BtoBマーケティング
ターゲット企業へのアプローチは、接点の状態を5段階に分け、優先順位をつけて手段を選び、結果を企業ごとに記録して翌月に反映します。
対象のターゲット企業は決めたものの、2,000社を超える一覧を前に、どの会社から当たるかが決まらない。すでに連絡した会社に、別の担当者が重ねて電話をしてしまった。あなたのチームにも、そんな場面があるかもしれません。
確かめたいのは、手段よりも先に、当てる順番と記録の持ち方です。一覧にあるのは社名だけで、どの会社に接点があり、どの会社が未アプローチなのかが、1枚で分からないからです。
ターゲット企業へのアプローチとは、商談獲得を目指す企業に、優先順位をつけて施策と営業の連絡を当て、結果を企業ごとに記録していく活動です。5つの手順と、優先順位の採点表、手段の選び方、重ねて連絡しないための記録の列を、架空の数字の例つきでまとめました。
目次
ターゲット企業へのアプローチとは、商談獲得を目指す企業を先に決め、その企業に施策と営業の連絡を順番に当てて、結果を記録していく活動です。広く集めたリードに応える進め方と違い、起点が企業の一覧にあります。
ABM(アカウントベースドマーケティング)では、この活動をマーケティングと営業が連携して進めます。進め方の全体は「ABM戦略とは?進め方6ステップと商談につながらない3つの原因」に、ターゲット企業の条件の決め方は「ICP(理想顧客プロファイル)とは?」に、ターゲット企業の選び方は「ターゲット企業(ターゲットアカウント)とは?BtoBマーケ・セールスでの選び方」にあります。
手段には、営業の電話、個別メール、フォームDM、広告、展示会、紹介があります。どれを使うかは、企業の接点の状態で決まります(表は手順4に載せました)。
数える単位は企業です。同じ企業の担当者2名に連絡しても、アプローチした企業は1社です。担当者を2社と数えると、アプローチ済みの企業数が実際より多く見え、未アプローチの企業が残っていることに気づけません。
言葉の使い分けも、先にそろえておきます。
ターゲット企業=商談獲得・受注を目指す企業。アプローチ企業=実際に施策や営業活動の対象にしている企業。リード=見込み顧客として管理する担当者の情報。ターゲット企業の全社が、アプローチ企業とは限りません。
アプローチが進まない原因は、当てる順番、接点の把握、重複、手段の選び方の4つに分けられます。あなたのチームでずれているところを先に知ると、直す順番が決まります。
一覧が社名の並びだけだと、担当者が知っている会社や、名前を聞いたことのある大きな会社から当たりがちです。ターゲット企業の中で、商談になりやすい会社が後ろに残ります。
展示会の名刺は名刺アプリに、資料請求はMAに、商談は営業の記録にあります。接点が複数の場所に分かれていると、未アプローチの企業を数えるには、3か所を開いて社名で突き合わせることになります。
広告、メール、電話を別の担当者が進めると、同じ企業に数日のうちに3回連絡してしまうことがあります。心証を損ねる前に、直近の連絡日を、誰でも連絡の前に見られる形にしておきます。
電話が得意な担当者は電話を、メールが得意な担当者はメールを使います。企業の状態に合う手段とは限りません。接点がない企業と、資料を請求した企業では、向く手段が違います。
4つはどれも、データが足りないことより、一覧の持ち方の問題です。接点の状態の列は2つ目の原因に、最後に連絡した日の列は3つ目の原因に効きます。
手順は、ターゲット企業を決める、接点の状態を5段階に分ける、優先順位をつける、手段を選んで当てる、結果を戻して翌月に反映する、の5つです。5つ目のあとは1つ目に戻り、毎月くり返します。
ICPの条件に当てはまる企業を一覧にし、手間のかけ方でA・B・Cに分けます。取引の形と取引額での絞り方、A・B・Cの分け方、事業部の書き方は「ターゲット企業(ターゲットアカウント)とは?BtoBマーケ・セールスでの選び方」で紹介しています。
