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エンタープライズ営業とは?大手企業の新規開拓を進める5つの手順

この記事のポイント

エンタープライズ営業は、大手企業の部署と役割を洗い出し、入口の部署から他の部署へ広げて進める営業です。

たとえば、面談は取れて、部長も好意的だった。それなのに、稟議の段階で止まり、次の日程が決まらない。大手企業の営業では、こういう案件が起こります。

提案の中身が合っていても、購入を決める部署を把握していないと、稟議の段階で止まります。面談の相手の隣には、予算を持つ部署、情報システム、法務、購買が控えています。

この記事でわかること
  • エンタープライズ営業の意味と、中小企業向けの営業との違い
  • 大手企業の商談が長引き、稟議で止まる理由
  • 大手企業の新規開拓を進める5つの手順
  • 部署と役割(購買関係者)の洗い出し方と、入口の部署を決める採点表
  • 入口の部署から他の部署へ広げる方法と、紹介を頼む文面の例
  • マーケティングと営業の分担、進み具合の見方、担当者が代わっても接点が切れない記録の列

エンタープライズ営業とは?

エンタープライズ営業とは、大手企業を相手に、複数の部署と決裁に関わる人を把握しながら、長い期間をかけて商談を進める営業です。1回の面談で結論が出る営業とは違い、社内の承認と規程の確認が入る分、受注までの期間が長くなりやすい営業です。

「エンタープライズセールス」「大手企業向けの営業」「エンプラ営業」とも呼ばれます。IT・SaaSの会社で使われる言葉ですが、製造業や設備の会社が、大手企業に新しい商材を売るときにも当てはまります。

ここでいう大手企業に、決まった線はありません。従業員数や売上で自社の基準を決めるのが実務です。たとえば「従業員1,000人以上」「グループ会社を持つ」と決め、その条件に当てはまる企業を、ターゲット企業として設定します。

もう一つ、押さえておきたい点があります。エンタープライズ営業は、1社から1件の契約を取って終わりではありません。最初の部署で成果が出たら、同じ企業の別の部署、グループ会社へ広げます。契約が、その企業との取引の入口になります。

ABM(アカウントベースドマーケティング)は、ターゲット企業を単位に、マーケティングと営業が連携する考え方です。エンタープライズ営業は、そのうち大手企業の中の部署と人に、営業が入り込んでいく進め方にあたります。考え方の全体は「ABM戦略とは?進め方6ステップと商談につながらない3つの原因」で書いています。

エンタープライズ営業と中小企業向けの営業の違いは?

違いは、商談に関わる人、検討期間、最初の動き、受注後の4つに表れます。中小企業向けの進め方は、決める人が少ない前提です。大手企業では、面談を重ねても、購入を決める部署に届かないことがあります。

比べる点エンタープライズ営業(大手企業)中小企業向けの営業
商談に関わる人利用部署、予算の部署、情報システム、法務、購買、経営層など複数決裁者が少ない場合は、経営者や責任者で決まる
検討期間長くなりやすい。社内の稟議と規程の確認が入る比較的短い
最初の動きターゲット企業(大手企業)と部署を先に決め、こちらから接点をつくる問い合わせや資料請求に応える形が中心
受注後別の部署やグループ会社へ広げる継続利用や追加の契約

表のうち、進め方に直結するのは「最初の動き」です。問い合わせを待つ形だけでは、ターゲット企業の部署との接点が増えません。ターゲット企業の側から、対象の部署を先に決め、アウトバウンドの営業、広告、展示会、紹介を組み合わせて、接点をつくりにいきます。

反対に、中小企業向けの営業にある「担当者が前向きなら、そのまま見積もりを出す」進め方は、大手企業では稟議で止まる原因になります。担当者が前向きでも、予算を持つ部署と情報システムの同意がなければ、稟議で止まります。

エンタープライズ営業とThe Modelの違いは?

