セールスインテリジェンス
セールスインテリジェンスとは、企業や担当者のデータを集めて整理し、BtoBの営業がどの企業に、いつ、何を訴求するかを判断する取り組みです。
セールスインテリジェンス(Sales Intelligence)とは、BtoBのマーケティングとセールスで、企業や担当者のデータを集めて整理し、どの企業に、いつ、何を訴求するかを判断するための取り組みと、それを支えるツールのことです。ここでの「インテリジェンス」は知能や諜報ではなく、判断に使うために集めた情報という意味です。社内の業績を分析するBI(ビジネスインテリジェンス)とも別のものです。
SFAもMAも入っているのに、毎月「今月はどの企業にアプローチするか」が担当者の勘で決まっている。新規開拓の電話リストは、去年の展示会の名刺のまま。こうした悩みの多くは、まだ自社と接点の少ない企業について、判断に使える情報が社内に無いことから起きます。その情報を外から集めて整えるのが、セールスインテリジェンスです。
この記事では、セールスインテリジェンスの意味とSFA・CRM・MA・BIとの違い、使う6つのデータの種類、部署ごとの活用法と事例、始めるときのステップとよくある失敗、ツールでできることと選び方を紹介します。
目次
BtoBでのセールスインテリジェンスとは、企業の属性・担当者・行動と関心・ニュース・使っているシステムのデータを集めて整理し、アプローチする企業の優先順位と時期、訴求する内容を判断する取り組みと、それを支えるツールのことです。
言葉は、取り組みとツールの両方に使われます。「セールスインテリジェンスを強化する」と言えば取り組みのこと、「セールスインテリジェンスを導入する」と言えば、企業データベースやインテントデータを提供するツールのことです。
架空の例で考えます。工場向けの設備保全システムを売る会社が、ターゲット企業の一覧を作っています。業種と従業員数は企業データで分かります。そこに「新工場の建設を発表した」というニュースと、設備保全の記事が社内で読まれ始めたという手がかりが加わると、どの企業から、どんな話題でアプローチするかを考えやすくなります。
ただし、集めたデータは判断の手がかりです。ニュースや関心の手がかりがあっても、その企業が買うと決めたわけではありません。どの企業に当たるかは、ICP(理想顧客プロファイル)と商談の記録と照らして、人が決めます。
買い手が営業担当者に連絡する前にWebで調べるようになり、問い合わせを待つだけでは、検討を始めたターゲット企業に気づけないからです。
商談獲得までのBtoBツール役割マップでは、ターゲット企業が商談に近づく行動のうち、「サイトの外で課題を調べる」「名乗らずにサイトを見る」を、どのツールにも記録が残らない死角の1つ目としています。MAもSFAも、資料請求や名刺交換で名乗った人から記録が始まるからです。
もう1つの理由は、電話が担当者まで届かない、メールが受信箱に入らない、といった場面が増えたことです。限られた接点を、検討の手がかりがある企業に向けるための情報が要ります。
SFA・CRM・MAは自社との接点の記録、BIは社内のデータの集計と分析です。セールスインテリジェンスは、自社との接点がまだ少ない企業も含めて、社外のデータで判断の材料を足します。
| ツール | 記録・分析するもの | 記録が始まるとき | 主に使う人 |
|---|---|---|---|
| セールスインテリジェンス | 企業の属性、担当者、行動と関心の手がかり、企業のニュース | 接点が無い企業も含む | インサイドセールス・フィールドセールス・マーケティング |
| SFA | 商談の進み具合と営業の活動 | 主に、営業が企業や商談を登録してから | フィールドセールス |
| CRM | 顧客との契約と対応の履歴 | 主に、接点ができた顧客から | 営業・カスタマーサクセス |
| MA | 名前が分かった人の行動とスコア | 資料請求や問い合わせのあと | マーケティング・インサイドセールス |
| BI | 社内の売上・業績・活動の数字 | 社内にデータがたまってから | 経営企画・営業企画 |
セールスインテリジェンスは、SFAやCRMの代わりにはなりません。外から集めた企業のデータを、SFA・CRMの企業ページに取り込んで、営業がふだん見る画面で使えるようにして、初めて役に立ちます。
似た言葉に、アカウントインテリジェンスとセールスイネーブルメントがあります。アカウントインテリジェンスは、ターゲット企業(アカウント)ごとにデータを集める考え方で、セールスインテリジェンスの中でもABMに近い使い方です。
