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匿名来訪を「短期間で商談化」するためのインテントデータ活用法 | サイト解析から営業連携まで

この記事の要点

  1. BtoB購買プロセスの大半は営業と会う前にWeb上で完了しており、問い合わせを待つだけでは機会損失になる。
  2. フォーム未入力の「匿名来訪企業」をインテントデータ(興味関心)で熱量を把握し、優先順位をつける具体的な活用法を解説。
  3. サイト解析で得た「料金ページ閲覧」などのシグナルを営業へ連携し、不審がられないトークで商談化する実践フローを紹介。

なお、ログリー株式会社では、本記事で解説したような「Webサイト上の匿名来訪者」の中から、アプローチすべき“インテントの高い顧客”を自動で見つけ出し、インサイドセールスの精度を高めるBtoBマーケAIエージェント『ウルテク』を提供しています。

スコアリング設計や連携フローをゼロから構築するのはハードルが高いと感じる場合でも、ツールを活用することでスムーズに実践可能です。商談機会を取りこぼさない攻めの営業体制をつくりたい企業様は、ぜひ無料のサービス資料をご覧ください。


はじめに

自社のWebサイトには毎日多くのアクセスがあるのに、問い合わせフォームからのコンバージョンはごくわずか。「このアクセスの主は誰なのか?」「もしかしたら、大口の顧客が検討しているのではないか?」——BtoBマーケティング担当者やインサイドセールスのリーダーであれば、一度はそう感じたことがあるはずです。

実際、Webサイトを訪れる企業の多くは、フォーム入力などの個人情報を明かす前に離脱してしまいます。しかし、彼らはただなんとなく眺めていたわけではなく、真剣に情報収集をしていたのかもしれません。この「匿名来訪(匿名リード)」を放置することは、目に見えない大きな機会損失になり得ます。

本記事では、匿名来訪者を単なる「アクセス数の1つ」として終わらせず、具体的な「商談候補」へと引き上げるための行動設計について解説します。どの企業を優先すべきかのスコアリング手法から、インサイドセールスが具体的にどう動くべきかの連携フローまで、実務に即したガイドラインをお届けします。

なぜ今、「匿名来訪」へのアプローチが営業成果を左右するのか

かつての営業スタイルは、展示会で名刺を集めたり、リストの上から順にテレアポをして接点を作ったりすることから始まりました。しかし現在、BtoBの購買行動は大きく変化し、従来のやり方だけでは通用しにくくなっています。

営業と会う前に、勝負はついている

よく言われるデータですが、最新の調査ではさらに衝撃的な実態が明らかになっています。

6senseが発表した「2024 B2B Buyer Experience Report(2024)」によると、BtoBバイヤーが営業担当者と接触する前に、購買プロセスの69%がすでに進行しているといいます。

それだけではありません。同レポートでは、81%のバイヤーが営業と話す前にすでに優先ベンダー、つまり事実上の「勝者」を選んでおり、85%が要件定義まで固めていると指摘されています。

つまり、顧客は自ら検索し、比較サイトを見比べ、貴社のWebサイトでサービス内容や料金、導入事例を入念に確認します。そして社内で議論し、ある程度「このサービスなら買ってもいいかもしれない」という当たりをつけてから、初めて問い合わせをしてくるのです。

逆に言えば、「問い合わせが来た時点」では、すでに競合他社と比較され尽くした後である可能性が高いということです。そこから慌ててアプローチしても、すでにコンペの要件が固まっていたり、他社が優位な状況で話が進んでいたりすることは珍しくありません。

待ちの姿勢からの脱却

ここで重要になるのが「匿名来訪(ダークファネル)」へのアプローチです。

ダークファネルに関する詳しい解説は以下を参考にしてください

ダークファネルの可視化で顧客理解を深める!インサイドセールスの商談獲得率向上の秘訣とは?

