AI
AIマーケティングは、AIに分析と下書きを任せ、どの企業に何をいつ案内するかを人が決めて、商談化まで確かめる進め方です。BtoBでは企業の単位で確かめます。
AIマーケティングとは、AIにデータを分析させ、資料やメールの下書きを作らせ、その結果をもとに人がアプローチ企業と内容・時期を決めて、商談化まで確かめるマーケティングの進め方です。BtoBのマーケティングとセールスでは、相手を担当者ではなく企業の単位で見て、どの企業が商談に進んだかで効果を確かめます。
ChatGPTで記事やメールの下書きを作ると、作業は速くなった。それでも、経営会議で「AIを入れて商談は増えたのか」と聞かれると答えに詰まる。下書きの速さと商談化した企業の数は、別の物差しで測るものだからです。
この記事では、AIマーケティングの意味と種類を整理し、BtoBでの4つの使い方(アプローチ企業と順番を決める、資料やメールを作る、施策を実施して調整する、結果を確かめる)を、公開事例とあわせて紹介します。そのうえで、AIに渡すデータ、始める5つのステップ、メリットと注意点、よくある失敗をまとめます。
目次
BtoBでのAIマーケティングとは、AIに分析と下書きを任せ、どの企業に何をいつ案内するかを人が決めて、商談化した企業の数で確かめる進め方です。
AIが受け持つのは、データの分析、起こりそうなことの予測、文章の下書きです。どの企業に連絡するか、何を送るかを決めるのは、マーケティングとインサイドセールスの担当者です。
マーケティングで使うAIには、ツールの中に入っていて自動で働くAIと、担当者がデータを渡して使うAIの2つがあります。広告の自動入札や、MAやSFAに入っているスコアは前者です。この記事では、担当者がデータを渡して使う後者を中心に扱います。
担当者が使うAIは、することで3つに分けられます。
| 種類 | AIがすること | BtoBでの使い方の例 |
|---|---|---|
| 生成AI | 文章・画像・要約を作る | 記事、メール、広告文、営業資料の骨子の下書き |
| 予測AI | 過去の商談の結果から点数の付け方を学び、起こりそうなことを点数にする | リードのスコアリング、アプローチ企業の順番づけ |
| AIエージェント | 目的を与えると、手順を自分で組み、道具を使い分けて実行する | 毎朝の分析結果のまとめ、広告の診断と改善案 |
MAとの違いは、判断の決め方にあります。MAは人が決めたルールどおりに実行し、予測AIは過去の結果から点数の付け方を学び、AIエージェントは目的から手順を組み立てます。
BtoCでは、一人ひとりの購買履歴をもとに、おすすめの商品や広告を出し分ける使い方が中心です。BtoBでは、買うかどうかを企業の中の何人かで決め、検討にも数か月から1年以上かかります。そのため、人ではなく企業の単位で、検討の段階と接点をまとめて見る必要があります。企業の単位でマーケティングと営業が連携する考え方は、ABM(アカウントベースドマーケティング)と呼ばれます。
買い手の調べ方が変わり、連絡もつながりにくくなったため、人の手だけでは、検討を始めた企業を見つけて合う内容で連絡する作業が追いつかなくなっています。
BtoBの買い手と営業のまわりでは、4つの変化が起きています。
AIの側にも変化があります。ChatGPTやClaudeのような生成AIを、どの会社の担当者でも月数千円から使えるようになりました。企業ごとのデータの見直しと、業種に合わせた下書きを、少ない人数でも毎月続けられる条件がそろっています。
自社がAIを使う話とは別に、買い手の側もAIで調べています。この対策も、AIマーケティングと呼ばれることがあります。AIの答えに自社の名前が出やすくなる条件の1つは、何の課題をどう解くかを、記事や資料で同じ言葉で書いておくことです。
ただし、AIの答えに自社の名前が出ても、どの企業が自社を比べているかは、AIの答えからは分かりません。アクセスした企業とサイトの外での関心のデータを手がかりに、こちらからアプローチ企業を決める必要があります。
BtoBでは、アプローチ企業と順番を決める、資料やメールを作る、施策を実施して調整する、結果を確かめる、の4つの場面でAIを使います。
