ABM
ターゲット企業は、商談獲得・受注を目指すと決めた企業を、会社と事業部の名前で指したものです。業種と規模より先に、受注した会社の取引の形と取引額で決めます。
ターゲット企業とは、BtoBマーケティング・セールスで、商談獲得・受注を目指すと決めた企業を、会社と事業部の名前で指したものです。ABM(アカウントベースドマーケティング)では、ターゲットアカウントとも呼びます。ターゲット企業を並べた表は、ターゲットアカウントリスト(TAL)と呼ばれます。消費者向けの広告でいう「ターゲット(狙う客層)」とは違い、年代や性別の層ではなく、1社ずつの名前で決めます。
展示会の名刺は毎回たまり、ハウスリストも数千件ある。それでも、今月どの会社に提案するかを聞かれると、営業とマーケティングで答えが合わない。業種と従業員数で作った一覧が長すぎて、どの会社から連絡しても同じに見えるからです。
ターゲット企業を選ぶときは、業種と規模より先に、受注した会社の取引の形と取引額で候補を絞り、手間のかけ方でA・B・Cの3段に分けます。この記事では、意味とICPやアプローチ企業との違いを整理し、5つのステップと一覧の見直し方を、架空の会社の記入例で紹介します。
目次
BtoBでのターゲット企業とは、商談獲得・受注を目指すと決め、会社と事業部の名前まで特定した企業です。
「製造業の大手」のような条件のままでは、営業は電話をかける先を決められません。名前を書いた時点で、マーケティングは広告を出す会社、インサイドセールスは連絡する会社、営業は提案する会社を、同じ表から読めるようになります。
大きな会社では、予算と判断が事業部ごとに分かれています。同じサンプル精機株式会社(架空)でも、主力の製品を扱う事業部と、新工場の立ち上げを任された生産技術部では、検討の時期も決める人も違います。会社名だけの一覧では、話を聞いてくれる部署にたどり着くまで、同じ会社に何度も連絡することになります。
リードを広く集めてから選ぶ進め方では、問い合わせが来た会社が中心になります。自社の商材を買う力がある会社でも、問い合わせが無ければ、一覧に出てきません。先に名前を決めておくと、まだ接点の無い会社にも、広告や資料の案内で自分から接点を作れます。ABMの起点がここにあります。
ICPは条件、ターゲット企業は名前、アプローチ企業は実際に対応している会社、リードは担当者です。書くものと数える単位で分けると、言葉が混ざりません。
| 言葉 | 書くもの | 単位 | 主に使う場面 |
|---|---|---|---|
| ICP(理想顧客プロファイル) | 受注しやすく取引が続く会社の条件 | 条件 | ターゲット企業に入れるかを決めるとき |
| ターゲット企業 | 条件に当てはまる会社と事業部の名前 | 企業・事業部 | 施策と営業の対象と優先順位を決めるとき |
| アプローチ企業 | 実際に施策や営業の連絡をしている会社 | 企業 | 今月の対応状況を数えるとき |
| リード | 名前と連絡先が分かった担当者 | 人 | 連絡と商談化を数えるとき |
| ペルソナ | 会社の中で検討に関わる人物像 | 人物像 | 資料や記事の言葉を決めるとき |
作る順番は、ICP、ターゲット企業、ペルソナです。ICPの条件の決め方は「ICP(理想顧客プロファイル)とは?」にまとめています。
ターゲット企業の全社が、アプローチ企業とは限りません。300社を決めても、今月連絡できるのは40社かもしれません。担当者を2人知っていても、数えるときは1社です。人の数で数えると、まだ手を付けていない会社が残っていることに気づけません。
一覧は1社(大きな会社は1事業部)を1行にし、判定とその理由、段階、最後の接点、担当を同じ行に並べます。マーケティングと営業が同じ行を見て、今月何をするかを決められる項目だけにします。
| 項目 | 書く内容 | 記入例(架空) |
|---|---|---|
| 会社名 | 正式な社名 | サンプル精機株式会社 |
| 事業部 | 提案する部署 | 生産技術部 |
| 判定 | A・B・C・対象外 | A |
| 判定の理由 | 取引額の見込みと、公開された出来事 | 1,000万円〜・新工場の稼働を発表 |
| 段階 | 商談・新規リード・掘り起こし・サイト訪問・未アプローチ | 新規リード |
| 最後の接点 | 日付と中身 | 9/30 セミナー参加 |
| 担当 | 営業とマーケティングの担当者 | 営業部 第2課・マーケティング部 |
判定の理由を空けておくと、半年後に「なぜこの会社がAなのか」を誰も説明できなくなります。
段階の分け方と、段階ごとに何をするかは「ターゲット企業へのアプローチ|優先順位付けから商談獲得の5手順」で紹介しています。
ターゲット企業は、業種と規模より先に、受注した会社の取引の形と取引額をもとに決めます。
過去2年に受注した会社を並べ、1件の取引額と、取引の形を書きます。この記事でいう取引の形は、続けて取引しているかと、どの部署が導入を決めたかの2つです。業種と規模はばらばらでも、取引額と取引の形はそろっていることが多くあります。
同じ表に、失注した会社と取引が切れた会社も、理由と一緒に並べます。「内製すると決めた」「決める部署が無かった」のように、何度も出てくる理由が、次のステップで外す条件になります。
受注がまだ数社しかない商材では、商談まで進んだ会社で仮の条件を作ります。3か月後の見直しで、商談の結果を見て条件を直します。
ステップ1の取引の形を条件にして、候補を集めます。集める元は、SFAやCRMにある取引先と過去の商談先、MAのハウスリスト、名刺、企業データベースです。