The Modelは、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスの順に担当を分けて進める体制です。エンタープライズ営業は、先に企業を決め、その企業の中で部署を広げていく進め方です。

The Modelでは、マーケティングが集めたリードを、インサイドセールスが選び、フィールドセールスが商談を進めます。リードの数を前提に、選別と引き継ぎを分業する考え方です。エンタープライズ営業では、リードを待たず、ターゲット企業の側から入ります。受注のあとに別の部署へ広げる段階まで含めて、1つの流れです。

どちらかを選ぶ話ではありません。商材ごとに体制を分けるなら、問い合わせに応える商材にはThe Modelの流れを、大手企業を狙う商材にはエンタープライズ営業の進め方を当てる形になります。

なぜ大手企業の営業は、商談が長引いて止まりやすい?

大手企業の商談が長引くのは、決める人が1人にとどまらず、部署ごとに見る点が違うからです。止まる理由は、同意が必要な部署、予算と規程の時期、担当者の異動の3つに分けられます。

同意が必要な部署が、面談の相手の外にいる

面談の相手は、課題を持つ現場の責任者であることが多いです。しかし、購入には、予算を管理する部署、システムの安全性を確認する部署、契約書を見る法務、取引先の登録を扱う購買が関わります。面談に出てこない部署の同意が、最後に必要になります。

検討の時期が、会社の予算と規程の区切りで決まる

大手企業では、年度の予算の区切りや、一定額を超えた購入の承認ルールが決まっています。課題が深刻でも、今期の予算は使い切っている、来期の計画に入れる締め切りは過ぎている、ということが起こります。提案の内容と関係なく、時期が検討を止めます。

担当者の異動で、接点が切れる

大手企業では、担当者が異動します。1人の担当者と深く話していても、その人が異動すると、後任に一から説明が必要になります。1人に頼った関係は、異動で切れます。

止まったときは、止まった場所を記録します。どの部署の確認で、どの理由で止まったのかを、企業ごとに残すと、次の案件では、その部署の確認を早く始められます。記録がなければ、同じ場所で何度も止まります。

3つに共通するのは、面談の質だけでなく、関わる部署と人を把握しているかが、商談の進みに影響する点です。

エンタープライズ営業は、どの手順で進める?

大手企業の新規開拓は、企業を絞る、部署と役割を洗い出す、入口の部署を選ぶ、接点をつくって記録する、他の部署へ広げる、の5つの手順で進めます。

大手企業の新規開拓 5つの手順手順1 大手企業を絞る、手順2 部署と役割を洗い出す、手順3 入口の部署を選ぶ、手順4 接点をつくり記録する、手順5 他の部署へ広げる。毎月くり返して、部署ごとの接点を見直す。大手企業の新規開拓 5つの手順1ターゲット企業を絞る企業別の計画を書く2部署と役割を洗い出す役割を表にする3入口の部署を選ぶ点数で入口を選ぶ4接点をつくり記録する接点を記録する5他の部署へ広げる紹介を頼む毎月くり返して、部署ごとの接点を見直す
図1:大手企業の新規開拓は、5つの手順を毎月くり返す
  1. ターゲット企業(大手企業)を絞り、企業ごとの計画を1枚にまとめる:ICP(自社が売りやすい企業の条件)に合う企業から、今期に当てる企業を決めます。企業ごとに、売りたい商材、想定する部署、目標の商談の件数を書きます。
  2. 部署と役割を洗い出す:購入に関わりそうな部署と役割を、公開情報と名刺から一覧にします。分からない部署は空欄にして残します。
  3. 入口の部署を選ぶ:課題を持ち、予算に近く、すでに接点がある部署から、最初に入る部署を1つ決めます。
  4. 入口の部署に接点をつくり、結果を記録する:メール、電話、広告、展示会、紹介から手段を選び、いつ、誰に、何をしたかを企業単位で残します。
  5. 他の部署へ広げ、毎月見直す:入口の部署の同意を得て、次の部署を紹介してもらいます。毎月、部署ごとの接点を確かめます。

手順1と2は準備、手順3と4は入口の選び方と最初の接点、手順5は広げる段階です。この順番を入れ替えて、いきなり役員に連絡する方法もありますが、実績も紹介もない状態では、役員に話を聞いてもらう理由を作りにくくなります。

ターゲット企業の条件づくりは「ICP(理想顧客プロファイル)とは?BtoBマーケ・セールスでの作り方と活用法」を、企業を決めたあとの当て方は「ターゲット企業へのアプローチ|優先順位付けから商談獲得の5手順」を参照してください。

大手企業の購買関係者は、どう洗い出す?

