BtoBマーケティング
ハウスリストは自社と接点のある企業と担当者の一覧です。状態で分け、優先順位を付けて案内すると、商談につながりやすくなります。
展示会のたびに名刺が増え、資料請求のリードもたまっていく。それなのに、そのリストから商談が生まれているかを聞かれると、答えに詰まる。ハウスリストを持つBtoB企業では、よくある状況です。
原因は、件数の少なさではないことが多いです。誰が、いつ、どんな接点を持ち、いまどの状態にいるかが書かれていないため、どの会社から連絡すればよいかが決まらないのです。
目次
ハウスリストとは、展示会の名刺、問い合わせ、資料請求、セミナーの申込、過去の商談など、自社と接点を持った企業と担当者の情報を集めた一覧です。外から買ったリストとは違い、相手がいつ、どの接点で自社を知ったかが分かる点が特徴です。
BtoBでは、1つの会社に複数の担当者がいます。そのため、ハウスリストは「担当者の一覧」と「企業の一覧」の2つの単位で見ると扱いやすくなります。同じ会社の担当者が3人いても、企業としては1社です。
似た言葉との違いは、情報の出どころと、接点があるかどうかで分けると整理できます。
| 言葉 | 中身 | 接点 |
|---|---|---|
| ハウスリスト | 自社が集めた企業と担当者の一覧 | ある |
| リード(リードリスト) | ハウスリストのうち、見込み顧客として追う担当者 | ある |
| 購入リスト | 外部の会社から買った企業や担当者の一覧 | ない |
| ホワイトリスト | 受信する側が、受け取りを許可した送信元やドメインの一覧(迷惑メール対策の言葉) | 接点とは別の話 |
ホワイトリストは受信する側の設定の名前で、送る側が持つハウスリストとは別物です。購入リストの扱い方は、別の記事「営業リストを購入する前に決めること」で、費用と法律の確認点を書いています。この記事では、すでに手元にある接点の一覧を扱います。
ハウスリストの相手は一度は自社の名前や商材に触れているため、初めての会社より話を聞いてもらう理由を作りやすく、商談獲得に役立ちます。
名刺を交換した展示会の名前、読んだ資料の題名、前回の商談で聞いた課題。こうした接点の記録があれば、案内の1行目に「前回お話しした〇〇の件で」と書けます。購入リストでは、この1行が書けません。
もう1つの理由は、費用です。手元の名簿への案内は、広告や展示会で新しいリードを取るより広告費や出展費がかかりません。ただし、件数が多いほど放置される名刺も増えます。名刺が数千件あっても、記録が名前と会社名だけなら、どこから連絡すればよいかは決まりません。
ここで1つ問いが残ります。同じリストでも商談が生まれる会社と生まれない会社があるのは、なぜでしょうか。答えは、項目と状態の書き方にあります。
ハウスリストには、連絡先に加えて、接点の記録と、いまの状態を書く列を入れます。連絡先しかないリストは、案内を一斉に送ることにしか使えません。
| 分類 | 項目 | 何に使うか |
|---|---|---|
| 企業 | 会社名・法人番号・業種・従業員規模・ターゲット企業かどうか | 同じ会社をまとめ、優先する会社を決める |
| 担当者 | 氏名・部署・役職・メールアドレス・電話番号 | 誰に連絡するかを決める |
| 接点 | 最初の接点(展示会名など)・取得日・最後の接点日 | 案内の1行目と、連絡の時期を決める |
| 関心 | 聞いた課題・読んだ資料・申し込んだセミナー | 案内する資料の題材を選ぶ |
| 状態 | 未アプローチ・連絡不通・未商談化・商談実施・失注など | 連絡の順番と、送る案内を分ける |
| 同意 | メール配信の同意の有無・配信停止の日 | 案内を送ってよい相手を確かめる |
法人番号は、国税庁の法人番号公表サイトで調べられる13桁の番号です。会社名の表記が「(株)」と「株式会社」で揺れても、同じ会社としてまとめられます。
列を決めたら、誰が更新するかも書いておきます。接点と関心の列はマーケティングが、状態の列のうち商談実施と失注は営業が書く、というように列ごとに書く人を分けると、同じ列を2人が別々に直して食い違うことを防げます。
項目の名前も、チームで1つにそろえます。「失注」と「見送り」、「未対応」と「未アプローチ」が混ざると、同じ状態の人数を数えられません。選べる値を一覧にして、入力欄では一覧から選ぶ形にしておくと、表記の揺れが起きにくくなります。
あなたのチームのリストに「状態」と「同意」の列がないなら、最初に足すのはこの2列です。ほかの列が空いていても、送ってよい相手と送る順番は、この2列で決まります。
ハウスリストは、項目を決める、1か所に集める、状態で分ける、優先順位を付けて案内する、営業と連携して結果を戻す、の5つの手順でリストを作り、毎月くり返します。
図1のとおり、5つ目の手順で営業から戻った結果が、次の月の状態の分け方を変えます。作って終わりにせず、毎月くり返すところまでを作り方に含めます。