完全に失注して、再提案しないと決めた会社は、消さずに「対象外」と書いて残します。消してしまうと、数年後に担当者が替わったとき、同じ会社へ新しく当たってしまいます。
次に、ターゲット企業の1社ごとに、接点の状態を1つ入れます。段階は5つで、次の表の上から順に判定し、最初に当てはまった段階に入れます。商談になった企業が、同時に名刺の既存リードでもあるとき、入れるのは商談です。段階は企業につける状態です。企業に1人以上のリードがあれば、その企業を新規リードか既存リードの段階に入れ、担当者の数では数えません。
| 段階 | 当てはまる条件 | 確かめる場所 |
|---|---|---|
| 商談 | 日程が決まり、面談をした | 営業の記録 |
| 新規リード | 基準日のあとに、初めてリードを取れた(セミナー、フォーム、展示会、電話など) | 各施策の記録 |
| 既存リード | 基準日より前から接点がある(名刺、ハウスリスト、過去の商談など) | 名刺アプリ、営業の記録 |
| サイト訪問 | 来訪が分かっていて、リードはまだない | アクセス解析、来訪企業のデータ |
| 空白 | 接点も来訪も分かっていない | 上のどこにも記録がない |
基準日は、一覧を作った日など、自社で1つ決めます。基準日が毎月ずれると、既存リードと新規リードの数が月ごとに入れ替わり、移りを比べられなくなります。
サイト訪問は、検討の手がかりの1つです。購入の予定を示すものとは限らないので、優先順位を決める材料の1つとして使い、これだけで連絡の文面を変えることはしません。
ウルテク(URUTEQ)は、サイトへの来訪や資料の閲覧のデータと、お客様のマーケティング・営業結果を、ターゲット企業ごとにつなぎ、この5段階の移りを毎月の定例で見られるようにしています。表計算ソフトの1枚でも、同じ列を作れば始められます。
手順3の優先順位は、適合度、接点の状態、時期の手がかりの3つを点数にして、合計の高い順に付けます。点数の配分は自社で見直してかまいません。大事なのは、担当者の勘ではなく、同じ物差しで全社を並べることです。
| 見る項目 | 見る中身 | 点数の付け方(例) |
|---|---|---|
| 適合度 | ICPの3条件(業種・規模・事業の動き)に当てはまる数 | 3つ=3点、2つ=2点、1つ=1点 |
| 接点の状態 | 手順2で入れた段階 | 新規リード・既存リード=3点、サイト訪問=2点、空白=1点(商談は営業が進めるので対象外) |
| 時期の手がかり | 新規事業や設備投資の公開など、公開情報で分かること | ある=2点、ない=0点 |
時期の手がかりは、検討の手がかりであって、購入の予定を示すものではありません。点数に入れる理由は、同じ適合度の企業が並んだときに、先に連絡する会社を決めるためです。
6社の例(架空)で計算します。合計が同じなら、適合度の高い会社を先にします。
| 企業(架空) | 適合度 | 接点の状態 | 時期の手がかり | 合計 | 順位 | 最初の手段 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A社 | 3 | 既存リード(3) | あり(2) | 8 | 1 | 営業の電話 |
| D社 | 3 | サイト訪問(2) | あり(2) | 7 | 2 | 広告 |
| B社 | 3 | 空白(1) | あり(2) | 6 | 3 | フォームDM |
| F社 | 2 | 新規リード(3) | なし(0) | 5 | 4 | 営業の電話 |
| C社 | 2 | サイト訪問(2) | なし(0) | 4 | 5 | 広告 |
| E社 | 1 | 空白(1) | なし(0) | 2 | 6 | 今月は当てない |
図3は、点数のうち、適合度と接点の状態だけを2つの軸にしたものです。適合度は2点以上を「高い」、1点を「低い」とし、新規リードと既存リードを「リードがある」、空白とサイト訪問を「接点が少ない」とします。A社とF社は右上、B社・C社・D社は左上、E社は左下です。右上の企業が、営業の電話と商談の提案の最優先になります。
