BtoBマーケティング
インサイドセールス
マーケティングが渡したリードを、営業が追いきれないときは、渡す量を営業の持ち時間に合わせ、渡す条件と対応期限を先に決めます。
セミナーと資料請求で、今月もリードは集まった。営業に渡した。ところが月末に聞くと、半分以上が手つかずのまま残っている。あなたのチームでも、そんな月が続いているかもしれません。
営業に聞けば「質の低いリードが多い」と返ってきます。マーケティングから見れば「渡したのに追ってくれない」です。どちらの言い分にも根拠があり、話し合っても平行線になりがちです。
原因の多くは、人の努力より、渡し方の決めごとにあります。決めごとが空いたまま件数だけを増やすと、手つかずの山が毎月積み上がります。
目次
リードの受け渡しとは、マーケティングがリードの情報を営業に送り、誰が・いつまでに・何をするかを両部門で約束することです。約束が無いまま情報だけを送ると、受け取った営業の都合で後回しになります。
多くの会社では、メールやチャットで「この会社が資料を請求しました」と営業に知らせます。知らせた時点で、マーケティングの仕事は終わったことになっています。営業の側から見ると、知らせは届いても、いつまでに何をすればよいかは書かれていません。
マーケティングと営業のあいだでは、MQL(マーケティングが営業に渡せると判断したリード)と SQL(営業が商談の対象と認めたリード)という区分がよく使われます。
CRM で区分を管理するなら、HubSpot のライフサイクルステージの説明(2026年10月確認)のように、ライフサイクルの段階の名前と、次の段階に移る条件を先に定めておきます。言葉が同じでも、移る条件が部門ごとに違えば、すれ違いは残ります。
マーケティングが渡したリードを営業が追いきれないのは、渡す量が営業の持ち時間を超え、どれから手を付けるかも決まっていないからです。細かく分けると、理由は4つあります。
営業は、既存のお客様の対応と進行中の商談を抱えています。新しく渡されたリードに使える時間は、マーケティングが思っているより短いことがあります。マーケティングの目標がリードの件数だけだと、件数が増えるほど、営業の手元には手つかずの山が積み上がります。
マーケティングは「資料を請求した人」を渡し、営業は「予算と時期が決まっている会社」を待っている。条件が言葉にされていないと、渡されたリードの多くが営業の基準に合わず、全部が後回しになります。
たとえば40件が同じ重さで並んでいると、営業は知っている会社や話しやすそうな相手から手を付けます。その結果、ターゲット企業のリードが後ろに回ることがあります。優先度は、渡す側が付けて渡します。
電話がつながったか、断られたか、商談の日程が決まったか。結果が戻らないと、マーケティングは翌月も同じ条件で渡し続けます。条件を直す材料が無いので、すれ違いが毎月くり返されます。
4つのうち、最初に直すのは量です。量が持ち時間に収まらないうちは、条件や優先度を整えても、手つかずの山は残ります。
営業とマーケティングの考え方の違いそのものは「営業とマーケの溝とは」で詳しく書いています。
渡したリードを営業が追いきれないまま続けると、商談になりえた会社への連絡が遅れ、同じ会社への二重の連絡も起きやすくなります。どちらも、件数の報告だけでは表に出てきません。
| 起きること | マーケティングから見えること | 営業から見えること |
|---|---|---|
| 連絡の遅れ | 渡したのに、2週間たっても結果が来ない | 気づいたときには、相手の検討が終わっていた |
| 二重の連絡 | メールで案内した会社に、営業も電話していた | 電話したら「先日メールが来た」と言われた |
| 条件が直らない | 翌月も同じ条件で渡している | また同じような会社ばかり来る |
| 予算の説明ができない | 件数は達成したのに、商談の数で説明できない | どのリードが商談になったか、記録が残っていない |
表のどの行も、片方の部門だけでは気づけません。マーケティングと営業が同じ表を見て初めて、どこで止まっているかが分かります。
いちばん大きいのは最後の行です。来期の予算を決める場で、件数は説明できても、商談の数では説明できない。その状態が続くと、施策そのものを続けるかどうかの議論になります。
