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ICP
ビジネスで使うICP(理想顧客プロファイル)とは、BtoBのマーケティングとセールスでターゲットにする、受注率とLTVが高くなりやすい企業の条件です。
ビジネスで「ICP」と言えば、Ideal Customer Profile(理想顧客プロファイル)の略です。BtoBのマーケティングとセールス(営業)で、自社がターゲットにすべき企業の条件を指します。環境分野のインターナルカーボンプライシングや、化学分析のICP発光分光分析・ICP-MSとは別の言葉です。
MQL(マーケティング側の基準を満たしたリード)の目標は達成したのに、商談化率が上がらない。セールスからは「渡されるリードの半分は、うちの商材を買える規模ではない」と言われる。こうしたすれ違いの多くは、ターゲット企業の条件がマーケティングとセールスで別々になっていることから起きます。その条件を1つにそろえるのがICPです。
この記事では、ICPの意味とペルソナとの違いに加えて、CRMの受注・失注データからICPを作る5つのステップ、外観検査AIを売る会社を例にした記入例、マーケティングとセールスそれぞれでの活用法を紹介します。
目次
ビジネスでのICPとは、自社の商材がいちばん価値を出せて、受注率もLTVも高くなりやすい企業の条件を定義したものです。
対象は人ではなく企業です。大企業に売る場合は、予算と決裁権を持つ事業部の単位まで書きます。同じ会社の中でも、品質保証部は買うが情報システム部は買わない、という商材は珍しくありません。
ICPは、リードクオリフィケーションの基準そのものです。展示会の名刺も、Webサイトからの問い合わせも、営業が自分で見つけた会社も、まずICPに照らして、ターゲット企業に入れるかどうかを判定します。マーケティングとセールスがこの判定を同じ物差しで行えれば、冒頭のすれ違いは起きません。
ICPに書く条件は、会社の属性、抱えている課題、買い方と広がりの3つの観点に分かれます。3つめが抜けると、1回きりの小さな受注で終わる企業まで同じ優先度で追うことになります。
ICPは「どんな企業をターゲットにするか」の条件、ターゲット企業はその条件に当てはまる企業名の一覧、ペルソナはその企業で検討に関わる人物像です。
| 比べる項目 | ICP | ターゲット企業 | ペルソナ | TAM・SAM |
|---|---|---|---|---|
| 書くもの | ターゲットにする企業の条件 | 条件に当てはまる企業名と事業部 | 起案者・決裁者の役職、悩み、情報の集め方 | 売れる可能性のある市場の大きさ |
| 単位 | 条件 | 企業・事業部 | 人 | 金額・社数 |
| 主に決める人 | 事業責任者とマーケティング責任者 | マーケティングと営業 | マーケティングとインサイドセールス | 事業企画 |
| 使う場面 | ターゲット企業の条件を設定するとき | 毎月のアプローチ企業と優先順位を設定するとき | 資料・記事・提案の言葉を決めるとき | 事業計画と予算を立てるとき |
作る順番は、ICP、ターゲット企業、ペルソナです。ICPが決まらないうちにペルソナを描くと、商材を買えない会社の担当者に向けて、よくできた資料を作ることになります。
TAM(Total Addressable Market)やSAM(Serviceable Available Market)は、市場がどれだけ大きいかを示す数字です。ICPは、その市場の中から勝てる企業を絞り込んだ条件にあたります。市場が大きくても、ICPに当てはまる企業が数百社なら、その数百社に営業とマーケティングのリソースを集めます。
ICPには、業種と規模、組織の課題、いまの代替手段、意思決定構造、横展開の余地の5つを書きます。 図1の3つの観点のうち、会社の属性が1つめ、抱えている課題が2つめと3つめ、買い方と広がりが4つめと5つめにあたります。
業種の名前と、従業員数や売上の範囲で書きます。「製造業の大手」では、判定する人によって入る企業が変わります。「産業機械・電子部品の製造業で、従業員1,000人以上」なら、誰が判定しても同じです。