フォーム入力前の、まだ検討段階にある企業をいち早く検知すること。そして、競合よりも早く、あるいは顧客が課題を明確にする前のタイミングで接点を持つこと。これができれば、比較検討の土俵に乗るだけでなく、要件定義の段階からパートナーとして入り込める可能性が高まります。

匿名来訪への対応は、単なるリード数の確保ではありません。「質」の高い商談を創出するための、攻めの戦略なのです。

優先度を見極める!インテント指標を使ったスコアリング設計

匿名来訪へのアプローチが重要とはいえ、すべての来訪者に片っ端から電話をかけるわけにはいきません。それは非効率であり、貴重な営業リソースの浪費につながります。また、まだ検討度が低い相手に強引なアプローチをすれば、ブランドイメージを損なう恐れもあります。

重要なのは、「今、アプローチすべき熱い企業」を見極めるためのスコアリング、つまり優先順位付けです。

以下の2つの軸で評価基準を設計することをおすすめします。

1. 企業属性(Fit):自社にとってのターゲットか?

まず大前提として、来訪している企業が自社のターゲット条件に合致しているかを確認します。

  • 業種・業界: 自社の得意な領域か?事例はあるか?
  • 企業規模: 従業員数や売上高はターゲット範囲内か?
  • エリア: 営業対応可能な地域か?

どんなに熱心にサイトを見ていても、自社のサービス対象外であれば商談化は望めません。IPアドレス解析などのインテントデータツールを使えば、匿名状態でも企業名を特定し、これらの属性情報を付与することが可能です。

まずは「自社が相手にすべき企業かどうか」でフィルタリングをかけましょう。

2. インテントデータ:興味関心の度合いは?

インテントデータについての詳しい解説は以下を参考にしてください

インテントデータとは? | BtoB営業・マーケの成果を変える「顧客の興味」を知る方法

次に、Webサイト内での動きから、その企業の「本気度」を測ります。ここがスコアリングの肝になります。

  • 閲覧ページの種類: トップページだけを見て帰った企業より、「料金ページ」「導入事例」「機能詳細」を見た企業の方が、明らかに検討度は高いと言えます。特に「料金ページ」の閲覧は強いシグナルです。
  • 閲覧頻度と深さ: 1回だけの訪問より、1週間に3回訪問している企業、滞在時間が長い企業の方が有望です。
  • 複数人でのアクセス: BtoBの場合、購買は組織で検討されます。同じ企業から複数の異なるデバイスやブラウザでアクセスがある場合、社内でURLが共有され、チームで検討が進んでいるシグナル(予兆)である可能性が高いです。

スコアリング設計の具体例

これら「Fit(属性)」と「Intent(行動)」を組み合わせて、以下のようなランク付けを定義します。

  • ランクS(即対応): ターゲット属性合致 × 料金ページ閲覧あり × 複数人アクセス
  • ランクA(要注視): ターゲット属性合致 × 事例ページ閲覧あり
  • ランクB(育成): ターゲット属性合致 × ブログ記事のみ閲覧

このように基準を明確にすることで、インサイドセールスは「ランクSの企業が来たら通知を受け取り、即座に企業調査を開始する」といった迷いのない行動が可能になります。

あるマーケティング担当者の失敗談:複雑さは敵である

ここで、あるSaaS企業のマーケティング担当者の失敗談を紹介させてください。

彼はツール導入当初、気合を入れて非常に精緻なスコアリングモデルを作り上げました。「トップページは1点、ブログは3点、料金ページは10点、滞在時間が3分以上なら係数1.5倍、過去30日以内の再訪なら…」といった具合に、あらゆるパラメーターを組み込んだのです。

その結果、何が起きたでしょうか。

毎日大量の「スコア50点以上のリスト」がインサイドセールスに送られるようになりました。しかし、営業現場からすれば「なぜこの企業が50点なのか」が直感的にわかりません。「点数が高いから電話して」と言われてかけてみても、たまたまブログを読み漁っていただけの学生だったり、競合調査だったりすることが多発しました。

結果として、インサイドセールスはそのスコアを信用しなくなり、通知はミュートされ、ツールは誰も見ないダッシュボードと化してしまいました。

この経験から得られる教訓は、「スコアリングはシンプルであるべき」ということです。

「料金ページを見たターゲット企業」など、営業担当者が直感的に「それは熱そうだ」と思えるシンプルなトリガーから始めること。そして運用しながら徐々に条件を絞り込んでいくこと。最初から完璧を目指さず、現場が納得できる「腹落ち感」のある基準を作ることが、成功への近道です。