セールスイネーブルメントは、営業の育成や商談の質を上げる取り組みで、扱うのは社内の営業活動です。セールスアナリティクスは、SFAにたまった商談の記録を分析して営業の進め方を見直すことで、セールスインテリジェンスが集めた情報も分析の対象になります。どれも、ITで営業活動を支えるセールステックの一分野です。
主に使うのは、企業属性、担当者、貴社サイト内の行動データ、サイト外での興味・関心、企業のニュース、使っているシステムの6つのデータです。
| データ | 分かること | 例(架空) | 主な出どころ | 使う場面 |
|---|---|---|---|---|
| 企業属性(ファーモグラフィック) | 業種・従業員数・売上・拠点 | 産業機械の製造業・従業員1,000人以上 | 企業のWebサイト、決算資料、データ提供会社のデータベース | ICPに当てはまるターゲット企業の一覧を作るとき |
| 担当者(連絡先) | 部署・役職・連絡先 | 生産技術部の部長 | 名刺、自社のSFA・CRM、データ提供会社のデータベース | アプローチする相手と決裁者を考えるとき |
| 貴社サイト内の行動データ | 自社サイトで見られたページと回数 | 導入事例と料金のページを3人が見た | 自社サイトのアクセス解析、MA | 検討が進んでいそうな企業を見つけるとき |
| サイト外での興味・関心(インテントデータ) | 社外のWebで調べられているテーマ | 「設備保全 システム 比較」の記事が読まれている | インテントデータの提供サービス | アプローチの優先順位と話題を考えるとき |
| 企業のニュース(トリガーイベント) | 組織や事業の変化 | 新工場の建設、役員の交代、資金調達 | プレスリリース、ニュース、求人情報 | アプローチの時期を考えるとき |
| 使っているシステム(テクノグラフィック) | 導入済みのツールや基盤 | 同じ分野の他社製品を使っている | 企業のWebサイト、求人情報、データ提供会社 | 乗り換えの提案や連携の話をするとき |
企業属性と担当者は「どの企業の誰か」、行動と関心と企業のニュースは「いつ、何を訴求するか」の手がかりです。企業属性だけで作った一覧は、同じ条件の企業すべてが同じ優先度になります。そこに時期の手がかりを足して、アプローチの優先順位を付けます。
このほか、競合の値上げや撤退といった動きと、自社の過去の受注・失注の記録も、よく一緒に使います。受注・失注の記録は、ICPの条件を見直すときの根拠になります。
アプローチの優先順位を根拠をもって付けられること、初回の接触で相手の状況に合う話題を出せること、商談前の下調べにかかる時間が減ることの3つです。
どれも、データをSFA・CRMに取り込み、営業がふだんの画面で見られるときに出る効果です。データを見るためだけの画面が別にあると、効果は出にくくなります。
マーケティングはターゲット企業の一覧と施策のテーマに、インサイドセールスはアプローチの優先順位に、フィールドセールスは初回訪問の準備に、カスタマーサクセスは既存顧客の横展開に使います。
ABM(アカウントベースドマーケティング)では、ICPに当てはまる企業を企業属性のデータで一覧にし、Tier1〜Tier3に分けます。展示会の名刺やハウスリストにある企業も、同じ一覧に会社の名前で集めます。関心の手がかりが続けて出ている企業は、Tierを上げる候補として、営業と月に1回話し合います。
ターゲット企業の一覧のうち、新工場の建設や組織の変更といったニュースがあった企業と、関連するテーマが調べられている企業から順にアプローチします。初回の連絡では、そのニュースやテーマに合う事例を話題にします。「御社が〇〇を調べているのを拝見しました」とは言いません。
商談の前に、相手の部署の構成、決裁者の役職、使っているシステムを調べておきます。同じ分野の他社製品を使っているなら、乗り換えの手間と費用を先に聞かれると考えて、資料を用意します。
取引のある企業でも、契約しているのは1つの事業部だけ、ということがよくあります。企業のデータで同じ会社のほかの事業部と拠点を一覧にし、関連するテーマが調べられている事業部から、導入事例の紹介を相談します。
ウルテクの公開事例のレクシスネクシス・ジャパン様は、「複数人が訪問している」「複数ページを見ている」「滞在時間が長い」「最新アクセスが直近である」企業に注目し、営業が連絡する企業を週5件に絞っています。そのリストから、好調なときは半数以上が商談になりました(ウルテクの導入事例)。データを集めるだけでなく、どの条件の企業に連絡するかを先に決めておくことが、商談につながった理由です。