営業が追いきれるリードの量は、初回対応に使える週の時間を、1件の初回対応にかかる時間で割って出します。出た数が、1週間に営業へ渡せるリードの上限です。
架空の例で計算します。営業が3人いて、新しいリードの初回対応に使える時間は1人あたり週4時間、合わせて週12時間です。1件の初回対応には、相手の会社を調べる15分と、電話やメールの15分で30分かかるとします。
週12時間を30分で割ると、週24件が上限です。マーケティングが週60件を渡していれば、毎週36件が手つかずで残ります。4週で144件。月末に半分以上が残るのは、計算どおりの結果です。
図1のように、上限を超えた分は捨てずに、渡し先を変えます。マーケティングがメールやセミナーの案内で接点を保ち、検討が進んだ時点で営業に渡します。
計算に使う週の時間は、マーケティング側で見積もらず、営業の責任者に聞きます。「新しいリードに、1人あたり週何時間なら確実に使えますか」と聞けば答えやすくなります。答えが週2時間なら、上限は半分になります。
1件あたりの時間は、実際に10件ほど対応してもらい、平均を出します。調べる時間を省くと1件は短くなりますが、電話の中身が薄くなり、つながっても話が続きません。営業やインサイドセールスの人数が多い場合も、同じ式で人数分の時間を足します。
インサイドセールスや外部のテレマが間に入ると、リードは2回渡ります。マーケティングからインサイドセールスへ渡す量は、インサイドセールスの持ち時間で計算します。インサイドセールスから営業へ渡す条件(たとえば商談の日程が決まった会社)は、それとは別に決めておきます。
リードの受け渡しは、①対象の会社をそろえる、②渡す条件、③優先度と期限、④知らせの項目と結果の戻し方を文章で決める、⑤渡す条件を月1回直す、の5つの手順で見直します。1回の打ち合わせで全部を決める必要はありません。
最初に、どの会社に時間を使うかを1つの一覧にします。ターゲット企業の一覧と、外す会社(既存のお客様・商談中・競合)の一覧です。マーケティングと営業が別々の一覧を持っていると、この時点ですでに条件がずれています。
条件は「会社」「人」「接点」の3つを組み合わせて書きます。たとえば「ターゲット企業の一覧に入っている会社で、課長以上の人が、料金の資料を請求した」。条件を文章にしておくと、営業は渡された理由をその場で確かめられます。
渡すリードを優先度A・B・Cに分け、優先度ごとに誰がいつまでに何をするかを決めます。期限は、営業の持ち時間で守れる長さにします。
| 優先度 | 条件の例 | 誰が・いつまでに・何をするか |
|---|---|---|
| A | ターゲット企業で、問い合わせか料金の資料の請求があった | 営業が2営業日以内に電話する |
| B | ターゲット企業で、セミナーに参加した・事例の資料を請求した | 営業が5営業日以内にメールで連絡する |
| C | ターゲット企業の外、または情報収集の段階 | 営業に渡さず、マーケティングがメールで接点を保つ |
期限を過ぎたリードは、翌営業日にマーケティングへ戻すと決めておきます。優先度Cを営業に渡さないと決めると、Cに当たる件数の分だけ営業の手元の件数が減ります。営業から見れば、届くリードはすべて「期限のある仕事」に変わります。訪問者の多くはすぐに検討を始めていない、という前提は「訪問者の95%は今すぐ客ではない」でも書いています。
渡すときの知らせには、営業が会社を調べ直さなくて済む項目を添えます。結果は選択肢から選んで書いてもらい、自由に書く欄は別に1つだけにします。
| 添える項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 会社名と優先度 | 会社名、AかBのどちらか |
| 渡す理由 | どの条件に当てはまったか(例:料金の資料を請求) |
| これまでの接点 | 過去の商談・名刺交換・セミナー参加の有無と日付 |
| 期限 | 何日までに、電話かメールか |
| 結果の書き場所 | CRM の項目名か、共有の表の列 |
結果の選択肢は、次の5つで足ります。5つに絞ると、月末に数えるときに迷いません。
知らせの文面は、たとえば次の1行です。「〈会社名〉(優先度A):料金の資料を請求。昨年10月に名刺交換あり。10日までに電話をお願いします。結果は CRM の『初回結果』に」。読んだ営業が、そのまま電話をかけられる形にします。