4つのうち、下書きを作る使い方だけで止まっている会社が多くあります。作業の時間は減っても、どの企業に案内するかが前と同じなら、商談化する企業の数は変わりません。
たとえば、製造業向けの生産管理システムを売る会社(架空)なら、AIにこう頼みます。アクセスした企業のデータと、サイトの外で「生産計画」「在庫の削減」を調べている企業のデータを渡し、ターゲット企業に当てはまる企業を、検討の手がかりが多い順に並べてもらう。上位の企業には、業種と課題に合う事例を添えたメールの下書きも作らせる。並び順を見て、どの企業に連絡するかを決めるのは担当者です。
公開事例では、リコー様が分析と営業資料の骨子を、レクシスネクシス・ジャパン様が毎朝の分析をAIに任せ、アプローチ企業は人が決めています。
リコー様は、新規事業の樹脂判別ハンディセンサーのマーケティングで、展示会の名刺と、展示会後に自社サイトを見ている企業のデータを組み合わせています。以前は、数百社の名刺の中から、インサイドセールスの担当者が経験と勘でA・B・Cを付け、上位の3割ほどにメールを送っていました。
今は毎週、データをまとめた資料を営業とインサイドセールスに共有し、連絡の順番を決めています。展示会のリストをもとにした連絡から、商談につながる成果も出始めています。
AIの使い方では、AIエージェントに「この業界で、この資本規模の企業が関心を持っているテーマをまとめて」と頼み、サイトの外での関心(インテント)を分析しています。その結果をもとに、業界やお客様の規模に合わせた営業資料の骨子を作る取り組みと、ホワイトペーパーを充実させる計画を進めています。製品が高価格帯で検討に時間がかかるため、成果は1年半ほどの長い期間で見ていくそうです。
レクシスネクシス・ジャパン様は、ウルテクのAIエージェントに、ターゲット企業を点数で順位づけ(スコアリング)し、サイトの外での関心を分析する条件を設定しています。毎朝自動で作られる分析結果をもとに、マーケティングが営業チームへリストを提供しています。週5件に厳選したリストから、好調時は半数以上が商談化しています。
ほかの会社の事例は「AIマーケティングの活用事例11選」にまとめています。
BtoBのAIマーケティングで、アプローチ企業を決めるために渡すデータは、自社サイトの中の行動、サイトの外での関心、アクセスした企業、マーケティングと営業の結果の4つです。
AIの答えは、渡したデータの範囲を超えません。「BtoBの見込み客は?」と聞くだけでは、どの会社にも当てはまる一般論が返ってきます。
| データの種類 | 分かること | 例 |
|---|---|---|
| 自社サイトの中の行動 | どのページや資料を見たか | 料金ページ、事例、資料の閲覧 |
| サイトの外での関心 | 自社サイトに来る前に調べているテーマ | 比較の記事、業界のニュース |
| アクセスした企業 | どの企業から来ているか、業種や規模 | 会社名、業種、従業員数 |
| マーケティングと営業の結果 | どの施策から商談や受注が生まれたか | 名刺、メールやセミナーへの反応、資料請求、商談、失注の理由 |
資料やメールの下書きを作るときは、これとは別に、自社の事例、製品の資料、商談で聞かれた質問を渡します。
4つのうち、いちばん抜けやすいのは4つ目の結果です。結果を渡さないと、AIは「よく見られた資料」は答えられても、「商談につながった資料」は答えられません。
AIに渡す前に、入力した内容を学習に使わない契約や設定のAI(法人向けのChatGPT、Claude、Microsoft Copilotなど)を、社内で使ってよいAIとして決めます。氏名や契約の金額は消してから渡します。会社名と閲覧のデータの組み合わせも、社外秘として扱います。
閲覧や関心のデータは検討の手がかりで、買うと決めた合図とは限りません。AIの答えをそのまま結論にせず、連絡して確かめる順番の材料として使います。渡したデータの一覧と日付を残しておくと、答えが変わったときに理由をたどれます。
AIマーケティングは、詰まっている場所を1つ決め、渡すデータと使ってよいAIを決め、続ける条件を決めて試し、3か月で商談化を確かめる順に始めます。
「アプローチ企業が決まっていない」「資料を作る時間が足りない」「施策の結果が分からない」のうち、いちばん困っている1つを選びます。AIで何をするかは、詰まりから決めます。
