ABMからABXへの移行とは?営業と導入支援の引き継ぎの決め方

この記事のポイント

ABMからABXへの移行とは、既存顧客企業をターゲット企業の一覧に残し、営業から導入支援への引き継ぎと、導入支援から営業への共有の基準を決めることです。

BtoBの商材で、ABM(「アカウントベースドマーケティング」)でターゲット企業の一覧を作り、マーケティングと営業が分担して商談獲得を進めている会社でも、契約が決まると、その会社が一覧から外れることがあります。契約の後に誰が何をしているのかを、マーケティングは知りません。あなたの会社でも、同じことが起きていないでしょうか。

この記事では、契約した会社を既存顧客企業と呼びます。ABX(アカウントベースドエクスペリエンス)への移行で決めるのは、既存顧客企業の記録を誰が・いつ・どこに書いて引き継ぎ、どんなときに営業と共有するかです。一覧は、CRM・SFAや表計算など、いま使っているもので構いません。

ABXを担う部署として、米国の IT 用語サイト TechTarget の用語解説には、営業・マーケティング・カスタマーサクセスの3つが挙がっています(出典:TechTarget「account-based experience (ABX)」、2026年10月確認)。カスタマーサクセスは、この記事の導入支援(既存顧客企業の利用開始と定着を支える部署)にあたります。

この記事でわかること
  • ABMからABXへの移行の意味と、変える2つのこと(既存顧客企業を一覧に残す・営業と導入支援の引き継ぎと共有の基準を決める)
  • 移行の前に確かめる2つの条件(ターゲット企業の一覧があるか・継続や追加の取引がある商材か)
  • 移行の5つの手順(営業から導入支援へ引き継ぐ記録と、導入支援から営業へ共有する条件の決め方を含む)
  • 移行でつまずきやすい3つの点と、定例での確かめ方

ABMからABXへの移行とは?

ABMからABXへの移行(シフト)とは、既存顧客企業をターゲット企業の一覧に残し、営業から導入支援への引き継ぎと、導入支援から営業への共有の基準を決めることです。目的は、既存顧客企業との契約の継続と、追加の取引(アップセル・クロスセル)の商談獲得につなげることです。

変えるのは、一覧に残すこと(ステップ1・2)と、引き継ぎと共有の基準を決めて定例で確かめること(ステップ3〜5)の2つです。契約の前の施策は、そのまま使います。

既存顧客企業が一覧から外れると、別の部署への追加の取引の手がかりを、営業もマーケティングも見落とします。ABXの意味と、ABMとの違い、一覧に足す列の中身は「ABXとは?ABMとの違いと、契約後の部署まで広げる進め方」で表にしています。

ABMからABXへの移行の前に確かめる2つの条件は?

ABMからABXへの移行の前に確かめるのは、ターゲット企業の一覧があることと、継続や追加の取引がある商材であることの2つです。

  • ターゲット企業の一覧がある:あなたの会社に一覧が無いなら、先にターゲット企業の条件を決めて一覧を作ります。進め方は「ABM戦略とは?進め方6ステップと商談につながらない3つの原因」で扱っています
  • 継続や追加の取引がある商材である:1回きりの販売で、継続も追加の取引も無い商材なら、ABMのままで足ります

ABXの導入ステップは?ABMから移行する5つの手順

ABMからABXへは、既存顧客企業を一覧に残し(ステップ1・2)、引き継ぎと共有の基準を決め(ステップ3・4)、毎月の定例に導入支援を加える(ステップ5)、5つの手順で移行します。それぞれの手順を受け持つ部署は、図1のとおりです。

