この記事のポイント
ABXとは、ABMで決めた売りたい会社に、マーケティングから導入支援までの部署が同じターゲットアカウントの一覧を使い、契約後も一貫した体験を届ける進め方です。
契約が決まった翌週、導入支援の担当者がお客様と初めて打ち合わせをする。営業が商談で約束した導入の時期も、先方の情報システムの部署が気にしていた点も、手元の記録には残っていない。お客様は、商談で話したことをもう一度説明することになります。
ABM(アカウントベースドマーケティング)で売りたい会社を決めて商談を作っても、契約の後に記録が途切れると、同じ会社への対応はそこで分かれます。ABXは、この途切れを部署の間でなくすための進め方です。
この記事でわかること
ABX(アカウントベースドエクスペリエンス)の意味と、ABXの「X」が指すもの
ABMとABXの違い(期間・部署・一覧に入る会社・成果の数え方・記録の5項目)
ABXで4つの部署がターゲットアカウントの一覧に記録する内容と、会社を渡す順番
ABMからABXに広げるときにターゲットアカウントの一覧に足す列と、よくある誤解
ABXとは?アカウントベースドエクスペリエンスの意味
ABX(アカウントベースドエクスペリエンス)とは、ABMで決めた売りたい会社(ターゲットアカウント)に、複数の部署が同じターゲットアカウントの一覧を使い、契約の後まで一貫した体験を届ける進め方です。
ABXは Account Based Experience の略です。エクスペリエンス(体験)は、相手の会社の担当者が受け取る対応のことです。マーケティングの資料、営業の提案、導入後の支援のどれを受けても、前に話した内容が通じていて、その会社に合わせた(パーソナライズした)中身になっている。この状態を、会社(アカウント)の単位で作るのがABXです。
ABXは、顧客体験(CX:カスタマーエクスペリエンス)の考え方を、BtoBマーケティングのターゲットアカウントの会社ごとに当てはめたものです。導入支援は、カスタマーサクセスと呼ぶ会社もあります。
米国の IT 用語サイト TechTarget も、ABXを、営業・マーケティング・カスタマーサクセスが連携し、買い手に一貫した体験を届けるBtoBの戦略と説明しています(出典:TechTarget「account-based experience (ABX)」 、2026年10月確認)。
ABXの「X」は、Experience(体験)の意味で使うのが一般的です 。ただし発信元によっては、Everything(すべて)など別の意味で使うこともあります(参考:シンフォニーマーケティング「『ABX』というカメレオンのような言葉」 、2026年10月確認)。社内でABXと言うときは、どの意味で使うかを最初にそろえておくと話が食い違いません。
ABMは主に契約まで、ABXは契約の後の継続と追加の取引まで受け持つ 流れは、売りたい会社を決める、資料や広告を届ける、連絡して商談する、契約する、導入して使い始める、継続・追加の取引。ABMは主に、売りたい会社を決めてから契約までを受け持ち、ABXは同じターゲットアカウントの一覧を使って契約の後の継続と追加の取引までを受け持つ。マーケティングは前半、インサイドセールス・営業は商談と契約、導入支援は契約の後を担当する。 ABMは主に契約まで、ABXは契約の後の継続と追加の取引まで受け持つ 売りたい会社 を決める 資料や広告 を届ける 連絡して 商談する 契約する 導入して 使い始める 継続・ 追加の取引 ABM:主に、売りたい会社を決めてから契約まで ABX:同じターゲットアカウントの一覧を使い、契約の後の継続と追加の取引まで マーケティング インサイドセールス・営業 導入支援 図1:ABMとABXが受け持つ期間と、それぞれの期間に関わる部署
ABMそのものの意味と3つの型は、「ABMとは?アカウントベースドマーケティングの意味と3つの型 」で図にしています。
ABMとABXの違いは?5つの項目で比べる
ABMは主に契約までを受け持ち、ABXは契約の後の継続と追加の取引まで受け持ちます。ABXには導入支援の部署も加わります 。ABMのターゲットアカウントに既存の取引先を入れる会社もありますが、契約の後の記録を導入支援の部署と同じターゲットアカウントの一覧で共有するところまで決めるのがABXです。違いは次の5つの項目で分かります。
比べる項目
ABM
ABX
対応する期間
主に、売りたい会社を決めてから契約まで
売りたい会社を決めてから、契約・導入・継続・追加の取引まで
関わる部署
マーケティング・インサイドセールス・営業
マーケティング・インサイドセールス・営業・導入支援
一覧に入る会社
まだ取引のない、売りたい会社が中心
まだ取引のない売りたい会社と、契約した会社の両方
成果の数え方
選んだ会社のうち、何社と商談・契約したか
商談・契約した会社の数に加え、継続した会社と、追加の取引があった会社の数
部署で共有する記録
来訪・資料の閲覧・連絡と商談の記録
来訪・資料の閲覧・連絡と商談の記録に加え、導入の進み具合・使っている部署・次に提案できること
あなたの会社でABMをすでに進めているなら、そのターゲットアカウントの一覧がそのままABXの土台になります。
BtoB企業がABMをABXに広げる理由は?
