BtoBマーケティング
営業パイプライン管理は、案件を相手の出来事で区切った段階に分け、止まっている案件を毎週確かめて受注につなげる管理の方法です。
今月に受注するはずだった案件が、月末になって来月に延びる。営業会議では進んでいると聞いていたのに、どの段階で止まっていたのかを誰も説明できない。新しい商材を売り始めた事業部では、よくある場面です。
案件の数が少ないうちは、担当者の頭の中で進み具合を追えます。商材が増え、外勤の営業が出張で手一杯になると、どの案件がどこで止まっているかを、会議で確かめる手立てがなくなります。
目次
営業パイプライン管理とは、商談から受注までの流れをいくつかの段階に分け、いまどの段階に何件の案件があり、どこで止まっているかを確かめる管理の方法です。セールスパイプライン管理とも呼びます。
名前は、石油やガスを送る管(パイプ)のたとえです。管の入口から出口まで流れる様子に、商談が受注へ進む流れをたとえています。入口に入った案件が出口まで届かず、途中で詰まっていないかを見るのが、管理の中身です。
営業パイプラインは案件1件ずつの段階を、営業ファネルは段階ごとの数の減り方を、売上予測は受注する金額の見込みを見ます。
| 言葉 | 何を見るか | 使う場面 |
|---|---|---|
| 営業パイプライン | 1件ずつの案件が、いまどの段階にあるか | 毎週の営業会議で、止まっている案件を話す |
| 営業ファネル | 段階が進むにつれて、案件の数がどれだけ減るか | 月ごとに、どの段階で数が減りすぎているかを見る |
| 売上予測(フォーキャスト) | 今期・今月に受注する金額の見込み | 経営や事業部長に、着地の見込みを伝える |
3つは別々の道具ではありません。営業パイプラインの記録を数えるとファネルになり、金額と受注の割合を掛けると売上予測になります。もとになるのは、案件ごとの段階の記録です。
BtoBの案件は、止まっても担当者の報告だけでは気づきにくいため、営業パイプライン管理で段階ごとに確かめる必要があります。受注までに、複数の部署の確認と稟議を通るからです。
新しい商材ほど、この傾向は強くなります。相手の会社にとっても初めて買うものなので、評価に使う試作やデモの期間、情報システム部門や法務の確認、予算の区切りが、商談の途中に入ってくるからです。
段階の記録がないと、止まっている理由が「相手の稟議待ち」なのか「こちらが見積を出していない」なのかを、会議で分けられません。前者なら待つしかありません。後者なら今週中に動けます。この2つを分けることが、営業パイプライン管理のいちばんの役目です。
もう1つの役目は、受注の見込みを数字で話せるようになることです。「提案・見積の段階に3件あり、過去の受注の割合から見込みは1件強」(架空の例)と言えれば、足りない分を新しい商談で埋める話に進めます。
営業パイプラインの段階は、たとえば初回商談、課題の確認、評価・試作、提案・見積、稟議・内示、受注の6つで、相手の会社で起きた出来事で区切ります。「提案した」はこちらの行動なので、相手が提案をどう受け止めたかが分かりません。「相手が見積を受け取り、稟議にかける月を答えた」なら、相手が前に進んでいることを確かめられます。
部品や素材のメーカーが、装置や計測などの新しい商材を売る場合の、架空の例です。
各段階の、次へ移る条件を表にしておくと、担当者によって判定がずれません。
| 段階 | 次の段階へ移る条件 |
|---|---|
| 初回商談 | 相手が課題と、導入したい時期を話した |
| 課題の確認 | 相手が決裁の流れと、確認する部署を話した |
| 評価・試作 | 相手がデモやサンプルを評価し、結果を伝えてきた |
| 提案・見積 | 相手が見積を受け取り、稟議にかける月を答えた |
| 稟議・内示 | 相手から内示か、発注の予定の連絡が来た |
