門が実施し、営業を事業部が受け持つことがよくあります。施策を実施する部署と、ターゲット企業に当たる部署が違うため、同じターゲット企業の一覧を両方が見て、段階ごとに誰が当たるかを合意しておくと、連絡の重なりと抜けを防げます。
マーケティングは、ターゲット企業の担当者が課題を調べ始める段階から施策を置きます。施策を実施したら、どの会社が反応したかを会社の単位でまとめ、インサイドセールスと共有します。
インサイドセールスは、検討の段階に進んだ会社から連絡します。連絡の文面は相手の課題で書き、サイトの閲覧のような相手の行動には触れません。行動は、連絡する順番と、案内する資料を選ぶときの手がかりに使います。
フィールドセールスは、商談のあとに会社ごとの結果を選択肢で返します。選択肢は「提案に進む」「継続(検討は続くが時期が先)」「保留(社内の事情で止まった)」「見送り(今回は採用しない)」のように、迷わず選べる4つ程度にします。
結果が戻ると、マーケティングは商談につながった施策を確かめ、翌月の施策を直せます。
失敗の多くは、施策の数よりも、決める順番と数え方の抜けから起こります。
広告や展示会を先に決めると、誰に当てる施策かが後から決まります。施策ごとにリードは取れても、ターゲット企業の商談につながらず、どの施策を続けるかを判断できません。施策を選ぶ前に、ターゲット企業の一覧と価値の1文を先に作り、施策はその会社に合わせて選びます。
リードの件数は、ターゲット企業以外の会社や、同じ会社の複数の担当者も含みます。件数が増えても商談が増えない月が続き、経営への説明に困ります。段階ごとの社数と商談の数を並べて報告します。リードの件数は、興味の段階の施策の反応として補助に添えます。
GA4・MA・SFAの数字を部署ごとに報告すると、同じ会社を別々の数字で数え、どこで止まっているかを説明できません。会社の名前で1行にまとめる一覧を、1つ作ります。ツールを入れ替える前に、どのツールのデータを、どの列に集めるかを話し合うところから始めます。
商談のあとの結果が戻らないと、マーケティングは商談につながった施策を確かめられず、同じ施策をくり返します。結果を返す欄と選択肢を用意し、毎月の定例で見直します。結果を書く手間を減らすため、SFAの項目に選択肢を加えるか、定例の場で口頭で聞いて書き込みます。
ABMの記事で狙う会社の決め方を、インサイドセールスの記事で商談の手前の連絡の仕方を確かめられます。
今日できることは、先月実施した施策を4段階の表に書き出すことです。施策が1つも無い段階と、ターゲット企業が止まっている段階が、最初に直す場所になります。
ウルテク(URUTEQ)は、ABM(アカウントベースドマーケティング)の考え方で、ターゲット企業からの商談獲得を仕組み化するBtoBマーケティング・営業支援サービスです。マーケティング施策の結果、営業の対応、サイトの外で調べているテーマを企業ごとに分析し、アプローチの抜け漏れと、商談につながった施策を解析します。毎月の定例で商談の結果を確かめ、翌月の施策に反映します。ターゲット企業の選定から効果の検証まで、ウルテクチームが並走します。
電話とメールで担当者に連絡が取りにくくなった変化と、同じ会社のデータが部署ごとの画面に分かれる問題、ツールごとに数えるものと見えないことの整理は、「商談獲得までのBtoBツール役割マップ」で図にしています。
ウルテクについて、もっと詳しく知りたい方へ