2,400社を全部、同じ月に当てるのは無理があります。1か月に当てられる企業数は、担当者の人数に、1人が1か月に対応できる企業数を掛けて決めます。3人で1人40社なら120社です(架空)。
2,400社を上から順に当てると、120社ずつで20か月かかります。そこで一覧を、今月の120社、来月以降、広告だけで接点をつくる企業の3つに分けます。あなたのチームの毎月の定例で、手順5の結果を見て、上位を入れ替えます。
手順4の手段は、企業の接点の状態で選びます。接点が少ない企業には広告やフォームDM、リードがある企業には営業の電話や個別メールが向きます。
| 手段 | 向く段階 | 向く場面 | 注意すること |
|---|---|---|---|
| 営業の電話(インサイドセールス) | 新規リード・既存リード | 担当者名と部署が分かっている会社 | 電話の前に、直近の連絡日と結果を見る |
| 個別メール | 新規リード・既存リード | 取得の経緯と同意を確認できる相手で、事業や役職に関係する課題を書ける会社 | 広告・宣伝メールは特定電子メール法の対象。アドレスを推測して送らない。関係を保つナーチャリングのメールにも使う |
| フォームDM(問い合わせフォームへの送信) | 空白 | 担当者名が分からない会社 | 同じ会社に重ねて送らない。送信先の規約を確認する |
| 広告(ターゲット企業に絞った配信) | 空白・サイト訪問 | 接点をつくる段階 | 企業単位で配信先を絞れるかを確認する |
| 展示会・セミナー | 空白・既存リード | まとめて接点をつくる場面 | 終了後すぐに、名刺と参加者を一覧に反映する |
| 取引先や提携先からの紹介 | 空白 | 担当部署が分からない大きな会社 | 紹介元の了解を先に取る |
手段を選ぶ前に、法律の確認が1つあります。広告・宣伝メールを送る場合、原則として特定電子メール法の規制対象になります。個別メールは、名刺交換や問い合わせなど、アドレスの取得の経緯と同意を確認できる相手に送ります。同意の取り方や例外は、総務省の「広告・宣伝メールを送られる方へ」(2026年10月確認)にあるガイドラインで確かめます。
フォームDMを送る前の除外の考え方は「嫌われないフォーム営業を実現する除外リストの作り方」に、決裁者に届ける方法は「BtoBで決裁者にアプローチする7つの方法」にまとめています。
従業員が数千人の会社では、買う単位が会社全体ではなく、事業部のことがあります。同じ会社の別の事業部は、新しい相手として扱います。企業は1社と数え、事業部と担当者は別の列に書きます。
担当者が複数いるときは、1人に連絡した結果を、同じ企業の別の担当者に当てる前に確認します。同じ会社の中で、同じ案内が2人に別々の日に届く状態を避けるためです。
手順4で当てるときの記録は、1社1行で、最後に連絡した日、手段、担当者、結果の4列を足せば始められます。連絡の前に、この4列を必ず見る決まりを、あなたのチームの一覧の先頭に書いておきます。
| 列 | 書く中身 | 書き方の例(架空) |
|---|---|---|
| 最後に連絡した日 | 施策と営業の連絡を合わせた、いちばん新しい日 | 2026-10-06 |
| 手段 | 電話、個別メール、フォームDM、広告、展示会など | 個別メール |
| 担当者 | 連絡した自社の担当者名 | 営業企画の担当者A |
| 結果 | 次の表の6つから1つ | 連絡不通 |
結果の列は、自由に書かず、決めた言葉から選ぶようにします。次の6つに分けておくと、翌月の一覧の組み直しが速くなります。
| 結果 | 意味 | 翌月の扱い |
|---|---|---|
| 記録なし | 連絡の記録が残っていない | 調べて、連絡済みか未アプローチかを決める |
| 未アプローチ | ターゲット企業だが、まだ連絡していない | 優先順位に従って当てる |
| 連絡不通 | 連絡したが、担当者につながっていない | 手段と時間帯を変えて、もう一度当てる |
