BtoBマーケティング
インサイドセールス
BANTとは、予算・決裁権・必要性・導入時期の4項目を聞き取り、商談に進められるかを判断する営業の枠組みです。
BANT(バント)とは、予算(Budget)・決裁権(Authority)・必要性(Need)・導入時期(Timeframe)の英語の頭文字を取った、営業の聞き取りの枠組みです。4つを聞き取って、リード(見込み顧客の担当者)と商談に進められるかを判断するときに使います。
インサイドセールスの担当者が、資料請求のあった会社に電話をかけたとします。「ご予算はありますか」「決めるのはどなたですか」と順に聞いていくと、相手の答えはだんだん短くなります。予算を聞いたところで「まだ何も決まっていません」と言われ、そのまま電話が終わることもあります。
聞けた内容を営業に引き継いだあとも、困りごとは残ります。半年後に同じ会社から問い合わせが届いたとき、前に聞いた時期や決める人が、いまも同じかどうかが分かりません。メモには「予算あり」とだけあり、誰がいつ言ったのかが残っていないこともあります。これでは、次の電話で何から聞き直せばよいかが分かりません。
この記事では、4項目の聞き方と、聞いた内容を「いつ・誰から聞いたか」まで企業ごとに残す方法を中心に紹介します。
目次
BANTとは、予算・決裁権・必要性・導入時期の4項目を聞き取り、商談に進められるかを判断する営業の枠組みです。読み方は「バント」です。聞き取った4項目の中身は、BANT情報とも呼ばれます。
4つの項目と、BtoBで確かめることは次のとおりです。
| 項目 | 英語 | 確かめること | BtoBで気をつけること |
|---|---|---|---|
| 予算 | Budget | 導入にかけるお金を用意できるか、いつ確保するか | 予算は年度の計画で決まることが多く、「まだ無い」だけで見送る必要はありません。どの時期の計画に入れるかを聞きます |
| 決裁権 | Authority | 誰が導入を決め、誰が検討にかかわるか | 決める人が1人とは限りません。使う部署のほか、情報システム部門や購買部門が検討に入ることもあります |
| 必要性 | Need | どんな課題があり、どれくらい困っているか | 担当者個人の困りごとと、組織として解決したい課題を分けて聞きます |
| 導入時期 | Timeframe | いつまでに導入したいか、なぜその時期なのか | 時期の理由(期末・システムの更新・新しい事業の開始など)まで聞くと、予定が変わったときに気づけます |

項目の書き方は、紹介する会社によって少し違います。Needを「Needs(ニーズ)」、Timeframeを「Time frame」と書く例もありますが、指すものは同じです。
BANTは、リードの段階の名前ではありません。段階を進めるかを判断するときに聞く項目です。MQL(マーケティング適格リード)とSQL(営業適格リード)が、リードがどこまで進んだかを表す段階の名前にあたります。マーケティングからインサイドセールスへ、インサイドセールスからフィールドセールス(商談を担当する営業)へ引き継ぐことは、トスアップと呼ばれます。
リードが営業の対象になるかを、課題や検討の状況から見極めることは、リードクオリフィケーションと呼ばれます。BANTは、その見極めで使われる代表的な枠組みです。
BANTを使う場面で多いのは、インサイドセールスが、MQLのリードをSQLとしてフィールドセールスへ引き継ぐかを決めるときです。たとえば「必要性と導入時期が本人から聞けたらSQLにする。決裁権と予算は面談で聞く」のように、4項目のうちどれがそろえば引き継ぐかを、営業と決めておきます。MQLの決め方は「MQLとは?」、引き継ぎ全体の流れは「トスアップとは?」で詳しく扱っています。
BANTが役に立つのは、商談に進めるかの判断と、引き継ぐ情報と、見送りの理由を、同じ4つの項目でそろえられるからです。
「見込みがある」の中身が担当者ごとに違うと、引き継いだリードを営業が受け取らない、という行き違いが起きます。4項目のどれがそろえば次へ進めるかを決めておけば、インサイドセールスとフィールドセールスが同じ物差しで判断できます。
フィールドセールスが最初の面談の前に知りたいことの多くは、この4項目に入ります。4項目を欄にして引き継ぐと、営業は同じ質問をくり返さずに、課題を深く聞くところから話を始められます。
商談に進まなかったとき、どの項目が足りなかったかを残しておくと、理由を数えられます。「予算の計画が来期以降」が多ければ案内の時期を計画の会議の前に寄せ、「検討にかかわる人に届いていない」が多ければ情報システム部門や購買部門に向けた資料を用意する、というように、マーケティングで直すことが決まります。
聞く順番に決まりはありませんが、BtoBでは必要性、導入時期、決裁権、予算の順に聞くと、相手が答えやすくなります。困りごとから話すほうが、相手にとって答える理由があるからです。
架空の会社「サンプル精機株式会社」の生産技術部に、外観検査を自動にする装置を案内する場面で、質問の例を並べます。
| 順番 | 項目 | 質問の例 | 答えを聞けたら、次に確かめること |
|---|---|---|---|