月に1回、マーケティングと営業の責任者が30分集まり、次の章の4つの数字を見ます。直すのは1回に1か所までにします。一度に条件を変えると、何が効いたのか分からなくなります。
ライフサイクルの段階の言葉や KPI のそろえ方は「マーケ×営業の共通言語となるKPIツリーの作り方」にまとめています。部門をまたいで数字を持つ役割については「RevOps(レベニューオペレーション)とは」も参考になります。
リードの受け渡しがうまくいっているかは、渡した件数に加えて、期限内に初回対応ができた割合と、商談になった数で確かめます。件数だけを追うと、手つかずの山が増えても数字は良く見えます。
| 数字 | 数え方 | 低いときに見直すこと |
|---|---|---|
| 渡した件数 | 優先度AとBで渡したリードの数 | 上限を超えていないか |
| 期限内の初回対応率 | 期限内に初回対応ができた件数 ÷ 渡した件数 | 量か期限のどちらかが無理になっていないか |
| 結果の戻り率 | 結果が書かれた件数 ÷ 渡した件数 | 選択肢と書き場所が使いやすいか |
| 商談になった数 | 日程が決まり、面談をした会社の数 | 渡す条件が営業の基準と合っているか |
架空の例です。あなたのチームがある月に40件を渡し、期限内に初回対応ができたのが30件なら、期限内の初回対応率は75%です。翌月に渡す件数を30件に減らして率が90%を超えれば、量が原因だった可能性が高いと判断できます。
商談は「日程が決まり、面談をしたもの」と数えると、部門ごとに数え方がずれません。日程が決まった時点と面談をした時点は分けて記録し、面談をした日は CRM の商談の記録に残します。
リードの受け渡しの見直しで失敗しやすいのは、営業が書く項目を増やしすぎることと、渡すかどうかを1つの物差しだけで一律に決めることです。どちらも、決めごとを守る手間を営業に寄せてしまいます。
会社ごとの担当は、手順1の一覧に「担当者」の列を足して決めます。BtoB の大きな商材では、1社の中で複数の人が同時に検討していることがあります。
セミナーのあとに参加者をどう渡すかは「ウェビナー後のフォロー方法」で、優先度Cに置いたリードへの案内は「休眠リード掘り起こしの鉄板シナリオ」で詳しく書いています。
会社ごとの検討段階で営業に渡す会社を絞る方法では、ターゲット企業ごとに検討段階を記録し、新規リードの段階に進んだ会社を優先して営業に渡します。営業が当たる会社が絞られ、1社ずつに使える時間が増えます。
ここでの検討段階は、会社の区分です。HubSpot などのライフサイクルの段階(MQL・SQL)がリード、つまり人の区分なのとは別に持ちます。ウルテク(URUTEQ)では、会社ごとの検討段階を次の5つに分けています。
| 会社ごとの検討段階 | 判定の条件 |
|---|---|
| 商談 | 日程が決まり、面談をした |
| 新規リード | 基準日のあとに、初めてリードを取れた(セミナー・フォーム・展示会など) |
| 既存リード | 基準日より前からの接点がある(名刺・過去の商談など) |
| サイト訪問 | 来訪が分かっている。リードはまだない |
| 空白 | 接点も来訪もない |
上から順に判定し、最初に当てはまった段階に入れます。どの段階の会社を営業に渡すかは、手順2と手順3の条件で決めます。
この形は、ABM(アカウントベースドマーケティング)の考え方と同じです。レクシスネクシス・ジャパン様の事例(2026年10月確認)では、マーケティング側から営業チームへ「毎週5件の高品質な営業リストを提供する」というKPIを設定しました。週5件に厳選したリストから、好調時は半数以上が商談化しています。
この事例で渡す前に外していたのは、既存のユーザーと営業中の企業でした。手順1の外す一覧と同じ考え方です。
量と条件を数字と文章で決めておけば、次の打ち合わせでは「何件を、どの条件で渡すか」を話し合えます。あなたのチームでは、営業が新しいリードに使える時間は週に何時間でしょうか。
まだ聞いていなければ、来週の打ち合わせで営業の責任者に、その時間を1つだけ聞いてみてください。来月から渡す件数は、その答えから決まります。
ウルテクについて、もっと詳しく知りたい方へ