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データで実践するバイヤーイネーブルメント | 買い手の「今」を捉えて、情報提供を最適化する方法

前回の記事(「バイヤーイネーブルメントとは?買い手が『買える状態』をつくる考え方」)では、バイヤーイネーブルメントの定義や、なぜ今この考え方が重要なのかを整理しました。

※ご覧になっていない場合はまずは上記の記事をご覧ください。

で、読んでくださった方の中には、こう思った人もいるんじゃないでしょうか。

「考え方はわかった。でも、実際にどうやるの?」

正直、私もバイヤーイネーブルメントという概念を初めて聞いたときは同じことを思いました。「買い手が進みやすい状態をつくる」って、言葉としては美しいけれど、具体的に何をどう変えればいいのかがぼんやりしている。

この記事では、その「どうやるの?」に正面から答えます。カギになるのは、データです。買い手の行動データを活用して、「いま、誰に、何を届けるべきか」を設計する。その具体的な方法を、当社(ログリー株式会社)が提供するウルテク(URUTEQ)の機能にも触れながら解説していきます。


バイヤーイネーブルメントが「いい話」で終わる理由

まず、ちょっと耳が痛い話から始めさせてください。

バイヤーイネーブルメントの重要性を理解しても、多くの企業がそこで止まってしまうのには理由があります。それは、「買い手の状態がわからない」という根本的な問題です。

前回の記事(「バイヤーイネーブルメントとは?買い手が『買える状態』をつくる考え方」)でも触れましたが、買い手は自分が今どの検討段階にいるかなんて教えてくれません。フォームに「いま要件定義中です」と書いてくれる人はいないし、「来週から最終比較に入ります」とメールしてくれる見込み客もいない。

だから結局、全員に同じホワイトペーパーを送って、同じメルマガを流して、同じウェビナーに誘導する。つまり「一律配信」に戻ってしまう。

これ、バイヤーイネーブルメントの正反対なんですよね。全員に同じ情報を届けるのは、買い手にとっては「欲しくない情報が届く」状態でしかない。Gartnerの調査では、73%のBtoBバイヤーが「無関係なアウトリーチを送ってくるベンダーを積極的に避けている」と回答しています。

じゃあどうすればいいのか。答えは明快で、買い手の状態を「推測」ではなく「データ」で捉えることです。


買い手の「今」を捉える3つのデータ

バイヤーイネーブルメントをデータで実践するには、買い手の状態を知るためのシグナルが必要です。大きく分けると、3種類のデータが組み合わさることで初めて「今、この企業は何を知りたがっているのか」が見えてきます。

1. サイト内行動データ:「何を見ているか」

最も基本的で、かつ最も見落とされがちなのが、自社サイト上での行動データです。

どのページを見たか、だけじゃありません。大事なのは、どのページをどれくらい深く読んだか。たとえば、料金ページを3秒で離脱した企業と、5分かけてスクロールして隅々まで読んだ企業では、検討の深さがまったく違いますよね。

ウルテクには「閲覧計測」という機能があって、ページの表示時間だけでなく、タブの切り替えや離脱を除いた実際の閲覧時間を計測できます。つまり、「開いたまま放置していた」のか「ちゃんと読んでいた」のかを区別できる。地味に見えるかもしれませんが、これがあるとないとでは、買い手の関心度の読み取り精度がかなり変わります。

あと、「どのページの組み合わせを見たか」も重要です。概要ページだけ見て帰る企業と、概要→料金→導入事例→セキュリティ情報と回遊する企業では、検討ステージがまったく違う。ウルテクでは来訪企業ごとに閲覧ページの履歴や訪問頻度が一覧で見えるので、企業単位で「今どこまで検討が進んでいそうか」の当たりをつけやすくなります。

2. インテントデータ:「自社サイトの外で何を調べているか」

ここが、正直いちばんインパクトが大きいところだと思っています。

自社サイトの行動データだけだと、「うちのサイトに来た人」しか見えません。でも実際の購買行動は、もっと広い範囲で起きています。競合サービスを調べたり、関連する課題について検索したり、業界レポートを読んだり。そうしたサイト外の行動を「インテントデータ」と呼びます。

ウルテクは、ログリーの広告ネットワーク(LOGLY Sphere)を基盤として、企業がサイト外でどんなキーワードに関心を持っているかを捉えることができます。たとえば、ある企業が「SFA 比較」「営業支援 費用」「CRM 導入事例」といったキーワードに関連するコンテンツを外部で閲覧していたら、その企業は営業支援ツールの導入を検討している可能性が高い。