  1. 既存顧客企業を、ターゲット企業の一覧に「既存顧客」のラベルで残す
  2. 一覧に「導入の進み具合」「使っている部署」「次に提案できること」の3つの列を足す
  3. 営業が導入支援へ引き継ぐ3つの記録と、書く時期・場所を決める
  4. 導入支援から営業へ共有する3つの条件と、知らせ方を決める
  5. 毎月の社内の定例に、導入支援の担当者を加える
ABMからABXへ移行する5つのステップと、受け持つ部署1 契約した会社を「既存顧客」として残す、2 導入の進み具合など3つの列を足す、3 営業が導入支援へ引き継ぐ3つの記録を決める、4 導入支援から営業へ共有する条件を決める、5 定例に導入支援を加える。受け持つ部署は、1がマーケティング、2が導入支援、3が営業、4が導入支援、5は導入支援が社内の定例に参加。1と2は一覧の作業、3と4は部署の間の決めごと、5は毎月の定例の変更。ABMからABXへ移行する5つのステップと、受け持つ部署1契約した会社を「既存顧客」として残すマーケティング2導入の進み具合など3つの列を足す導入支援3営業が導入支援へ引き継ぐ3つの記録を決める営業4導入支援から営業へ共有する条件を決める導入支援5社内の定例に導入支援を加える導入支援が参加一覧の作業部署の間の決めごと毎月の定例の変更
図1:ABMからABXへ移行する5つのステップと、それぞれを受け持つ部署

ステップ1:既存顧客企業に「既存顧客」のラベルを付ける

マーケティングが、契約した会社をターゲット企業の一覧から消さずに、「既存顧客」のラベルを付けて残します。新規にアプローチする会社とは、ラベルで分けて扱います。

当社の製品ウルテクを使うレクシスネクシス・ジャパン様も、既存顧客と営業中の会社にラベルを付けて、新規にアプローチする会社と分けています。そのうえで、既存顧客に別のテーマへの関心の手がかりがないかを、毎週のサイト訪問から確かめています(出典:レクシスネクシス・ジャパン様の導入事例、2026年10月確認)。

ステップ2:導入の進み具合など、3つの列を一覧に足す

一覧に「導入の進み具合」(契約・設定・利用開始・定着のどれか)「使っている部署」「次に提案できること」の3つの列を足し、導入支援が月に1回書きます。列の中身は「ABXとは?ABMとの違いと、契約後の部署まで広げる進め方」の図と同じです。

ステップ3:営業が導入支援へ引き継ぐ3つの記録を決める

営業は、契約が決まったら(例:契約から1週間以内に)、相手の課題・約束した導入の時期・決裁に関わった相手の部署の3つを一覧の商談の欄に書き、導入支援へ引き継ぎます。商談の欄は、契約の前から営業が商談の内容を書いている欄です。

口頭で伝えるだけだと、担当が替わったときに記録が残りません。引き継いだ導入支援が次にすることは、図2の左のとおりです。

ステップ4:導入支援から営業へ共有する3つの条件を決める

導入支援は、次の3つのどれかに当てはまったら、一覧の商談の欄に書き、その週のうちに営業へ知らせます。①相手の会社の別の部署でも使えそうなとき、②困りごとが導入支援だけで解決しないとき、③相手の会社の担当者が替わったときです。営業は、次の定例までに提案するかどうかを導入支援に返します。共有を受けた営業が次にすることは、図2の右のとおりです。

継続の時期の前の連絡(インサイドセールス)と、解約に関わる手がかり(サイト内での「解約」の検索など)の確認(マーケティング)は、ステップ4とは別の施策として受け持ちます(「ABXでは何をする?契約の前後に行う9つの施策と担当部署」の表2)。手がかりを見つけたら、マーケティングがすぐ導入支援と営業に知らせます。

マーケティングが来訪から見つけた別のテーマの閲覧(関心の手がかり)も、「ABXでは何をする?契約の前後に行う9つの施策と担当部署」の図1のとおり営業と共有します。

引き継いだ導入支援と、共有を受けた営業が次にすること導入支援が営業から引き継ぎを受けたら:初回打ち合わせの前に3つの記録を読む、約束した導入の時期から日程を組む、決裁に関わった部署も打ち合わせに呼ぶ。営業が導入支援から共有を受けたら:別の部署への追加の提案を準備する、困りごとの解決策を導入支援と決める、新しい担当者にこれまでの経緯を話す。引き継いだ導入支援と、共有を受けた営業が次にすること営業導入支援引き継いだ導入支援がすること1初回打ち合わせの前に3つの記録を読む2約束した導入の時期から日程を組む3決裁に関わった部署も打ち合わせに呼ぶ導入支援営業共有を受けた営業がすること(条件①〜③)1別の部署への追加の提案を準備する2困りごとの解決策を導入支援と決める3新しい担当者に、これまでの経緯を話す
図2:引き継いだ導入支援と、共有を受けた営業が次にすること