商材で解ける困りごとを、現場で起きている出来事として書きます。外観検査AIなら「検査員が足りず、夜勤帯の見落としがクレームになっている」。ここが具体的なほど、営業の初回訪問で話す内容が決まります。
導入前の相手は、目視検査と検査員の増員でしのいでいるのか、他社の検査装置を入れているのか。何と比べられるかで、提案で示すべき数字(人件費か、検出率か)が変わります。
起案者・評価者・最終決裁者と、決裁の流れを書きます。工場の品質保証課長が起案し、製造部長が評価し、品質保証部長が決裁する。この流れが分かると、営業が最初にアプローチする相手と、マーケティングが資料を届ける相手が決まります。
LTVを大きく左右するのがここです。外観検査AIの価格が検査ラインの数で決まるなら、従業員数より「国内の工場数」や「検査ラインの数」のほうが、売上に直結する条件になります。自社の価格が何の数で決まるか(ライセンス数、拠点数、取扱件数など)を確かめ、その数を条件に入れます。
5つを1枚にまとめた記入例です(外観検査AIを売る会社を想定した架空の例)。
| 項目 | 書くこと | 記入例(外観検査AIを売る会社・架空) |
|---|---|---|
| 業種と規模 | 受注が続いている企業に多い業種と、従業員数・売上の範囲 | 産業機械・電子部品の製造業、従業員1,000人以上 |
| 組織の課題 | 商材で解ける、現場の困りごと | 検査員が足りず、夜勤帯の見落としがクレームになっている |
| いまの代替手段 | 商材を入れる前のやり方 | 目視検査と検査員の増員 |
| 意思決定構造 | 起案者・評価者・最終決裁者と、決裁の流れ | 起案:工場の品質保証課長/評価:製造部長/決裁:品質保証部長(工場ごとの検査工数で判断) |
| 横展開の余地 | 価格が決まる単位と、広がる先 | 国内に工場が2か所以上、検査ラインが合計10本以上 |
この表は、そのままターゲット企業の一覧の「ICP判定」の列になります。
ICPは、理想の顧客を想像して書くのではなく、受注と失注の記録から逆算して作ります。
SalesforceやHubSpotなどのCRM・SFAから直近2〜3年の受注案件を書き出し、契約金額と継続期間をかけたLTVの高い順に並べます。上位の企業に共通する業種、規模、買った事業部、検討を始めたきっかけを書き出します。
1件1,000万円を超える商材では、受注が年に数十件ということもあります。件数が少ないうちは、商談まで進んだ企業も並べて仮説を立てます。
受注企業の共通点だけでは、ICPの境界線は引けません。ステップ1の条件に当てはまるのに失注した企業と、当てはまらないのに受注した企業を、CRMから探します。前者からは足りない条件が、後者からは見落としていた条件が見つかります。
理由は記録に残っていないことが多いので、担当した営業と、解約の理由を知るカスタマーサクセスに直接聞きます。聞くのは3つで十分です。決まった(決まらなかった)一番の理由、決裁までにかかった期間、導入後に使う範囲が広がったかどうか。
条件を文書にまとめるだけでは、ICPは営業に使われません。CRMの企業の項目に「ICP判定(合致/一部合致/対象外)」を作り、既存の取引先とリードの企業に値を入れます。MAのリードスコアリングを使っているなら、この判定を点数に足します。
判定が営業担当者ごとにぶれる条件があれば、数字か業種の名前に書き直します。
当てはまる企業が少なすぎると、商談の数が足りなくなります。経済産業省のgBizINFOでは、法人番号から従業員数や資本金を無料で確かめられ、所在地・資本金・従業員数の範囲で法人を検索することもできます。
業種で絞る項目は無いため、業種は自社の取引先データや企業データベースと組み合わせて確かめます。数百社ならTier1とTier2で1社ずつ見る、数千社なら条件を足して絞る、と社数に合わせて進め方を決めます。
ICPに当てはまる企業でも、いま検討している企業はごく一部です。自社サイトへの訪問や資料の閲覧に加えて、社外のWebで調べているテーマ(インテントデータ)を重ねると、どこから連絡するかを決められます。ウルテクの公開事例では、レクシスネクシス・ジャパン様が、複数人での訪問や滞在時間の長さなどを手がかりに毎週5件に厳選したリストを営業に引き継ぎ、好調時は半数以上が商談化しています。