しかも、2025年2月にリリースされた「インテントカテゴライズ」機能では、取得したインテントキーワードを「比較情報」「製品情報」「業界動向」という3カテゴリに自動分類してくれます。

これ、地味にすごいんですよ。なぜかというと、同じ「CRM」というキーワードでも、「CRM 市場動向」を調べているのか「CRM 料金比較」を調べているのかで、検討段階がまったく違うからです。前者はまだ情報収集段階、後者はかなり具体的に比較検討に入っている。このカテゴライズがあることで、「この企業には概念的なコンテンツより、具体的な比較資料を出すべきだ」という判断がしやすくなります。

3. 企業属性データ:「誰なのか」を特定する

3つ目は、そもそも「どの企業か」を知るためのデータです。

BtoBサイトへの訪問者のうち、フォームを入力して自ら名乗ってくれる人はわずか数パーセントと言われています。残りの大多数は匿名のまま離脱する。

ウルテクは、サイトに来訪した匿名の訪問者についても企業名を特定できます。IPアドレスの解析とログリーの500万件の法人データベースを組み合わせて、「どの企業の人がサイトを見に来たか」を割り出す仕組みです。企業名だけでなく、業種、売上高、従業員数、所在地といった属性情報も紐づいてくるので、「うちのターゲットセグメントの企業が来訪しているかどうか」がわかります。

この3つ、つまり「サイト内で何を見ているか」「サイト外で何を調べているか」「それはどの企業か」が統合されて初めて、バイヤーイネーブルメントに必要な「買い手の今」が見えるようになるわけです。


データで「届け方」を変える:5つの実践パターン

データが揃ったとして、次に問われるのは「それをどう使うの?」です。

ここからは、バイヤーイネーブルメントの実践として、データをもとに情報提供を最適化する具体的なパターンを5つ紹介します。

パターン1:検討初期の企業には「考え方」を届ける

インテントデータで「業界動向」カテゴリのキーワードに関心を示している企業は、まだ課題整理の段階にいる可能性が高いです。

この段階の買い手に必要なのは、製品紹介ではなく「考え方の整理」。たとえば「なぜ今○○が重要なのか」「○○を検討する前に押さえておくべきポイント」のような記事やガイドが響きます。

いきなり製品デモの案内を送ったら、たぶん73%の「無関係なアウトリーチを避けるバイヤー」にカウントされてしまう。それは避けたいですよね。

パターン2:比較検討に入った企業には「判断基準」を渡す

インテントキーワードが「比較情報」カテゴリに分類されている企業、あるいはサイト上で料金ページや競合比較ページを熟読している企業は、もう具体的に選定に入っています。

ここでは、機能比較表、導入事例(できれば同業種)、ROI計算ツールなど、買い手が社内で「これにしよう」と合意を取るための材料が刺さります。前回の記事で「稟議・説明に使える根拠」が重要だと書きましたが、まさにこのタイミングで届けるべきものです。

パターン3:再訪シグナルで「背中を押す」

一度サイトを訪れて離れた企業が、数日後にまた来る。しかも今度は事例ページや料金ページを見ている。これは、社内で検討が一歩進んだサインの可能性が高いです。

ウルテクでは、来訪企業の訪問頻度や閲覧ページの変化をトラッキングできます。さらに、特定の条件(たとえば「料金ページを再訪した」「事例ページを3回以上閲覧した」など)を検知すると、Slackやメールでリアルタイムにアラートを飛ばすことも可能です。

このタイミングで、セルフサービスデモへの導線や、気軽に相談できる窓口の案内を出す。営業が「今このタイミングで連絡しよう」と判断する材料にもなる。買い手の熱量がいちばん高い瞬間を逃さない仕組みです。

パターン4:「ウルテク スタジオ」で購買チーム全体をイネーブルする

ここ、ちょっと熱く語らせてください。2026年3月にリリースされた「ウルテク スタジオ」は、バイヤーイネーブルメントの文脈で見ると、かなり本質的な機能だと思っています。

前回の記事で、BtoBの購買チームは平均10人以上で構成されていて、部門も役職もバラバラだという話をしました。営業担当者、情報システム部門、経営層、総務・管理部門……それぞれが見たい情報は全然違う。でも従来のコンテンツ提供って、基本的に「1つの資料を全員に渡す」か、「問い合わせしてくれた人だけに個別対応する」かの二択でしたよね。

ウルテク スタジオの「ルーム」機能は、ここを根本から変えます。

ルームとは、複数の資料を1つのURLにまとめた簡易LPのようなものです。で、ここが肝なんですが、セクション分けができる。つまり、1つのルームの中に、

  • 営業部門向け:製品概要、競合比較、導入後の運用イメージ
  • 情報システム部門向け:セキュリティ仕様、API連携資料、技術要件
  • 経営層向け:ROI試算、投資対効果の概要、経営インパクト
  • 総務・管理部門向け:契約条件、サポート体制、導入スケジュール