| 1 | 必要性 | 「いまの検査工程で、人手がいちばんかかっているのはどこですか」 | その手間で困っている部署が、ほかにもあるか |
| 2 | 導入時期 | 「いつごろまでに、やり方を変えたいとお考えですか」 | その時期に理由があるか(生産ラインの更新・期末など) |
| 3 | 決裁権 | 「導入を決めるとき、ほかにどなたが検討に入りますか」 | 最後に決めるのはどの部署の誰か、購買部門が見積もりを見るか |
| 4 | 予算 | 「この取り組みの費用は、今期と来期のどちらの計画に入りますか」 | 計画を決める会議はいつか、それまでに何がそろえばよいか |
予算は、金額より先に「どの時期の計画に入るか」を聞くと、答えてもらいやすくなります。金額は、課題と時期がはっきりしてから、面談の場で確かめても遅くありません。

最初の電話で聞くのは、必要性と導入時期までで十分です。決裁権と予算は、面談でフィールドセールスが深く聞く項目として引き継ぎます。4項目を1回で聞こうとすると、質問が続いて尋問のように聞こえ、相手の答えが短くなります。2回に分けて聞けば足ります。
「予算あり」「決裁者は部長」のように縮めて書くと、あとで読む人が中身を確かめられません。「来期の設備の計画に入れるかを12月に決める、と課長が話していた」のように、相手の言葉と言った人を残します。
空欄は、何も伝えません。予算が決まっていないこと、決める人がまだ決まっていないことも、大事な情報です。空欄にせず「未定(理由:新しい事業の計画づくりの途中)」のように書いておくと、次に聞く人が何から聞けばよいかが分かります。
BANT情報は、担当者ごとではなく企業ごとに残し、項目ごとに「聞いた日」と「出どころ」を書き添えます。予算や時期、検討にかかわる人は、時間がたつと変わるからです。
出どころは、大きく3つに分けます。本人(窓口の担当者)から聞いたこと、同じ会社の別の担当者など本人以外から聞いたこと、データからの手がかりです。データからの手がかりには、自社サイトで料金や導入事例の資料を読んだこと、サイトの外で調べているテーマ、発表された中期経営計画などが入ります。手がかりは推測なので、本人に確かめるまでは「聞けた」の欄に入れません。
サンプル精機株式会社の記入例です(架空)。
| 項目 | 中身(相手の言葉のまま) | 聞いた日 | 出どころ |
|---|---|---|---|
| 必要性 | 検査工程の人手が足りず、夜勤の人を集めにくい | 10月7日(電話) | 本人(生産技術部の課長) |
| 導入時期 | 来春の生産ラインの更新に合わせたい | 10月7日(電話) | 本人(生産技術部の課長) |
| 必要性 | 検査の記録づくりにも手間がかかっている | 10月16日(面談) | 本人以外(面談に同席した品質保証部の主任) |
| 決裁権 | 生産技術部の部長と工場長が決める。購買部門も見積もりを見る | 10月16日(面談) | 本人(生産技術部の課長)。部長と工場長からは、まだ話を聞いていない |
| 予算 | 来期の設備の計画に入れるかを、12月の会議で決める | 10月16日(面談) | 本人(生産技術部の課長) |
| 手がかり | 同じ会社で、外観検査の自動化を調べる動きがある | 10月14日 | データ(サイトの外で調べているテーマ)。どの部署の動きかは未確認 |
本人以外から聞いたことも「聞けた」に入れますが、誰から聞いたかを書き、窓口の担当者の考えと違わないかを次の連絡で確かめます。
同じ会社に複数の担当者がいるときも、行を担当者ごとに分けず、会社の欄に書き足していきます。
大企業では、同じ会社でも事業部や部署ごとに予算や決める人が違うことがあります。会社の欄の中を事業部・部署ごとに分け、どの部署の話かを書き添えます。半年後に品質保証部の別の人から問い合わせが届いても、生産技術部で聞けたことと、まだ話を聞いていない部長と工場長がすぐに分かります。

聞き直す時期も決めておきます。導入時期と検討にかかわる人は、連絡のたびに変わっていないかを確かめます。予算は、計画を決める会議の時期を聞いておき、その前にもう一度連絡します。
「古い」と言われるのは、買い手が営業に会う前に調べる量が増え、決める人も複数になり、4項目を順に聞くやり方が今の買い方に合わなくなってきたからです。4項目そのものは、引き継ぐ情報の最低限の欄として今も役に立ちます。
BtoBの担当者は、問い合わせの前に、サイトや資料で候補を比べていることが多くなりました。最初の電話で「課題はありますか」と聞いても、相手はすでに課題を整理し、候補を絞っている場合があります。相手がどこまで調べたかを先に聞き、その続きから話します。
金額の大きいBtoBの導入では、使う部署のほか、情報システム部門、購買部門、経営層などが検討にかかわることがあります。決裁権の欄を1人の名前で埋めると、ほかの人の反対で話が止まったときに理由が分かりません。決裁権の欄には、検討にかかわる人を役割と名前で並べて残します。購買にかかわる人の集まりの考え方は「Buying Group Marketing(BGM)とは?」で紹介しています。
予算から聞くと、相手は「売り込まれる」と身構えます。課題をまだ話していないのに、お金の話から始まるからです。必要性から聞き、相手の課題を整理する手伝いをしてから、時期や予算に進みます。