インサイドセールスへどう渡す?商談化率を高める連携とアクション

スコアリングの基準ができたら、次は実行フェーズです。マーケティング部門がデータを握りしめているだけでは商談は生まれません。インサイドセールス(IS)や営業部門へのスムーズなハンドオフ(引き渡し)が成功の鍵を握ります。

1. リアルタイムでの通知と情報共有

「先週、こんな企業が来ていました」と週次定例で報告しても、対応としては遅すぎます。鉄は熱いうちに打てと言われるように、検討意欲が高まっている「その瞬間(あるいは当日中)」にアプローチすることが重要です。

SlackやChatworkなどのチャットツール、あるいはSFA(営業支援システム)と連携し、ランクSの企業来訪があったら即座に担当者に通知が飛ぶ仕組みを作りましょう。

その際、単に「A社が来ました」と伝えるだけでは不十分です。

  • 「A社(従業員500名・製造業)が来ました」
  • 「料金ページを3分間見ています」
  • 「過去に事例ページも閲覧しています」

というコンテキスト(文脈)もセットで伝えることが、営業担当者の初動を助けます。これがあることで、営業は「製造業向けの事例を用意して電話しよう」と準備ができるからです。

2. 「見ていましたね?」はNG!不審がられないトーク術

実際に電話をかける際、最も注意すべきは「Webサイトを見ていましたよね?」と唐突に切り出さないことです。

IPアドレスによる企業特定は合法的なマーケティング手法ですが、相手の心理からすれば、自分の行動を監視されているようで気味悪く感じてしまう可能性があります。トラッキング技術が一般的になったとはいえ、心理的な抵抗感はまだ根強いものがあります。

アプローチの際は、あくまで「偶発性」や「業界のトレンド」を装いつつ、相手の課題に寄り添うトークを展開するのが鉄則です。

  • 悪い例:「先ほど御社が当社の料金ページをご覧になっていたようなので、お電話しました。何かご不明点はありますか?」
    • これでは相手を警戒させてしまいます。
  • 良い例:「現在、御社と同じ〇〇業界のお客様から、△△(自社が解決できる課題)について多くご相談をいただいておりまして、他社様の事例などの情報提供でお電話を差し上げました。」
    • このように、相手の業界や課題感に焦点を当てます。

Web上の行動データは、あくまで「今、この企業がこの課題を持っている可能性が高い」という仮説を立てるための材料として使いましょう。実際のコミュニケーションは、相手の役に立つ情報の提供から入るのがマナーであり、商談化への近道です。

現場からの「3つの懸念」に答える

こうした取り組みを始めようとすると、必ず現場から懸念の声が上がります。よくある3つの疑問と、それに対する現実的な解を整理しておきましょう。

懸念1:「データを見ても、担当者名も電話番号もわからないのでは?」

その通りです。IPアドレスからわかるのは「企業名」までです。そのため、基本的には代表電話へのアプローチや、すでにハウスリストにあるリード情報との名寄せが必要になります。 しかし、「どの企業が動いているか」がわかるだけでも、無作為なテレアポよりはるかに効率的です。また、企業名がわかれば、LinkedInやEightなどのビジネスSNS、あるいは企業HPの役員一覧などからキーマンを推測し、手紙を送るなどのABM(アカウントベースドマーケティング)的アプローチも可能になります。ゼロから探すのではなく、「当たりがついている状態」から始められるのが最大のメリットです。

懸念2:「IPアドレスの判定精度は100%ではないのでは?」

これもその通りです。プロバイダによっては特定できない場合もありますし、リモートワークの普及で判定が難しくなっている側面もあります。 しかし、ビジネスにおいて重要なのは「100%の正確さ」ではなく「確率の高さ」です。判定できた企業の中には、確実に検討中の顧客が含まれています。見えないものを見ようとするのではなく、「見えたもの(検知できた企業)」を確実に拾っていくスタンスで十分な成果が出ます。完璧主義にならず、取れる果実から取っていく姿勢が重要です。