といった形で、購買チームの各メンバーが「自分に関係ある情報」にすぐたどり着ける構造を作れるんです。

これ、バイヤーイネーブルメントそのものじゃないですか。

前回の記事で「社内共有しやすい要約」や「稟議・説明に使える根拠」が重要だと書きましたが、ルーム機能はまさにそれを丸ごと実現している。チャンピオン(社内推進者)がルームのURLをSlackに1つ貼るだけで、情シスの人は技術仕様を、CFOはROI資料を、それぞれ自分のペースで確認できる。「あの資料どこだっけ?」「経営層向けの説明資料を別途作って」みたいな社内の摩擦が一気に減ります。

しかも、ここからがデータ活用の真骨頂なんですが、ルーム内の閲覧行動がすべて可視化される。どの資料がどれくらい読まれたか、どのセクションに滞在時間が集中しているか、どの部門向けの情報がよく見られているか。たとえば「ROI資料の閲覧が急に増えた」なら、経営層への説明が始まった可能性が高い。「セキュリティ資料が何度も開かれている」なら、情シスの審査に入っている可能性がある。

つまり、ルームの閲覧データを見ることで、「今この企業は社内のどの部門が動いていて、検討がどこまで進んでいるか」が手に取るようにわかるわけです。

さらに、ルームを閲覧した匿名企業も特定できる。フォーム入力なしで。資料を閲覧している人のインテントデータも同時に取得されるので、「この企業はルームを見ながら、サイト外では競合サービスも調べている」なんてことまでわかる。

加えて、資料の途中にGoogleカレンダーの商談予約ポップアップを埋め込めるので、買い手が「もっと詳しく聞きたい」と思った瞬間に、ページ遷移なしで予約画面が出てくる。関心が最も高まったタイミングを逃さずに、次のアクションにつなげられる。

従来の「ホワイトペーパーをダウンロードしてもらう→リードとして登録→メルマガで育成→営業がコール」という長い迂回ルートを、大幅にショートカットできる仕組みです。

正直に言うと、私がウルテク スタジオに注目している理由はここにあります。多くのツールが「買い手の行動を可視化する」ところで止まっていますが、スタジオのルーム機能は「買い手の購買チーム全員が必要な情報に自力でアクセスし、社内で検討を前に進められる状態をつくる」ところまで踏み込んでいる。しかも、その過程のデータがすべて取れる。これは、バイヤーイネーブルメントの「考え方」と「データ活用」を1つの機能で両立させている、かなり稀有な例だと思います。

パターン5:広告もデータで最適化する

データ活用の話をすると、つい「営業への連携」ばかり考えがちですが、広告との連携もバイヤーイネーブルメントの実践として見逃せません。

ウルテクでは、ICP(理想的な顧客像)に合致する企業リストに対して、LOGLY liftのネイティブ広告を追加費用なしで配信できます。たとえば、まだ自社サイトに来ていないけれど、インテントデータで関連キーワードへの関心を示している企業に対して、課題解決の入口となるコンテンツ広告を表示する。

これは「押し売り型の広告」とは発想が違います。買い手がすでに調べていることに関連する情報を、自然な形で届ける。いわば、買い手が自分で情報収集しているプロセスのなかに、適切な情報をそっと差し込む行為です。

この「そっと差し込む」感覚が、バイヤーイネーブルメントの広告版と言えるかもしれません。


マーケと営業を「データ」でつなぐ

ここまで、データを使ったバイヤーイネーブルメントの実践パターンを見てきましたが、もうひとつ大事な論点があります。それは、マーケティングと営業の連携です。

バイヤーイネーブルメントは、マーケだけで完結する話ではないし、営業だけの仕事でもありません。買い手の検討プロセスの前半はマーケの領域、後半は営業の領域、なんてきれいに分かれるものでもない(前回の記事で書いた通り、購買プロセスは非線形です)。

問題は、マーケと営業の間に「共通言語」がないことです。マーケは「MQL(マーケティング認定リード)を○○件渡した」と言い、営業は「あのリードは質が低い」と返す。この不毛なやりとり、BtoBの現場では日常的に起きていますよね。

データが共通言語になると、この状況が変わります。

たとえばウルテクでは、インテントデータや行動データをもとに優先度の高い企業を自動でリストアップし、営業にSlackやメールで通知できます。通知には「この企業は料金ページを3回再訪している」「インテントキーワードに『○○ 比較』が出ている」といった具体的なコンテキストが含まれる。