BtoB企業がABMをABXに広げるのは、契約した会社の中で、継続や別の部署への追加の取引(アップセル・クロスセル)が生まれるからです 。1つの部署で使い始めた製品が、同じ会社の別の部署や関連会社に広がることもあります。その相手は、すでに取引のある会社です。
部署ごとに記録が分かれていると、契約した会社に食い違った対応をすることがあります。
マーケティングが、すでに契約している会社に、新規のお客様向けの資料やメールを送る
導入支援の担当者が、営業が商談で約束した導入の時期を知らない
営業が、導入で困っている会社に、追加の製品を提案してしまう
どれも、契約した会社の記録が部署の間で共有されていないときに起きます。
当社の製品ウルテクを使うレクシスネクシス・ジャパン様は、既存のお客様と営業中の会社にラベルを付けて、新規に連絡する会社の一覧から外しています。
一方で同社は、既存のお客様についても、毎週のサイト訪問から新しい関心が生まれていないかを確かめています。サイト内で「解約」と検索した訪問者がいれば、同社のシニアマーケティングマネージャーに知らせが届く設定もしています(出典:レクシスネクシス・ジャパン様の導入事例 、2026年10月確認)。契約した会社を、新規とは別の見方で追い続けている例です。
継続や追加の取引が無い、1回きりの販売の商材なら、ABMのままで足ります。
ABXで4つの部署が記録する内容と、会社を渡す順番は?
ABXでは、4つの部署がそれぞれの記録を同じターゲットアカウントの一覧に書き、会社をマーケティング、インサイドセールス、営業、導入支援の順に渡します 。営業が導入支援へ渡すのは、契約した会社です。契約の後は、導入支援が追加の提案先になる会社を営業とマーケティングへ戻します(図2)。
4つの部署は会社を記録ごと次へ渡し、導入支援は追加の提案先を戻す マーケティングは資料の閲覧が増えた会社をインサイドセールスへ、インサイドセールスは課題と導入の時期が分かった会社を営業へ、ABXで加わる流れとして、営業は契約した会社を商談の記録ごと導入支援へ渡し、導入支援は別の部署でも使えそうな会社を営業とマーケティングに戻す。4つの部署が見るターゲットアカウントの一覧は1つ。 4つの部署は会社を記録ごと次へ渡し、導入支援は追加の提案先を戻す マーケティング 資料の閲覧が増えた会社を渡す インサイドセールス 課題と導入の時期が分かった会社を渡す 営業 契約した会社を、商談の記録ごと渡す 導入支援 4つの部署が見る ターゲットアカウントの 一覧は1つ 契約までは、会社を記録ごと渡す 青い矢印は、ABXで加わる流れ 青い矢印(ABXで加わる流れ):営業が契約した会社を導入支援へ渡し、 導入支援が、別の部署でも使えそうな会社を営業とマーケティングに戻す 図2:4つの部署が会社を渡す順番(青い矢印がABXで加わる流れ)
部署
一覧に記録する内容
マーケティング
サイトへの来訪、資料の閲覧、調べているテーマ
インサイドセールス
電話・メールの結果、相手の部署と課題
営業
商談で話した課題、約束した導入の時期、決裁に関わる部署
導入支援
導入の進み具合、使っている部署、次に提案できること
ABXの戦略の立て方は、ABX戦略についての記事 でも扱っています。
ABMからABXへ、ターゲットアカウントの一覧に足す列は?