名刺管理のツール、MAの名簿、営業の表計算ファイル、問い合わせフォームの通知メールなど、散らばった記録を1つの表かCRMに集めます。このとき、メールアドレスと法人番号で重なりを消します。
重なりを消すときは、どちらの記録を残すかを先に決めておきます。たとえば「最後の接点日が新しい方を残し、古い方の接点は履歴の列に移す」と決めると、展示会の名刺と資料請求が同じ人だったときにも、両方の接点を失わずに済みます。
集める元ごとに、取り込む担当と日を決めることも大切です。名刺は展示会の翌週の金曜まで、問い合わせは毎週月曜、というように決めないと、名刺の束が机に残り、手順3へ進めません。名刺が残ってしまったときの対処は、展示会やウェビナーの名刺が、フォローされずに残っているときの対処で書いています。
営業へ引き継いだ担当者に、商談の日程が決まったか、失注したか、何を断られたかを、毎月リストに戻します。戻す場所を1か所に決めておくと、翌月の優先順位に結果が入ります。
戻す列は、「商談の日程」「失注の理由」「次に連絡してよい時期」の3つで足ります。書くのは連絡した営業の担当者、締めは毎月の最終営業日、と決めておきます。マーケティングは翌月の最初の週にその3列を見て、状態と点数を付け直します。
ハウスリストは、未アプローチ・連絡不通・未商談化・商談実施・失注の5つの状態に分けます。「まだ連絡していない」「連絡したがつながらない」「話したが商談にならない」「商談した」「見送りになった」を、別の状態として扱うということです。この5つを1つの「休眠」に入れてしまうと、送る案内を変えられません。
| 状態 | 意味 | 送る案内の例 |
|---|---|---|
| 未アプローチ | 名刺や資料請求のあと、まだ連絡していない | 接点のお礼と、関心に合う資料 |
| 連絡不通 | 連絡したが、返信も電話の応答もない | 時期を変えて、短い案内を1通 |
| 未商談化 | 話はしたが、商談の日程は決まっていない | 前回の課題に合う事例やセミナー |
| 商談実施 | 商談をして、検討が続いている | 営業が個別に対応する(一斉の案内から外す) |
| 失注 | 検討の結果、見送りになった | 見送りの理由が変わる時期に、近況を伺う案内 |
図2は、担当者が状態のあいだをどう移るかを示しています。連絡不通と未商談化は、同じ「まだ商談がない」担当者でも、送る案内が違います。連絡不通の相手には、そもそも届いているかを確かめる短い案内を。未商談化の相手には、前回聞いた課題に合わせた資料を送ります。
状態を決める基準は、チームで1つにそろえます。たとえば「メールと電話で2回連絡し、14日たっても返信がなければ連絡不通」「返信があって話をしたが、商談の日程はまだ決まっていなければ未商談化」のように、日数・回数と出来事で書きます(日数は例です。自社の商談の長さに合わせて決めてください)。基準が人によって違うと、同じ担当者が月ごとに別の状態に入り、数えた人数を比べられません。
失注の担当者には、失注の理由を必ず書きます。「予算が4月以降」と書いてあれば、3月に案内を送れます。理由が空欄だと、いつ連絡すればよいかが分かりません。
優先順位は、担当者ではなく企業ごとに点数を足し、点数の高い企業から連絡します。同じ会社の担当者が別々に案内を受け取ると、相手の社内で同じ話が重なるためです。
点数の項目は、たとえば次の4つです。点数は自社の商材に合わせて変えてください。
| 項目 | 点数の例 |
|---|---|
| ターゲット企業に入っている | 3点 |
| 最後の接点から90日以内 | 2点 |
| 前回、課題を聞けている | 2点 |
| 自社サイトで、商材のページを見ている手がかりがある | 1点 |
架空の計算例:A社は、ターゲット企業で3点、60日前に展示会で名刺交換して2点、課題を聞けていて2点。合計7点です。B社はターゲット企業ではなく、最後の接点が1年前で、課題も聞けていないため0点です。今月はA社から連絡します。
1か月に連絡する企業の数は、営業が対応できる件数から決めます。架空の計算例:営業2人がそれぞれ月に10社の初回連絡を受け持てるなら、マーケティングから営業へ引き継ぐのは月20社までです。リストの上位から20社を選び、21社目以降は翌月に回すか、メールの案内だけを続けます。全件を一度に引き継ぐと、連絡しきれない会社が残り、その会社の記録は空欄のままになります。
4つ目の項目にあるサイトの閲覧は、関心の手がかりです。購入の予定を示すものではありません。点数を足す材料の1つとして使い、本当に検討しているかは、連絡して確かめます。
優先順位の付け方は、ターゲット企業へのアプローチでも、企業ごとの手順として書いています。企業を単位に進める考え方そのものは、ABMとはで書いています。