購買関係者とは、購入の判断や承認に関わる人のことで、部署の名前で決めつけず、案件の中で果たす役割に分けて洗い出します。役割は、課題の持ち主、予算の持ち主、技術と安全性の確認、契約と購買の確認、最終の承認の5つです。

役割見ていること部署の例先に用意するもの
課題の持ち主いまの業務の困りごとが解消するか事業部、生産技術、営業企画現場の課題に合わせた事例と、導入後の変化
予算の持ち主費用に見合うか、今期の予算に入るか事業部の管理部門、経営企画費用の内訳と、導入までの時期の目安
技術と安全性の確認既存のシステムと合うか、情報が守られるか情報システム、セキュリティ接続の方法、保管する情報の範囲を書いた資料
契約と購買の確認契約条件、取引先としての登録法務、購買契約書のひな形、取引先登録に必要な書類
最終の承認会社の方針に合うか役員、部門長決裁者が1枚で判断できる要約

あなたが担当している大手企業で、5つの役割のうち、担当者の名前まで分かっているのはいくつでしょうか。数えてみると、足りない役割が見えます。

会社によって、同じ役割を別の部署が持ちます。たとえば予算の持ち主が、事業部の部長のこともあれば、経営企画のこともあります。部署の名前で決めつけず、案件ごとに、この役割は誰かを確かめます。

公開情報と名刺から、役割に当てはめる

大手企業の部署は、公開情報から一部が分かります。上場企業なら、有価証券報告書に事業の区分が載っています。部署名までは載らないので、ほかの情報と合わせます。金融庁のEDINETで、報告書を無料で閲覧できます(2026年10月確認)。ほかに、会社の組織図、プレスリリース、採用ページの職種名、展示会で交換した名刺があります。

洗い出した情報は、部署、役割、分かっている担当者、最後の接点の日を、企業ごとの1枚にまとめます。分からない役割は「不明」と書いて残します。空欄が見えると、次に誰へ何を聞けばよいかが決まります。

注意したいのは、個人の連絡先の扱いです。名刺や公開された窓口以外から、担当者の連絡先を推測したり、買ったりして連絡する方法は避けます。分かっていない役割は、入口の部署の担当者に「この件は、どの部署が見ますか」と聞いて埋めます。

エンタープライズ営業で最初に入る部署は、どう決める?

入口の部署は、課題の強さ、予算への近さ、すでにある接点、進行中の案件の4つを点数にして決めます。部署の大きさや、役職の高さだけで選ぶと、話を聞いてもらえても、社内で承認が進みにくくなります。

次の表は、架空の大手メーカー(サンプル製造株式会社)に、工場の設備の稼働を管理するサービス(架空)を売る場合の例です。各項目を0〜3点でつけます。

部署課題の強さ予算への近さすでにある接点進行中の案件合計
生産技術部32139
情報システム部12216
経営企画部13026

この例では、生産技術部が9点で最初の入口です。課題が強く、新工場の計画という進行中の案件があるからです。情報システム部と経営企画部は、後から確認が必要になる部署として、手順5で広げるときに回します。

点数は、営業とマーケティングが一緒に決めます。点のつけ方に正解はありませんが、合計だけを見て決めず、点が低い項目の理由を一言書いておきます。たとえば経営企画部の「すでにある接点」が0点なら、接点のある人を探す、が次の作業になります。

点数の根拠は、公開情報から集めます。課題の強さは、中期経営計画やプレスリリースにある事業の方針、新工場や新規事業の発表から読みます。予算への近さは、事業部の独立性や、その部署が過去に同種の購入をしているかで判断します。分からない項目は、無理に埋めず「不明」と書き、面談で確かめます。

入口の部署を決めたら、最初の接点で伝えることも決めます。商材の説明より先に、その部署が抱えていそうな課題を、公開情報から分かったことと合わせて1文で伝えます。「新工場の計画が公表されていますが、立ち上げ時の設備の稼働管理は、どの部署が見ていますか」のように、質問の形にします。

入口の部署から他の部署へ、大手企業の営業をどう広げる?