段階の数は、相手の出来事で区切れる数にします。出来事で判定できない段階を作ると、その段階に案件がたまり、止まっているのか進んでいるのかが分からなくなります。判定できない段階は、前後の段階とまとめます。
あなたの会社の商材で、評価や試作の期間が長いなら、その期間を1つの段階として独立させます。いちばん長く止まる場所が段階として見えていないと、会議で話す場所が決まりません。
営業パイプライン管理で見る数字は、段階ごとの案件数と金額、段階の移行率、段階にとどまる日数、受注までの日数の4つです。受注の見込みは、段階ごとの金額に過去の受注の割合を掛けて出します。
4つの数字は、見る頻度が違います。毎週の会議で見るのは、段階ごとの案件と、とどまる日数です。移行率と受注までの日数は、案件が10件、20件とたまってから、月に1回見ます。件数が少ないうちに割合を出しても、1件の受注や失注で数字が大きく動くためです。
架空の計算例:提案・見積の段階に3件・合計3,000万円の案件があり、過去にこの段階から受注した割合が40%なら、見込みは1,200万円です。稟議・内示の段階に1件・800万円があり、過去の割合が80%なら640万円。合わせて1,840万円が、今期の見込みになります。
足りない分は、逆算で考えます。架空の計算例:半期の受注の目標が2件で、過去の記録では初回商談10件のうち1件が受注しているなら、半期に要る初回商談は20件、月にならすと3〜4件です。この数字が、営業から見たマーケティングへの依頼の件数になります。
とどまる日数が、段階ごとの過去の平均日数の2倍を超えたら会議で取り上げる、のように基準を決めておきます(2倍は例です)。基準がないと、長く止まっている案件ほど話題に上らず、月末に延期が分かります。
営業パイプライン管理は、段階を決める、入れる案件を決める、更新する項目を絞る、毎週の会議で見る、毎月見直す、の5つの手順で始めます。
各手順の中身は次のとおりです。
名刺を交換しただけの相手や、資料をダウンロードしただけの担当者まで入れると、初回商談の段階の件数がふくらみます。件数が多いのに受注が少なく見え、移行率も受注の見込みも当てにならなくなります。営業パイプラインに入れるのは、日程が決まり、面談をした商談からにします。
外勤の営業は、出張と大きな案件で手が埋まりがちです。入力する列が多いと、更新は後回しになり、会議の前日にまとめて書かれます。これでは、止まっている案件に気づくのが1週間遅れます。
「次の行動」と「次の予定日」の2つなら、商談の帰りに1分で書けます。次の予定日が空欄の案件は、それだけで「次に何をするかが決まっていない案件」だと分かります。段階を移すのは、表の条件を満たしたときだけにします。日報のツールを使っているなら、日報の欄にこの2項目を入れておくと、書く場所が1つで済みます。
会議では、全件を順番に読み上げません。次の予定日が過ぎた案件、とどまる日数が基準を超えた案件、今月に稟議の予定がある案件の順に話します。1件ごとに決めるのは、「誰が」「いつまでに」「何をするか」の3つです。
止まっている理由が相手の都合なら、次に連絡してよい時期を書いて、次の案件に移ります。こちらの都合なら、今週中に動く担当と日付を決めます。
段階の設定や、案件ごとの次の予定日の入れ方は、SFAやCRMの公式の説明で確かめられます。たとえばHubSpotでは、取引の段階を設定する方法(HubSpotのナレッジベース)で、段階の追加と、段階ごとの受注の割合(HubSpotでは確率と呼びます)の決め方が説明されています(2026年10月確認)。
商談の手前は、案件ではなくターゲット企業を単位にして、企業ごとの段階を毎月数えます。まだ案件になっていない会社には、金額も見積の時期もないからです。
商談の手前と商談のあとで、何が変わるかを表にすると、次のとおりです。
| 項目 | 商談の手前 | 商談のあと |
|---|---|---|
| 管理する単位 | ターゲット企業 | 案件 |