懸念3:「営業が忙しくて、そんな不確実なリストに架電できない」

これは最も切実な課題です。だからこそ、前述の「スコアリング」が重要になります。 「Webに来た企業全部」に電話する必要はありません。「ランクS(ターゲット × 料金ページ閲覧)」だけに絞れば、1日の件数は数件程度になるはずです。 「1日5件だけでいいので、この『激アツ』リストにだけはアプローチしてほしい。その代わり、闇雲なリストへの架電はやめていい」と提案してみてください。確度の高いリストであれば、営業担当者も成果が出やすいため、協力してくれるようになります。

まとめ:小さな「行動設計」が匿名来訪を資産に変える

匿名来訪者(匿名リード)は、決して「顔の見えないその他大勢」ではありません。適切なツールと設計があれば、彼らは「今まさに課題を抱えている見込み顧客」へと変わります。

本記事のポイントを振り返ります。

  1. 待っているだけでは遅い: 購買プロセスの大半はWeb上で終わっているため、能動的な検知が必要です。
  2. 優先順位をつける: 「企業属性(Fit)」×「行動データ(Intent)」でスコアリングし、限られたリソースを集中させましょう。
  3. 連携をスムーズに: リアルタイムな通知と、相手を不快にさせない文脈に合わせたアプローチを行いましょう。

いきなり完璧な自動化の仕組みを作る必要はありません。まずは「自社の重要ページ(料金や事例)を見ている企業リストを、毎朝5分だけチェックする」といった小さな一歩から始めてみてはいかがでしょうか。

そこから、「お、この企業はターゲットど真ん中だ。ちょっとアプローチしてみよう」というアクションが生まれれば、それは立派な「匿名来訪活用」のスタートです。見過ごされていたシグナルを拾い上げ、競合より一歩早いアプローチを実現してください。

よくある質問(Q&A)

Q1. 匿名来訪ツールを導入するだけで、商談数は増えますか?

いいえ、ツールを導入するだけでは商談数は増えません。ツールはあくまで「どこにアプローチすべきか」を可視化する地図のようなものです。重要なのは、そのデータを基に「誰が、いつ、どのようにアプローチするか」という行動設計を行い、実際に営業活動(インサイドセールス)を行うことです。

Q2. インサイドセールスチームが少人数でも取り組めますか?

はい、むしろ少人数のチームこそ取り組むべきです。リソースが限られている場合、無作為なリストへの架電は非効率です。匿名来訪データを活用して「今、検討している企業(ランクS)」だけに絞ってアプローチすることで、少人数でも効率的に成果を出すことが可能になります。

Q3. IPアドレスから企業を特定することは法的に問題ありませんか?

一般的に、法人に紐づくIPアドレスから企業名を特定することは、個人情報の取得には当たらないため、個人情報保護法などの法的規制の対象外とされるケースが大半です。ただし、特定の個人を識別できるようなデータと紐付けたり、プライバシーポリシーへの記載が必要な場合もありますので、導入するツールの規約や自社のコンプライアンス基準を確認することをお勧めします。


なお、ログリー株式会社では、本記事で解説したような「Webサイト上の匿名来訪者」の中から、アプローチすべき“インテントの高い顧客”を自動で見つけ出し、インサイドセールスの精度を高めるBtoBマーケAIエージェント『ウルテク』を提供しています。

スコアリング設計や連携フローをゼロから構築するのはハードルが高いと感じる場合でも、ツールを活用することでスムーズに実践可能です。商談機会を取りこぼさない攻めの営業体制をつくりたい企業様は、ぜひ無料のサービス資料をご覧ください。

著者紹介
井上翔太
ウルテク| URUTEQ 事業責任者 ---- 新卒で証券会社に入社し、BtoCのセールスを経験。その後、PR代理店にてBtoB・BtoC企業向けのデジタルマーケティングコンサルティングや新規営業を担当。ログリー株式会社入社後は、BtoBマーケティング向けSaaSの開発やマーケティング、セールスなどを行う。現在は、これまでの経験を活かし、BtoBマーケAIエージェント「アカウントインテリジェンスツール ウルテク」の事業責任者を務めている。

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