他の部署へ広げるときは、入口の部署の担当者に、社内で話を通す人の紹介を頼みます。入口の部署がすでに内容を知っているので、こちらが他の部署に直接連絡するより、紹介のほうが社内で話が通りやすくなります。

入口の部署から、紹介で他の部署へ広げる入口の部署に課題の整理と事例を渡したあと、紹介で情報システム部と経営企画部の確認に進む。実績ができたら、別の事業部やグループ会社へ同じ形で広げる。入口の部署から、紹介で他の部署へ広げる入口の部署課題の整理と事例を渡した紹介情報システム部接続と安全性の確認経営企画部予算と時期の確認実績別の事業部・グループ会社同じ形で広げる広げる前に、相手が社内で説明できる材料を渡しておく
図2:入口の部署から、紹介で他の部署へ広げる

紹介を頼む前に、入口の部署で小さな成果を出しておきます。実際の導入でなくても、相手が社内で説明できる材料があれば進みます。次の3つが目安です。

  • 課題の整理を、相手の言葉で1枚の資料にまとめて渡した
  • 同じ業界の導入事例を、相手の社内で共有できる形で渡した
  • 技術の確認や費用の概算など、他の部署が必ず聞く質問に、先に答えた

そのうえで、紹介を頼む文面を作ります。

◯◯様、ここまでの内容で、情報システム部のご確認が必要になると考えています。事前に確認いただきたい点を、1枚にまとめました。ご担当の方をご紹介いただくことは可能でしょうか。難しい場合は、◯◯様から資料をご共有いただく形でも構いません。

文面で意識するのは2つです。確認してほしい点を先に用意していること、紹介が難しい場合の別の道を示していることです。相手の負担を小さくすると、社内で動いてもらいやすくなります。

紹介を断られたら、理由を聞いて記録します。「今は担当を紹介できる時期ではない」なら、時期を聞いて、その少し前に連絡します。「他社と進めている」なら、比較の資料を渡して、判断の材料を増やします。断られても、入口の部署との関係を保つことが、次の機会につながります。

決裁者との接点づくりは「BtoBで決裁者にアプローチする7つの方法」にまとめています。購買に関わる複数の人に向けた情報の出し方は「Buying Group Marketing(BGM)とは?ABMとの違いと購買グループ攻略6ステップ」を参照してください。

マーケティングと営業は、大手企業の案件をどう分担する?

分担は、ターゲット企業の設定と接点づくりをマーケティングが、部署と人への深い提案を営業が受け持ち、結果を同じ記録に戻し、次に当てる企業を決めます。分担の線は会社ごとに違うので、まず、誰が何を持つかを表にします。

作業マーケティング営業共有する記録
ターゲット企業の設定ICPの条件で一覧を作る現場の知見で追加と除外を伝えるターゲット企業の一覧と条件
部署と役割の洗い出し公開情報から一次の一覧を作る面談で聞いた情報を足す企業ごとの部署と役割の表
最初の接点づくり広告、メール、展示会、資料で接点をつくる電話と紹介で入口の部署に入る接点をつくった日と手段
リードの営業連携リードの情報と接点の履歴を営業に引き継ぐフォローの結果を戻すリードの状態と、営業の対応結果
商談と提案必要な事例と資料を用意する部署ごとの提案と、稟議の支援商談の日程、面談の結果、次の予定

営業連携で問題になりやすいのは、引き継ぎの基準です。どの状態になったら営業が対応を始めるのかが決まっていないと、マーケティングは「渡した」、営業は「対応を始められない」と、食い違います。基準は、自社の営業とマーケティングで決めます。たとえば「入口の部署の担当者と、日程が決まった」という状態を、商談獲得の基準にする、などです。

週に1回、15分で構いません。企業ごとの記録を見ながら、動きが止まった企業と、次に役割が不明な企業を確認します。この確認を続けると、更新を忘れた記録に気づきやすくなります。

エンタープライズ営業の進み具合は、何で見る?