作ったICPは、四半期ごとに受注と失注に照らして直します。商材を大きく変えたとき、新しい業種に広げるとき、販売目標を変えたときも、見直しの合図です。
ICPは、マーケティングでは施策の成果を商談化率で測る物差しに、セールスではアプローチする企業の優先順位に使います。
リードを「ICPに当てはまる」「当てはまらない」に分け、それぞれの商談化率を出します。2つの数字に差がはっきり出れば、そのICPは機能しています。差が出なければ、条件が粗すぎるか、外れています。リードの件数だけで評価していた施策を、商談につながる件数で説明し直せます。
ICPに書いた課題の言葉は、サービス資料、広告の見出し、ブログ記事で同じように使います。相手の企業から見ると、どの接点でも「自社の話をしている」と受け取れる状態になります。
ABM(アカウントベースドマーケティング)では、ICPに当てはまる企業をターゲット企業の一覧に書き出し、Tierごとにリソース配分を変えます。ターゲット企業の選び方と、手間のかけ方で3段に分ける手順は「ターゲット企業(ターゲットアカウント)とは?BtoBマーケ・セールスでの選び方」で紹介しています。
| Tier | 振り分けの基準(記入例の会社の場合) | 社数の目安 | リソース配分 |
|---|---|---|---|
| Tier1 | 5つの要素すべてに合い、インテントデータに検討の手がかりが出ている | 数十社 | 1社ずつアカウントプランを作り、営業とマーケティングが一緒に提案する |
| Tier2 | 業種・規模・課題に合うが、手がかりはまだ出ていない | 数百社 | 業種や課題ごとにまとめた資料・セミナーで接点を作る |
| Tier3 | 業種と規模だけ合う | それ以上 | 広告や記事で、社名と課題を知ってもらう |
セールスは、ICP判定が「合致」の企業から順にアポイントを取りにいきます。条件に合わない企業の商談に、提案書づくりや見積もりの工数を割かずに済みます。ICPの「組織の課題」と「意思決定構造」は、そのまま初回訪問の準備になります。誰に会い、どの困りごとから話を始めるかが、訪問の前に決まるからです。
月次の定例では、マーケティングとセールスが同じ一覧を見て、段階が進んだ企業を数えます。段階は、自社サイトへの訪問、リード(既に名刺や問い合わせのある企業への再接触と、新しく獲得したリード)、商談の順です。商談につながらない条件は、次の四半期の見直しで外します。
ABMの進め方はABMとは?アカウントベースドマーケティングの意味で、インテントデータの仕組みはインテントデータとは?仕組みと部署別の使い方で紹介しています。
よくある失敗は、業種と規模だけで止める、願望で書く、マーケティングだけで作る、の3つです。
業種と規模だけでは、当てはまる企業が数千社残ります。営業から見ると、どこから当たればよいのかが分かりません。組織の課題と意思決定構造まで書くと、連絡する前に外せる企業が増え、残った企業ではアプローチすべき部署まで分かります。
希望から書いたICPは、受注の記録と合いません。まず実績から書き、新しく開拓したい市場は「次に広げる条件」として別に持ちます。広げた市場で受注が出てから、ICPに入れます。
ICPの材料は、営業が持つ失注の理由と、カスタマーサクセスが持つ解約の理由です。マーケティング部門だけで作ったICPは、リードを集めやすい企業の条件に寄り、受注しやすい企業の条件とずれていきます。作る場には、営業とカスタマーサクセスの責任者を最初から入れます。
ICPは、ABMやインテントデータと組み合わせて使う言葉です。
手を付けるなら、まずCRMの企業の項目に「ICP判定」を1つ足すところからです。値を入れようとして迷った企業が、あなたの会社のICPに足りない条件を教えてくれます。
ウルテク(URUTEQ)では、ICPに当てはまる企業が自社サイトで見たページと、社外で調べているテーマを、企業ごとに確かめられます。ターゲット企業の一覧と組み合わせると、どの企業に検討の手がかりが出ているかを、マーケティングと営業が月次の定例で同じように見られます。詳しくはサービス紹介資料で紹介しています。
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