営業はこれを見れば、「この企業は今、比較検討の段階にいて、料金が気になっている」ということが一発でわかる。電話をかけるにしても、「何かお困りですか?」という漠然としたアプローチではなく、「料金体系や導入プランについて、具体的にご質問があれば直接ご説明できますよ」と切り出せる。

さらに、HubSpotと連携すれば、ウルテクで捉えたインテントデータをCRM上のコンタクトや企業レコードに紐づけることもできます。マーケが作ったリードに対して、営業が追加のコンテキストを持った状態でアプローチできるわけです。

これ、地味ですがめちゃくちゃ重要です。バイヤーイネーブルメントの質は、「買い手の状態に合った情報を届けられるかどうか」で決まる。その精度は、マーケと営業が同じデータを見ているかどうかに大きく依存します。


「全部やらなくていい」から始める

ここまで読んで、「やることが多すぎる」と感じた方もいるかもしれません。

でも、全部を一度にやる必要はありません。バイヤーイネーブルメントはオール・オア・ナッシングではなく、段階的に進められるものです。

正直な話、最初のステップとしていちばん手応えが大きいのは、「自社サイトに来ている企業を知る」ことだと思います。今、誰がサイトに来ているのか。何を見ているのか。ウルテクのタグを1行入れるだけで、それが見えるようになる。

そこから見えた景色をもとに、「この企業には比較資料を出そう」「この企業はまだ初期段階だから、まずはブログ記事を届けよう」と判断する。これだけでも、「全員に同じメルマガを送る」状態からは大きく前進です。

次のステップとして、インテントデータを加えて「サイト外で何を調べているか」を把握する。さらにウルテク スタジオで資料閲覧を商談化の起点にする。HubSpotと連携してマーケと営業のデータを統合する。こうやって、少しずつ「買い手の今」を捉える解像度を上げていく。

完璧なバイヤーイネーブルメントの仕組みを一夜で構築する必要はありません。大事なのは、「全員に同じものを届ける」状態から、「相手の状態に合わせて届ける」状態へ、一歩ずつ移行していくことです。


まとめ

バイヤーイネーブルメントは概念としては美しいけれど、データなしでは実践できません。買い手が何を知りたがっているか、どの段階にいるか、そもそも誰なのかを「推測」から「把握」に変えること。これが出発点です。

そのためには、サイト内行動データ、サイト外のインテントデータ、企業属性データの3つを組み合わせて、買い手の「今」を立体的に捉える必要があります。ウルテクは、この3つのデータを統合し、匿名企業の特定からインテントの分類、リアルタイム通知、広告配信、さらには資料閲覧の商談化まで、バイヤーイネーブルメントを実践するための一連の機能を提供しています。

ただ、繰り返しになりますが、いきなり全部をやる必要はありません。まずは「自社サイトに誰が来ているかを知る」ことから。そこから見える景色が変わると、届けるべき情報も、届けるタイミングも、自然と変わっていきます。

買い手が自力で前に進みやすい状態をつくる。そのためのデータ活用が、これからのBtoBマーケティングの基盤になる。そう考えたとき、データで買い手を「理解する」仕組みは、単なる営業効率化ツールではなく、バイヤーイネーブルメントそのものの実装基盤なのだと思います。


関連記事:バイヤーイネーブルメントとは?買い手が「買える状態」をつくる考え方(/blog/buyer-enablement-guide)

参考情報

  • Gartner, 2026年3月「B2Bバイヤーの67%が営業なしの体験を好む」(gartner.com)
  • Gartner, 2025年6月「B2Bバイヤーの61%がrep-free体験を好む/73%が無関係なアウトリーチを避ける」(gartner.com)
  • 6sense「2024 Buyer Experience Report」(6sense.com)
  • ウルテク サービスサイト(uruteq.logly.co.jp)
  • ウルテク「インテントカテゴライズ」機能リリース, 2025年2月(uruteq.logly.co.jp)
  • ウルテク「ウルテク スタジオ」機能リリース, 2026年3月(corp.logly.co.jp)

著者紹介
井上翔太
ウルテク| URUTEQ 事業責任者 ---- 新卒で証券会社に入社し、BtoCのセールスを経験。その後、PR代理店にてBtoB・BtoC企業向けのデジタルマーケティングコンサルティングや新規営業を担当。ログリー株式会社入社後は、BtoBマーケティング向けSaaSの開発やマーケティング、セールスなどを行う。現在は、これまでの経験を活かし、BtoBマーケAIエージェント「アカウントインテリジェンスツール ウルテク」の事業責任者を務めている。

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