進み具合は、商談の数だけでなく、企業ごとに、接点のある部署と役割がどこまで増えたかで見ます。商談の数は、後から数字に表れる結果です。接点の広がりは、商談に近づいているかを見る手がかりです。商談につながるかは、面談で確かめます。

次の表は、対象にしている大手企業5社の、毎月の進み具合の例です(架空)。

企業(架空)想定する部署・役割接点がある部署・役割最後の接点から次の予定
A社539日あり
B社4134日なし
C社6412日あり
D社50—なし
E社4221日あり

あなたのチームで、いま狙っている大手企業の数と、そのうち接点のある部署の数を、同じ形で並べられるでしょうか。並べられないなら、まず列を作るところからです。

表の見方は3つです。ここでは自社で決める目安として、「接点がある」が想定の半分を超えていれば、広がっているとします(A社、C社)。「最後の接点から」が30日を超え(これも自社で決める目安)、次の予定がないB社は、止まっています。接点がゼロのD社は、手順3の入口選びからやり直します。

商談の数は、別の列で、企業ごとに数えます。商談獲得の定義は、日程が決まった時点か、面談を実施した時点かを決めておきます。定義を変えると、前月と比べられなくなります。施策ごとの効果の確かめ方は「BtoBマーケティングの効果検証|商談から逆にたどる4つの手順」を参照してください。

大手企業の担当者が代わっても、接点が切れないように何を残す?

担当者が代わっても接点が切れないようにするには、担当者の名前だけでなく、部署と役割ごとに、接点の履歴と異動の見込みを残します。1人に頼る記録だと、その人の異動で、企業全体への入口を失います。

部署・役割担当者最後に話した日話した内容次の予定異動の見込み・後任
生産技術部・課題の持ち主◯◯様(架空)10/3新工場の立ち上げ時期10/24に再訪来春に異動の可能性、後任は未確認
情報システム部・技術の確認未接触——紹介を依頼中—

追加した列は、「異動の見込み・後任」です。異動の時期は会社ごとに違います。面談の中で「来期も同じご担当でしょうか」「後任の方は決まっていますか」と聞いておくと、異動のあとに慌てずに済みます。

担当者が異動したら、まず後任への引き継ぎの場を、異動した本人に頼みます。「後任の方に、これまでの経緯をお伝えいただけますか」と頼み、同席してもらう形です。異動した人は、別の部署に移っても、新しい接点になります。名刺の連絡先と、異動先の部署は、必ず更新します。

あなたの手元の記録に、後任の名前と、異動の時期の見込みを書く欄はあるでしょうか。なければ、まず1社分から足します。

この記録は、営業の個人の手帳に置かず、マーケティングと営業が同じものを見られる場所に置きます。担当の営業が交代しても、同じ企業への入口が残ります。

エンタープライズ営業で案件が止まる4つの失敗は?

よくある失敗は、入口の部署だけで進める、時期を見ない、記録を個人に任せる、広げる前に提案を詰める、の4つです。

入口の部署だけで進め、他の部署の確認が後に回る

入口の部署が前向きだと、他の部署への確認を後回しにしがちです。稟議の直前に、情報システムから「現在のシステムと合わない」と言われると、稟議の準備をやり直すことになります。技術と契約の確認は、早い段階で小さく始めます。

年度の予算の時期を見ずに提案する

来期の予算を決める時期を過ぎてから提案すると、次の予算の時期まで進まなくなります。企業ごとに、予算を決める時期を聞き、その少し前に、費用の概算を出せるようにします。

記録を担当者の手帳や頭に置く

担当の営業が休む、異動する、辞める。そのたびに、企業の状態が分からなくなります。記録は、共有の場所に置きます。

広げる前に、提案を作り込みすぎる

入口の部署と話す前に、複数の部署向けの大きな提案を作っても、前提が違ってやり直しになります。最初は、入口の部署の課題に絞った1枚から始め、他の部署への提案は、広げる段階で作ります。

入口の部署だけで進める失敗と、記録を個人に任せる失敗は、部署と役割の表があると防ぎやすくなります。手順2の洗い出しに戻ると、直す場所が分かります。

公開事例では、アプローチする企業をどう決めている?