ABMからABXに広げるときは、契約した会社をターゲットアカウントの一覧に残し、「導入の進み具合」「使っている部署」「次に提案できること」の3つの列を足します。
架空の例:ターゲットアカウントの一覧に、導入の後に記録する3つの列を足す ABMで使っている列は、会社・来訪・資料の閲覧・商談の記録。ABXでは、導入の進み具合・使っている部署・次に提案できることの3つの列を足す。例:A社は資料を閲覧、契約済み、利用開始、人事部が使っている、経理部への追加を提案できる。B社は来訪あり、商談中で、導入の進み具合は(契約前)、ほかの2列は空。A社・B社は架空の例。 架空の例:ターゲットアカウントの一覧に、導入の後に記録する3つの列を足す ABXで足す3つの列 ABMで使っている列 会社 A社 B社 来訪・資料の閲覧 資料を閲覧 来訪あり 商談の記録 契約済み 商談中 導入の進み具合 利用開始 (契約前) 使っている部署 人事部 ― 次に提案できること 経理部への追加 ― 図3:ターゲットアカウントの一覧に足す3つの列(A社・B社は架空の例)
導入の進み具合:契約・設定・利用開始・定着のどこにいるか
使っている部署:契約した部署と、ほかに関心を持っている部署
次に提案できること:継続の時期、追加できる製品や部署
あなたのチームのターゲットアカウントの一覧に3つの列が無ければ、まず空の列を足し、契約した会社から埋めていきます。
ターゲットアカウントの一覧そのものの作り方は「ABM戦略とは?進め方6ステップ 」に、ABMをABXに広げる手順は「ABMからABXへのシフトとは? 」にまとめています。
ABXはABMの次に乗り換えるもの?よくある3つの誤解
ABXは、ABMの次に乗り換えるものではありません。ABMのターゲットアカウントの一覧と記録を、契約の後も複数の部署で使い続ける進め方です 。ほかに多いのは、カスタマーサクセスの別名だと思われることと、大きなツールが要ると思われることです(図4)。
ABMの次に乗り換えるもの → ABMのターゲットアカウントの一覧と記録を、契約の後も使い続けるもの
カスタマーサクセスの別名 → 契約の前の部署も、導入支援の部署と同じターゲットアカウントの一覧を使う
大きなツールが要る → すでに使っているCRM・SFAやMAの一覧に、3つの列を足せば始められる
ABXはABMからの乗り換えでも、カスタマーサクセスの別名でもない ABMの次に乗り換えるもの→ABMのターゲットアカウントの一覧と記録を、契約の後も使い続けるもの。カスタマーサクセスの別名→契約の前の部署も、導入支援の部署と同じターゲットアカウントの一覧を使う。大きなツールが要る→すでに使っているCRM・SFAやMAの一覧に、3つの列を足せば始められる。 ABXはABMからの乗り換えでも、カスタマーサクセスの別名でもない よくある誤解 実際 ABMの次に乗り換えるもの ABMのターゲットアカウントの一覧と 記録を、契約の後も使い続けるもの カスタマーサクセスの別名 契約の前の部署も、導入支援の部署と 同じターゲットアカウントの一覧を使う 大きなツールが要る すでに使っているCRM・SFAやMAの 一覧に、3つの列を足せば始められる 図4:ABXでよくある3つの誤解と、実際
ABXのよくある質問
ABXとは何ですか?
Account Based Experienceの略です。ABMで決めた会社に、複数の部署が同じターゲットアカウントの一覧で、契約後も一貫した体験を届けます。
ABXとABMの違い(ABM vs ABX)は何ですか?
ABMは主に契約までを受け持ちます。ABXはABMのターゲットアカウントの一覧を契約の後も使い、導入支援の部署も加わって、継続と追加の取引まで対応します。
ABXのメリットは何ですか?
契約した会社に、部署ごとに食い違った連絡をしなくなることです。導入支援が見つけた追加の取引の手がかりも、営業とマーケティングに戻ります。
ABXとカスタマーサクセスの違いは何ですか?
カスタマーサクセスは導入後の支援をする部署や活動です。ABXは、その部署と契約の前の部署が同じターゲットアカウントの一覧と記録を使う進め方です。
ABXの「X」は何の略ですか?
Experience(体験)の略として使うのが一般的です。発信元によっては Everything(すべて)などの意味で使うこともあります。
ABXに専用のツールは必要ですか?
必須ではありません。すでに使っているCRM・SFA(営業の記録)やMAの一覧に、導入の進み具合など3つの列を足せば始められます。
まとめ:ABXの意味・ABMとの違い・一覧に足す列
ABXの意味 :ABMで決めた売りたい会社に、マーケティングから導入支援までの部署が同じターゲットアカウントの一覧を使い、契約の後まで一貫した体験を届ける進め方です。
ABMとの違い :対応する期間(ABMは主に契約まで、ABXは契約の後まで)と、関わる部署(導入支援が加わる)が違います。
一覧に足す列 :契約した会社をターゲットアカウントの一覧に残し、導入の進み具合・使っている部署・次に提案できることの3つの列を足します。
あなたの会社では、契約した会社の記録を、営業と導入支援の部署が同じターゲットアカウントの一覧で見られるでしょうか。
ウルテクは、ターゲット企業から、商談が生まれ続ける仕組みを作るサービスです。マーケティング施策の結果、営業の対応、サイトの外で調べているテーマを企業ごとに分析し、アプローチの抜け漏れと、商談につながった施策を解析します。ABXで部署の間の記録をそろえるとき、ターゲットアカウントの会社が自社サイトで何を見ているかを、会社ごとに確かめられます。