| 未商談化 | 担当者とつながったが、商談の日程は決まっていない | ナーチャリングの施策で関係を保つ |
| 商談未実施 | 日程は決まったが、面談をしていない | 営業が日程を取り直す |
| 失注 | 商談の結果、取引に至らなかった | 理由を書き、再提案する時期を決める |
「連絡していない」と「連絡したがつながらなかった」を同じ空欄にすると、翌月に同じ手段で同じ企業へ当ててしまいます。区別がつけば、連絡不通の企業には別の手段を、未アプローチの企業には最初の手段を選べます。
もう1つ、連絡の間隔の決まりも置きます。たとえば「同じ企業には、直近の連絡から30日は次の連絡をしない」のように、自社で決めた日数を一覧の先頭に書いておきます。30日は一例で、商材の検討期間に合わせて変えます。
手順5の成果は、段階ごとの企業数が月ごとにどう移ったかと、その月の商談の数で見ます。メールの開封率や広告のクリック数は、施策の途中の様子として別に並べます。
2,400社のターゲット企業で、月初と月末を比べた例(架空)です。
| 段階 | 月初の企業数 | 月末の企業数 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 空白 | 1,500 | 1,410 | −90 |
| サイト訪問 | 300 | 322 | +22 |
| 既存リード | 400 | 400 | 0 |
| 新規リード | 180 | 242 | +62 |
| 商談 | 20 | 26 | +6 |
| 合計 | 2,400 | 2,400 | 0 |
この月は120社に当てました。月初と月末の差し引きでは、空白が90社減り、ほかの段階が合わせて90社増えています。内訳は、サイト訪問が22社、新規リードが62社、商談が6社です。差し引きの数なので、どの段階から移ったかは、企業ごとに前月の段階と今月の段階を並べて確かめます。
商談が6社増えたうち、今月当てた120社の中の企業は4社だったとします(架空)。残る2社は、120社以外の経路です。商談化の割合は、4社÷120社で約3.3%です。割合を出すときは、母数(今月当てた企業)、期間(1か月)、商談の定義(日程が決まり、面談をした)を横に書きます。母数と定義が違う数字は、比べられません。
同じ形の表を毎月作ると、どの段階で企業が止まっているかが見えます。新規リードが増えても商談が増えないなら、リードの営業連携や、フォローの基準を確かめる月になります。施策ごとの効果の見方は「BtoBマーケティングの効果検証」にあります。
公開されているウルテクの事例では、アプローチする企業を絞り、すでに連絡中の企業を除いてから、少ない件数を丁寧に当てています。
レクシスネクシス・ジャパン様は、マーケティングから営業へ、毎週5件に厳選した営業先の一覧を共有しています。既存のお客様と架電中の企業は除外し、新規の企業だけにしています。好調なときは、その半数以上が商談につながっています(レクシスネクシス・ジャパン様の事例)。
株式会社ノーザンライツ様は、インテントキーワード(企業が調べているテーマ)をもとに、具体的なテーマを挙げて電話をかけ、アポイント獲得率が約1%から5%超になっています(ノーザンライツ様の事例)。株式会社リコー様は、展示会の名刺の企業にサイトの閲覧データを加えて順番を決め、商談獲得につなげています(リコー様の事例)。
3社に共通するのは、手段を増やす前に、どの企業に、どの順で当てるかを決めている点です。この記事の手順2から4と同じ考え方です。
一覧に社名を並べただけでは、ターゲット企業へのアプローチの抜け漏れを防げません。接点の状態と最後に連絡した日の2列を足すと、どの企業を、いつ、どの手段で当てるかを、全員が同じ表で決められます。
まだ列がなければ、ターゲット企業のうち上位50社に、接点の状態を入れるところから始めてみてください。ターゲット企業からの商談獲得を毎月管理する土台は、その1枚の表から整います。
ウルテクについて、もっと詳しく知りたい方へ