足りない項目を補うために、4項目に項目を足した枠組みもあります。
| 枠組み | 項目 | 向いている商談 |
|---|---|---|
| BANT | 予算・決裁権・必要性・導入時期 | 引き継ぐ情報の最低限の欄をそろえたいとき |
| BANTC(バントシー) | BANTに、競合(Competitor)を足す | ほかの会社のサービスと比べられているとき |
| BANTCH(バントシーエイチ) | BANTCに、導入にかかわる人材・体制(Human resources)を足す | 導入したあとに使う人や、社内で進める人が成果を左右するとき |
足した項目の英語の書き方(Competition・Human Resourcesなど)は、紹介する会社によって少し違います。項目を増やすほど、1回の電話で聞き切るのは難しくなります。増やした項目は、面談で聞くものとして引き継ぎの欄に足します。
問い合わせの前から、その会社が調べているテーマを見ておくと、最初の電話で何から話すかを決めやすくなります。ただし、手がかりは推測です。必要性と導入時期は、つながった担当者に聞いて確かめます。
手がかりになるのは、自社サイトで料金や導入事例の資料を読んだこと、サイトの外で調べているテーマ、発表された中期経営計画や新しい事業などです。どれも、課題がある、導入を決めた、という意味ではありません。電話の最初の話題や、最初に聞く質問を選ぶために使います。電話では、相手が何を調べていたかには触れず、テーマを話題として切り出します。

アルバイト採用のコンサルティングを手がける株式会社ノーザンライツ様は、ウルテクで、ある会社がサイトの外で「採用コスト削減」のようなテーマを調べていると分かると、電話で「採用コスト削減の件でお電話いたしました」と伝えています(公開事例)。受付の方が担当者を探すときに、そのテーマを社内で口にしてくれるため、担当者に届きやすくなるそうです。
アポイント獲得率は、以前は1%程度のときもありましたが、5%を超えるようになったと話しています。事例の題は「アポイント獲得率 最大5倍」です。数字は、2026年10月22日時点で公開している事例のページから引いています。
BANTの順番に当てはめると、テーマは、必要性について最初に何を聞くかを決める材料です。課題があるという答えではありません。テーマから推し量った課題が合っているか、いつまでに解決したいかは、つながった担当者に聞いて、聞いた日と一緒に残します。
よくある失敗は、1回の電話で4項目を聞くこと、そろうまで引き継がないこと、聞いた内容を更新しないこと、データの手がかりを聞けた内容と混ぜることの4つです。
予算から順に聞くと、質問が続いて相手が身構えます。最初の電話は短く終えます。必要性と導入時期にしぼり、決裁権と予算は面談で聞く項目として引き継ぎます。
すべてそろうのを待っているうちに、相手の検討が先に進むことがあります。どの項目がそろえばSQLにするかを、営業と決めておきます。そろわなかった項目は「面談で聞くこと」として欄に残します。
導入時期や検討にかかわる人は変わります。聞いた日が古い項目は、次の連絡で確かめ直します。聞いた日が書いていないと、古いかどうかも判断できません。
調べているテーマや資料の閲覧から推し量った課題を、必要性の欄に「聞けた」として書くと、営業は確かめずに面談に進みます。混ぜると、確かめる人がいなくなります。手がかりは出どころを「データ」と書いて分け、本人に確かめてから「聞けた」に移します。
BANTは、インサイドセールスの役割や、決める人へのアプローチと一緒に考えると、誰がどの項目を聞くかがぶれにくくなります。引き継ぎの基準と段階の名前は、本文で紹介した「MQLとは?」と「トスアップとは?」で扱っています。
今日できることは、先月引き継いだリードのメモを開き、4項目それぞれに、聞いた日と出どころが書いてあるかを確かめることです。書いていない項目が多い会社から、次の連絡で聞き直します。
聞いた日と出どころを企業ごとにそろえておくと、マーケティング施策の結果や営業の対応と並べて、どの企業に、どの項目を聞き直すかを決めやすくなります。
ウルテク(URUTEQ)は、ABM(アカウントベースドマーケティング)の考え方で、ターゲット企業からの商談獲得を仕組み化するBtoBマーケティング・営業支援サービスです。マーケティング施策の結果、営業の対応、サイトの外で調べているテーマを企業ごとに分析し、アプローチの抜け漏れと、商談につながった施策を解析します。
毎月の定例で商談の結果を確かめ、翌月の施策に反映します。ターゲット企業の選定から効果の検証まで、ウルテクチームが並走します。
「ターゲット企業からの商談獲得の仕組み化 事例12選」では、ターゲット企業を決める、検討を始めた企業に気づく、企業に案内する、連絡する企業を営業へ引き継ぐ、商談の結果を確かめる、という5つの工程と、お悩みから選ぶ12の事例を紹介しています。聞き取りのあとの進め方について、他社のやり方を見たいときにお使いください。
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