| 段階 | 空白から商談までの5つの段階 | 初回商談から受注まで |
| 主に持つ人 | マーケティング | 営業 |
| 置く場所 | ターゲット企業の台帳 | SFA・CRM |
| 見る数字 | 段階ごとの社数と、月ごとの移り | 案件数・金額・移行率・日数 |
商談の手前の段階は、たとえば「空白(接点も来訪もない)」「サイト訪問(来訪が分かっている)」「既存リード(以前からの接点がある)」「新規リード(新しく接点ができた)」「商談」の5つに分けます。ターゲット企業の台帳で、それぞれの段階に何社あるかと、月ごとに何社が次の段階へ移ったかを数えます。
2つの管理は、「商談」の段階でつながります。商談の手前の台帳で商談に入った会社が、そのまま営業パイプラインの初回商談になります。初回商談が足りない月は、台帳のどの段階の会社が少ないのかまでさかのぼれます。
あなたのチームで、初回商談の件数が毎月ばらつくなら、商談のあとの案件より、その手前を先に確かめてください。案件の元になる会社が足りなければ、会議でどれだけ案件を押しても受注は増えません。
ウルテクは、この商談の手前を受け持ちます。ターゲット企業ごとの来訪やサイトの外で調べているテーマと、お客様のマーケティング・営業結果を企業ごとにつなぎ、毎月の段階の移りを確かめます。調べているテーマは検討の手がかりで、購入の予定を示すものではありません。商談を保証するものでもありません。
公開事例では、レクシスネクシス・ジャパン様は、サイト訪問企業の中から週5件に厳選したリストを営業とマーケティングで共有し、好調時は半数以上が商談化しています(レクシスネクシス・ジャパン様の事例)。商談の手前から営業へ渡す数を、先に決めた例です。ターゲット企業を段階で分けて連絡する順番を決める方法は、ターゲット企業へのアプローチで書いています。
営業パイプライン管理が失敗する原因は、段階の判定がばらつく、入力が多すぎる、見込みのない案件が残る、会議が報告の場になる、の4つです。どれも、表やツールより、運用の決まりが足りないことから起きます。
| 原因 | 起きている兆し | 戻る手順 |
|---|---|---|
| 段階の判定がばらつく | 同じ段階の案件でも、担当者によって受注の割合が大きく違う | 手順1(段階と、次の段階へ移る条件の表) |
| 入力が多すぎる | 会議の前日にまとめて更新され、予定日が空欄の案件が増える | 手順3(毎回書く項目を2つに絞る) |
| 見込みのない案件が残る | 半年以上動かない案件があり、見込みの金額がふくらむ | 手順5(毎月の見直しで、失注か保留に移す) |
| 会議が報告の場になる | 全件を読み上げて終わり、誰が何をするかが決まらない | 手順4(止まっている案件から話す) |
3つ目の見込みのない案件は、とどまる日数が基準を大きく超え、相手からの返事もないものです。失注か保留に移すときは、理由と、次に連絡してよい時期を書いておきます。消さずに理由を残すと、時期が来たときに連絡し直せます。
ただし、受注が伸びない理由が、営業パイプラインの中にないこともあります。初回商談の件数そのものが少ない、ターゲット企業に合わない会社の商談が多い、といった場合です。そのときは、BtoBマーケティングの効果検証の手順で、商談から施策へ逆にたどって確かめます。マーケティングと営業で数字の定義をそろえる役割は、RevOps(レベニューオペレーション)とはで書いています。
案件が少ないうちは、担当者の記憶でも案件の進み具合を追えます。商材や担当者が増えたときに、段階の基準と週1回の会議があれば、止まっている案件を月末より前に見つけられます。
あなたのチームの案件から、まず次の予定日が空欄の案件を数えるところから始めてみてください。商談の手前のターゲット企業の段階と、施策と営業の結果を企業ごとに集めて、商談獲得の仕組み化を続ける方法は、サービス資料で紹介しています。
ウルテクについて、もっと詳しく知りたい方へ