製造業・従業員300人以上だけで集めると、架空の例で1,200社になります。ここに「受注した会社と同じく、生産技術部が設備の導入を決めている」という取引の形を重ね、ステップ1の外す条件(内製している、決める部署が無い)に当てはまる会社を除くと、300社まで減ります。外した900社は、自社の商材を買う理由が少ない会社です。
残った会社を、手間のかけ方で3段に分けます。ABMでいうTier1〜3にあたります。Aは営業と一緒に1社ずつ提案する会社、Bは業種や課題ごとにまとめて資料とセミナーで案内する会社、Cは企業単位の広告とメルマガで知ってもらう会社です。分ける基準は、取引額の見込みと、公開された出来事の2つです。
取引の無い会社の取引額は、受注した会社と比べて見込みます。手がかりは、商材を使う部署の人数、拠点や工場の数、決算説明資料で公表された投資額です。公開された出来事には、新工場の稼働のほかに、中期経営計画の発表、基幹システムの入れ替え、拠点の統合、新しい事業部の設置があります。
Aに入れる数は、営業の人数に、1人が同時に提案を進められる社数を掛けた数までにします。営業3人が10社ずつなら30社です(架空)。取引額と出来事が同じくらいの会社が並んだら、名刺や過去の商談、セミナーの参加など、すでに接点のある会社を先にAに入れます。
Aの会社は、自社の商材を使う部署と、その予算を決める部署を探して書きます。新しい工場や事業を任された部署は、その有力な候補です。手がかりは3つあります。適時開示やニュースリリース、採用ページに出る部署名。過去の名刺と、SFAに残る商談の相手。展示会でどの事業部が何を出展したか。見つからない会社は、空欄のまま営業に聞きます。
マーケティングが作った案を、営業の責任者と一緒に1行ずつ読みます。営業が「この会社は予算が止まった」と言えば、Bに下げます。逆に、一覧の外で商談が進んでいる会社は、理由を書いてAに入れます。最後に、Aの会社ごとに営業とマーケティングの担当者の名前を書きます。
Aは営業と1社ずつ提案し、Bは業種や課題ごとにまとめて案内し、Cは広告とメルマガで知ってもらいます。段が違えば、1社にかける手間と、毎月見る数も変わります。
| 段 | 社数の例(300社・架空) | 主な施策 | 毎月見る数 |
|---|---|---|---|
| A 1社ずつ提案 | 30社 | 営業と一緒の提案、事業部向けの個別の資料 | 商談の社数、未アプローチの社数 |
| B まとめて | 90社 | 業種別の資料、課題ごとのセミナー | 新規リードの社数 |
| C 広く知ってもらう | 180社 | 企業単位の広告、メルマガ | サイト訪問の社数 |
Cの会社にも、月1回のメルマガと企業単位の広告は続けます。Cの会社に公開された出来事が出たら、次の見直しで取引額の見込みを確かめ、見込めればBかAに上げます。
一覧は、毎月の定例で段階ごとの社数を数え、3か月ごとに条件と段を入れ替えます。作った日から、一覧は古くなるからです。担当者は異動し、事業部は統合され、投資の計画は止まります。
見直しで見るのは、商談になった会社の共通点です。Aから商談が出ずにBから出ているなら、取引額の目安か出来事の見方がずれています。商談の結果を一覧に戻さないと、この比べ方ができません。
失注して再提案しないと決めた会社は、消さずに「対象外」と理由を書いて残します。消すと、数年後に担当が替わったとき、同じ会社に初めてのつもりで連絡してしまいます。
よくある失敗は、業種と規模だけで決める、事業部を書かない、マーケティングだけで決める、見直さないの4つです。
業種と規模だけで集めた一覧は、長くなります。1,200社に毎月連絡できる営業はいません。結局、担当者が知っている会社から連絡することになり、一覧を作った意味が消えます。
大きな会社に会社名だけで連絡すると、代表の窓口で止まるか、商材と関係の無い部署につながります。Aの会社だけでも、事業部の名前まで書きます。
営業が合意していない一覧は、営業の予定表に入りません。営業が熱心に通っている会社を急にCに下げると、取引中の相手を困らせることもあります。案はマーケティングが作り、決めるのは営業と一緒にします。
1年前の一覧のまま広告を出すと、すでに失注した会社や、事業を畳んだ部署に費用を使います。3か月に一度は、商談の結果と公開情報で段を入れ替えます。
ICPで条件を決め、ターゲット企業で名前を決め、ABMで会社ごとの施策と営業の連絡を組み立てます。
今日できることは、過去2年に受注した会社を10社書き出し、1件の取引額と、続けて取引しているかを横に書くことです。10社に共通する取引額の幅が、ターゲット企業に入れるかを決める最初の条件になります。
ウルテク(URUTEQ)は、ABM(アカウントベースドマーケティング)の考え方で、ターゲット企業からの商談獲得を仕組み化するBtoBマーケティング・営業支援サービスです。マーケティング施策の結果、営業の対応、サイトの外で調べているテーマを企業ごとに分析し、アプローチの抜け漏れと、商談につながった施策を解析します。毎月の定例で商談の結果を確かめ、翌月の施策に反映します。ターゲット企業の選定から効果の検証まで、ウルテクチームが並走します。
A・B・Cの判定表と、ターゲット企業の一覧の見本は、「ABM実践ワークブック」の工程1にまとめています。Excelで始められる手順も載せています。
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