公開されているウルテクの事例では、サイトの行動データなどを手がかりに、営業が当たる企業の順番を決めています。

株式会社リコー様は、新規事業の領域で、問い合わせに至らない訪問企業が多いことを課題にしていました。展示会の名刺リストとWebの行動データを組み合わせて閲覧時間や訪問数が多い企業を特定し、実際の商談獲得につなげています。閲覧時間と訪問数で優先順位をつけ、営業が当たる順番も決めています(リコー様の事例)。

この事例は、どの企業から当たるかを決める手がかりです(2026年10月確認)。名刺で分かる部署と、サイトで調べているテーマを合わせると、どの部署が関心を持っていそうかが、入口を選ぶ手がかりになります。ただし、閲覧は関心の手がかりで、購入の予定を示すものではありません。面談で確かめます。

レクシスネクシス・ジャパン様は、マーケティングから営業へ、毎週5件に厳選した営業先を共有しています。好調なときは、その半数以上が商談につながっています(レクシスネクシス・ジャパン様の事例)。件数を絞って営業へ渡す点は、営業の時間が限られる大手企業の案件でも参考になります。

エンタープライズ営業でよくある質問

エンタープライズ営業に向いている商材はどんなものですか?
単価が高く、複数の部署に関わり、導入後に別の部署へ広げやすい商材が当てはまります。
エンタープライズ営業は何人の体制が必要ですか?
人数に決まりはありません。1人が1か月に深く対応できる企業数から、人数を決めます。
エンタープライズ営業とインサイドセールスは、どう組み合わせますか?
組織ごとに違います。インサイドセールスがリードのフォローを、営業が入口の部署への提案を担う分け方があります。
ABMとエンタープライズ営業は、どう違いますか?
ABMは企業を単位にした考え方で、エンタープライズ営業は、その企業内の部署と人への営業の進め方です。
大手企業の担当部署が分からないときはどうしますか?
公開情報で部署を絞り、分からない役割は、入口の担当者に「どの部署が見るか」と聞きます。
エンタープライズ営業とSMB営業は、何が違いますか?
SMB営業は少人数で決まる商談が中心で、エンタープライズ営業は複数の部署の同意が要ります。

まとめ|エンタープライズ営業を、部署と役割から進める

  1. 役割で洗い出す:ターゲット企業ごとに、課題の持ち主、予算の持ち主、技術と安全性の確認、契約と購買の確認、最終の承認の5つの役割を埋めます。
  2. 入口から広げる:課題の強さ、予算への近さ、接点、進行中の案件を点数にして入口の部署を決め、紹介を頼んで他の部署へ広げます。
  3. 記録して見直す:部署と役割ごとの接点と異動の見込みを共有の記録に残し、毎月、ターゲット企業からの商談獲得の進み具合を確かめます。

大手企業の商談は、面談の回数だけでは進みません。部署と役割の表を作ると、どこに接点がなく、誰に何を確認すれば稟議が通るかが分かります。

まだ表がなければ、今期に当てる大手企業のうち1社を選び、5つの役割を埋めるところから始めてみてください。ターゲット企業からの商談獲得の仕組み化を、毎月続ける土台は、その1枚の表から整います。

著者紹介
井上翔太
ウルテク| URUTEQ 事業責任者 ---- 新卒で証券会社に入社し、BtoCのセールスを経験。その後、PR代理店にてBtoB・BtoC企業向けのデジタルマーケティングコンサルティングや新規営業を担当。ログリー株式会社入社後は、BtoBマーケティング向けSaaSの開発やマーケティング、セールスなどを行う。現在は、これまでの経験を活かし、BtoBマーケAIエージェント「アカウントインテリジェンスツール ウルテク」の事業責任者を務めている。

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