ステップ1の詰まりに要るデータを選びます。アプローチ企業を決めるなら、アクセスした企業とサイトの外での関心、資料を作るなら、商談で聞かれた質問と失注の理由が要ります。
会話で使う生成AI、MAやSFAに入っているAI、分析を受け持つAIエージェントのうち、詰まりに合うものを選びます。あわせて、消してから渡す項目を決め、担当者の間でそろえます。会社の決まりで使えるAIが限られる場合は、情報システムの担当者に、使ってよい範囲を先に確かめます。道具の選び方は「BtoBマーケティングにおすすめのAIツール8選」で紹介しています。
始める前に、「30社に案内して、3か月で3社が商談化すれば続ける」のように、続ける条件を書いておきます(数は架空の見本)。たとえば、ターゲット企業の中から今月案内するアプローチ企業の候補をAIに出させ、メールとセミナーの案内に使います。比べる相手として、AIを使わずに決めた企業にも同じ案内をします。
BtoBは検討に時間がかかるので、1か月で見るのは返信やセミナーの申し込み、面談の設定のような、商談の手前の数です。商談化した企業の数は3か月で比べます。結果をAIに渡すデータに戻し、候補の出し方を直します。もっと多くの使い方は「BtoBマーケティングのAI活用手法10選」で紹介しています。
メリットは、下書きと分析の時間が減り、アプローチ企業を毎月決め直せることです。注意点は、費用と手間、そしてAIの点数の理由を説明できるかどうかです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メリット | 記事・メール・資料の骨子の下書きにかかる時間が減る |
| メリット | アプローチ企業の候補と順番を、毎月のデータで決め直せる |
| メリット | 少ない人数でも、業種ごとに内容を変えた案内ができる |
| 注意点 | ツールの費用に加え、データを毎月そろえる担当者の手間がかかる |
| 注意点 | 点数の理由を営業に説明できないと、連絡の順番に使われない |
| 注意点 | 使いこなす担当者が1人だけだと、その人が抜けたときに止まる |
予測AIの点数は、どのデータが効いて高くなったかを一緒に見せると、営業が使いやすくなります。使い方の手順は、担当者が1人で抱えず、マーケティングの中で共有します。
よくある失敗は、作業の速さだけを測る、データを渡さずに聞く、担当者の単位で判断する、AIの答えを確かめずに出す、の4つです。
「記事の作成時間が半分になった」は成果の1つですが、商談化した企業の数とは別です。作業の時間と、商談化した企業の数を、両方とも報告します。
一般論が返ってきて、「AIは使えない」と結論づけてしまいます。4つの種類のデータを、渡せる範囲で渡します。
1人の担当者がメールを開いたかどうかで判断すると、同じ企業の別の部署の検討を見落とします。企業の単位でまとめてから、AIに渡します。
AIが書いた記事やメールには、事実と違う数字や、存在しない機能が混ざることがあります。社外に出す前に、人が出典と事実を確かめます。データ設計の面から見た失敗の理由は「BtoBマーケティングでAI活用が失敗しやすい理由」で紹介しています。
インテントデータでサイトの外での関心を、AIエージェントで分析のくり返しを受け持たせます。
今日できることは、先月AIで作った資料やメールを書き出し、それぞれを案内したターゲット企業のうち、商談化した企業が何社あったかを横に書くことです。数が分からないものが、最初に結果を戻す仕組みを作る場所です。
ウルテク(URUTEQ)は、ABM(アカウントベースドマーケティング)の考え方で、ターゲット企業からの商談獲得を仕組み化するBtoBマーケティング・営業支援サービスです。マーケティング施策の結果、営業の対応、サイトの外で調べているテーマを企業ごとに分析し、アプローチの抜け漏れと、商談につながった施策を解析します。毎月の定例で商談の結果を確かめ、翌月の施策に反映します。ターゲット企業の選定から効果の検証まで、ウルテクチームが並走します。
AIに渡すデータの種類と、来訪履歴・インテント・CRMを使った6つの実務の例は、「BtoBマーケティング AI活用事例集」にまとめています。
ウルテクについて、もっと詳しく知りたい方へ