ステップ5:毎月の社内の定例に導入支援を加える

マーケティング・インサイドセールス・営業が毎月開く社内の定例に、導入支援の担当者が加わります。社内の定例が無いなら、月に1回、4部署(マーケティング・インサイドセールス・営業・導入支援)が集まる会議を開きます。

定例では、一覧の3つの列と、ステップ4で導入支援から共有された既存顧客企業を確かめます。定例で数える成果(継続・追加の取引・解約)は、「ABXでは何をする?契約の前後に行う9つの施策と担当部署」の「ABXの施策の成果は何で数える?」にまとめています。

ABMからABXへの移行でつまずきやすい3つの点は?

ABMからABXへの移行でつまずきやすいのは、引き継ぎが口頭のまま、ステップ2の列が空のまま、既存顧客企業を見なくなる、の3つです。

  • 引き継ぎが口頭のまま:担当が替わると、相手の課題や約束した導入の時期が分からなくなります。定例で、その月に契約した会社の商談の欄が埋まっているかを確かめます
  • 列が空のまま:書く部署を決めても、書く日を決めないと空のままになります。導入支援が書く日を、定例の前の週と決めます
  • 既存顧客企業を見なくなる:新規の商談の話だけで定例が終わります。定例の議題の最初に、導入支援から共有された既存顧客企業を置きます

ABXへの移行のよくある質問

ABMをやめてABXに移行するのですか?
やめません。ターゲット企業の一覧に既存顧客企業を残し、営業と導入支援の引き継ぎと共有の基準を決めて加えます。
ABXへの移行は、誰が進めますか?
マーケティング・インサイドセールス・営業・導入支援の責任者が一緒に、引き継ぐ記録と共有する条件を決めます。
営業と導入支援の引き継ぎでは、何を決めますか?
営業が引き継ぐ3つの記録と、導入支援が営業へ共有する3つの条件を、それぞれ誰が・いつ・どこに書くかまで決めます。
ABXへの移行に、新しいツールは必要ですか?
必須ではありません。使っているCRM・SFAやABMツール(アカウントベースのマーケティングソフトウェア)の一覧に、導入の進み具合などの列を足せば始められます。
ABXへの移行に向いているBtoBの商材は何ですか?
契約したあとに継続の契約や、別の部署・別の製品の追加の取引がある商材です。業務の道具やデータのサービスのように、使う部署や量を増やせる商材が向いています。

まとめ:ABMからABXへ、営業と導入支援の引き継ぎの決め方

  1. 変えること:既存顧客企業を一覧に残すことと、営業と導入支援の引き継ぎと共有の基準を決めることの2つです。
  2. 進め方:一覧の作業(ステップ1・2)、引き継ぎと共有の基準(ステップ3・4)、毎月の定例の変更(ステップ5)の順に進めます。
  3. 最初の一歩:次に契約する会社から、営業が3つの記録を一覧に書いて導入支援へ引き継ぎます。

あなたの会社では、先月契約した会社の課題と約束した導入の時期を、導入支援の担当者が一覧で読めるでしょうか。

ウルテクは、ターゲット企業からの商談獲得に向けた取り組みを、継続して実行・改善できる仕組みをつくるサービスです。マーケティング施策の結果、営業の対応、サイトの外で調べているテーマを企業ごとに分析し、アプローチの抜け漏れと、商談につながった施策を解析します。ABXに移行したあと、既存顧客企業が自社サイトで何を見ているかも、会社ごとに確かめられます。

著者紹介
URUTEQ 編集部
ウルテクお役立ちコンテンツの編集部

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