ハウスリストへの案内は、1行目に前回の接点を書き、2行目で相手の課題に合う資料を1つだけ案内します。資料を3つも4つも並べると、どれを読めばよいかが分からず、返信が来ません。
未商談化の担当者に送る案内の例です(架空)。
件名:〇〇展でお話しした、名刺の優先順位を付ける手順の資料のご案内
〇〇株式会社 〇〇様
5月の〇〇展で名刺を交換した、〇〇の〇〇です。その際、展示会の名刺をどの順番で営業に連絡するかが決まらない、とお聞きしました。同じ悩みを持つ会社が、名刺に優先順位を付けた手順を資料にまとめましたので、ご案内します。ご不要でしたら、このメールの最後のリンクから配信を止められます。
この例では、最後の1文で配信の止め方を書いています。実際に送るメールには、署名に送信者の住所と問い合わせ先も入れます。
連絡不通・失注の担当者への案内の時期と回数は、休眠リード掘り起こしのシナリオで詳しく書いています。
メールで案内を送る前に、送ってよい相手かと、送り主・配信停止の方法を書いているかを確かめます。広告や宣伝のメールは、特定電子メール法の対象です。
広告・宣伝のメールは、原則として、事前に送ることに同意した相手にだけ送れます。名刺などの書面でアドレスを知らせてきた相手のように、同意の例外にあたる場合もありますが、配信を止めたいと言われたら止めます。同意を得たときは、その記録を残しておきます。
メールの本文には、送信者の名前、住所、配信停止の連絡先、苦情や問い合わせの受付先を書きます。法律とガイドラインの資料は、総務省の迷惑メール対策のページにまとまっています(2026年10月確認)。
個人情報の扱いは、個人情報保護委員会のページで確かめられます。資料請求などで取った情報を案内に使うなら、取得の状況から利用目的が明らかな場合を除き、利用目的をあらかじめ公表するか、取得したあとすぐに本人へ通知または公表します。資料請求のフォームのように本人から書面で直接取るときは、取る前に利用目的を示します。名刺の扱いは、同委員会のQ&Aで確かめてください(2026年10月確認)。
更新は、少なくとも半年に1回、次の3つを確かめます。
あなたのリストに配信停止の列がないなら、案内を送る前にその列が要ります。止めたはずの相手に案内が届くと、その会社との接点そのものを失います。
ハウスリストが商談につながらない原因は、リストの扱い方にあるものと、リストの外にあるものに分かれます。扱い方の原因は、件数だけを数えている、全員に同じ案内を送っている、営業の結果が戻らない、の3つです。
1つ目は、件数だけを数えていることです。「名刺が数千件ある」は、商談にいくつつながったかを教えてくれません。月に1回、状態ごとの人数と、そこから商談になった企業の数を数えます。
2つ目は、全員に同じ案内を送っていることです。商談中の担当者にセミナーの一斉案内が届くと、営業が個別に進めている話と食い違います。状態で分けてから送ります。
3つ目は、営業から結果が戻らないことです。結果が書かれないと、同じ相手にマーケティングがまた案内を送ります。戻し方は、前に書いた手順5の決まりのとおりです。
ただし、商談につながらない理由が、リストの中身ではないこともあります。もともとターゲット企業に合わない会社が多い、検討の時期がまだ来ていない、案内する資料が課題に合っていない、といった原因です。BtoBマーケティングの効果検証の手順で、商談から逆にたどって確かめてください。
リコー様の公開事例では、展示会の名刺のリストにサイトの閲覧を合わせて、営業が連絡する企業の順番を決めています。
株式会社リコー様は、新規事業の領域で、問い合わせに至らない訪問企業が多いことを課題にしていました。展示会の名刺リストと、展示会の前後のサイトの閲覧を企業ごとに合わせ、営業が連絡する企業の優先順位を決め、毎週営業へ共有して、商談獲得につなげています(リコー様の事例)。名刺のリストに関心の手がかりを1列足し、営業の連絡の順番を毎週見直す使い方です。
もう1つ、名刺のリストの事例ではありませんが、営業へ引き継ぐ件数の決め方で参考になる事例があります。
レクシスネクシス・ジャパン様は、サイトを訪問した企業の中から、毎週5件に厳選した営業先をマーケティングから営業へ共有しています。調子が良いときは、その半分ほどがアポイントにつながっています(レクシスネクシス・ジャパン様の事例)。引き継ぐ件数を先に決めて絞る点は、前の節の考え方を進めるときの参考になります。
リストは、件数が増えるほど、どこから連絡するかが決めにくくなります。状態と点数の列があれば、今月連絡する企業が決まり、営業から戻った結果で翌月の順番が変わります。
あなたの手元の名刺と資料請求のリストから、まず20社を選び、状態の列を埋めるところから始めてみてください。ターゲット企業ごとの接点と施策の結果を集めて、商談獲得の仕組み化を続ける方法は、サービス資料で紹介しています。
ウルテクについて、もっと詳しく知りたい方へ