目的を1つに絞り、今のツールの役割を棚卸しし、データをSFA・CRMに取り込み、毎月の定例で結果を確かめる、の順に進めます。
「新規開拓のターゲット企業の一覧を作る」「休眠している名刺の企業を掘り起こす」「取引先の別の事業部に広げる」のどれか1つから始めます。目的が決まらないままツールを入れると、データの量だけが増えます。
GA4・MA・SFA・CRMが、それぞれどの行動を記録しているかを1行ずつ書き出します。どのツールにも記録が無い場面が、セールスインテリジェンスで埋める場所です。
集めたデータは、会社の名前でSFA・CRMの企業ページに取り込みます。同じ会社の表記ゆれ(「株式会社」の有無、旧社名)を名寄せしてから入れないと、1社が2行に分かれます。
データを使って連絡した企業が、その後どうなったか(商談・継続・保留・見送り)を、マーケティングと営業が同じ表で見直します。毎月見る数字は、アプローチ企業数、商談獲得数、リードからの商談化率の3つです(商談化の定義は自社の決め方に合わせます)。結果が戻らないと、どのデータが商談につながるのかが分かりません。
よくある失敗は、一覧を作って終わる、データの古さと重なりを見ない、営業の結果が戻らない、連絡先の扱いを確かめない、の4つです。
企業のデータで数千社の一覧を作り、インサイドセールスに配って終わる。誰がいつまでにアプローチし、その結果をどこに書くかが決まっていないと、一覧は使われなくなります。
担当者の異動や組織の変更で、連絡先は人事異動の時期をまたぐと古くなります。取り込む前に、更新された日付と、同じ会社が別の名前で入っていないかを調べます。
商談になったか、見送りになったかがマーケティングに戻らないと、どの条件の企業を一覧に足せばよいかが分かりません。SFAに、結果を企業名で戻す欄を作ります。
担当者の連絡先は個人情報にあたります。取得の経緯と使ってよい範囲は、提供会社の規約と個人情報保護法で確認します。広告や宣伝のメールを送るときは、特定電子メール法の同意の決まりにも沿う必要があります。決まりの概要は、総務省の迷惑メール対策のページで読めます。
ツールでできるのは、企業の検索と一覧づくり、データの更新、変化の通知、SFA・CRMのデータの補完、名寄せの5つです。選ぶときは、データの出どころ、取り込み、更新、支援の体制を見ます。
ツールでできること: – 企業の検索と一覧づくり:業種・規模・拠点などの条件で、ターゲット企業の一覧を作る – データの更新:企業属性や担当者の情報を、ツールの側で新しくする – 変化の通知:企業のニュースや、調べられているテーマの変化を知らせる – データの補完(データエンリッチメント):SFA・CRMにある企業の記録に、足りない属性を足す – 名寄せ:表記の違う同じ会社を1つにまとめる
最近は、ニュースの要約や、企業ごとのスコアの算出にAIを使うツールも増えています。AIが出したスコアも手がかりの1つなので、ICPと商談の記録と照らしてから、アプローチの優先順位に使います。
選ぶときに見る点: – データの出どころと取得の経緯を、提供会社が説明できるか – 自社のターゲット企業の業種と規模で、企業属性と担当者のデータがどれだけそろっているか。自社の一覧を渡して、何社分のデータがあるかを試せるか – SFA・CRMやMAに、企業ごとにデータを取り込めるか – 企業のニュースと関心の手がかりが、どのくらいの間隔で更新されるか – 初期設定と、使い始めたあとの支援があるか
海外では ZoomInfo などがよく知られています。国内で使えるツールの違いは、セールスインテリジェンスツールの選び方と5つの選定軸と、インテントセールスのツール比較10選と選び方で比べています。
セールスインテリジェンスは、ICPでターゲット企業の条件を設定し、ABMでアプローチを進めるときに使う言葉です。
今日できることは、自社のターゲット企業を10社書き出し、それぞれについて「最近のニュース」と「誰に連絡するか」が社内のどこに書いてあるかを確かめることです。書いてある場所が無い項目が、セールスインテリジェンスで足すデータです。
ウルテク(URUTEQ)は、ターゲット企業からの商談獲得を仕組み化するサービスです。アプローチの抜け漏れと、商談につながった施策を解析し、毎月の定例で商談の結果を確かめ、翌月の施策に反映します。
ウルテクで保有するデータと貴社のマーケティング・営業結果を組み合わせ、ターゲット企業ごとに、自社サイトでの行動とサイトの外で調べているテーマを見られます。GA4・MA・SFA・CRM・企業データの役割と、どのツールにも映らない3つの死角は、「商談獲得までのBtoBツール役割マップ」で整理しています。
ウルテクについて、もっと詳しく知りたい方へ