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失敗しないICP(理想顧客像)の作り方|ABMを成功させるテンプレート付き

「ターゲットを絞り込む勇気が出ない」「営業とマーケティングで狙うべき企業の認識がズレている」。そんなBtoB企業の課題を解決するのがICP(理想顧客像)です。本記事では、曖昧なターゲット設定から脱却し、リソースを集中させて成果を出すためのICP策定フローを解説。すぐに実践できる「6ステップのテンプレート」と、AIで叩き台を一瞬で作るための「専用プロンプト」も公開しているので、ぜひ最後までお付き合いください!

なお、ログリー株式会社では、企業のWeb行動から「今まさに検討を始めた見込み顧客」を可視化し、マーケティングや営業活動の機会損失を防ぐためのBtoBマーケティングAIエージェントウルテクを提供しています。サイト内外の行動から顧客の隠れた興味・関心(インテント)をAIが解析し、アプローチすべき有望企業をリアルタイムで特定できる点が特長です。サービス資料は無料でダウンロードできますので、下記からお気軽にご覧ください。


はじめに

「ターゲットをもっと広げないと、リード数が足りなくなるんじゃないか?」

マーケティング戦略の会議で、こんな不安の声を聞いたことはないでしょうか。あるいは営業部門から「質の良いリードが欲しいが、具体的になんと言われると難しい。とにかく話を聞いてくれる会社ならどこでもいい」と言われた経験があるかもしれません。

多くのBtoB企業が陥るのが、この「ターゲットの広げすぎ」による疲弊です。

「誰でもいい」というスタンスは、裏を返せば「誰にも刺さらない」メッセージを生み出します。結果として、広告費は膨らむのに商談化率は上がらず、営業担当者は見込みの薄いリストへの架電に追われ、マーケティング部門との溝が深まっていく。そんな負のループに陥っている組織は少なくありません。

この記事では、そんな状況を打破するための「ICP(Ideal Customer Profile:理想顧客像)」の策定方法を解説します。

概念的な話だけでなく、明日から使える「6ステップの記入式テンプレート」と、ChatGPTなどの生成AIを使って一瞬で叩き台を作るための「プロンプト」も用意しました。

曖昧なターゲット設定に終止符を打ち、勝てる土俵を明確に定義していきましょう。

なぜ今、ICP(理想顧客像)が必要なのか?

まず前提として、よく混同される「ペルソナ」との違いを整理しておきます。

ペルソナは「担当者個人」の人格や抱える課題にフォーカスしたものです。対してICPは「企業(組織)」そのものの条件定義です。業種、売上規模、従業員数、導入しているテクノロジー、成長フェーズなど、企業としての属性を指します。

BtoBマーケティング、特にABM(アカウントベースドマーケティング)においては、個人のペルソナ設定の前に、まず「どの企業を攻めるか」というICPの定義が不可欠です。

「全方位外交」の末路

あるSaaS企業の事例を紹介します。彼らは当初、サービスが汎用的であることを強みと考え、「全業種・全規模」をターゲットに広告を配信していました。

リード数は順調に増えました。しかし、半年後に直面したのは「受注率の低さ」と「チャーン(解約)率の悪化」でした。

詳しく分析してみると、従業員50名以下の企業は「機能が使いこなせない」と言って解約し、大企業は「セキュリティ要件が合わない」と言って商談初期で離脱していました。彼らが本当に価値を提供できていたのは、実は「従業員100名〜300名で、特定のクラウドツールをすでに導入しているIT企業」だけだったのです。

最初からここをICPとして設定し、リソースを集中させていれば、無駄な広告費も営業工数もかけずに済んだはずです。

ICPを策定する最大のメリットは、この「リソースの最適化」と、組織全体が「追うべき顧客」と「追わなくていい顧客」の共通認識を持てることにあります。

【実践】データから導くICP策定の3ステップ

では、どのようにICPを作ればよいのでしょうか。「なんとなくこんな会社」というイメージだけで作るのは危険です。また、経営陣の思い込みだけで決めるのもリスクがあります。

客観的なデータに基づいて策定するための3つのステップを紹介します。

ステップ1:既存の「勝ちパターン」を分析する

もっとも確実な手掛かりは、自社の既存顧客の中にあります。

すでに契約してくれていて、満足度が高く、LTV(顧客生涯価値)が高い顧客をリストアップしてください。そして、それらの企業に共通する属性を洗い出します。

ここでのポイントは、業種や売上といった基本属性だけでなく、もう少し踏み込んだ特徴を見ることです。

  • 特定のエリアに集中していないか?
  • 導入しているツールに傾向はないか?
  • 求人を出している職種に偏りはないか?
  • Webサイトでどのような発信をしている企業か?

URUTEQのような企業データベース活用ツールを使っている場合、自社の優良顧客リストをインポートするだけで、これらの共通項を自動で分析できる機能もあります。手作業では見えにくい「実はこのツールを使っている企業との相性が抜群に良い」といった隠れた共通点が見つかることもあります。

ステップ2:条件を言語化し、優先順位をつける

共通点が見えてきたら、それを条件として言語化します。

ただし、すべての条件を満たす企業はごくわずかかもしれません。そこで、「Must(必須条件)」と「Want(あると望ましい条件)」に分けます。

  • Must:これに当てはまらないと、そもそも自社サービスが役に立たない条件(例:特定の法規制対象の業種、最低限の予算規模など)
  • Want:当てはまると受注率や継続率が高まる条件(例:DX推進部署がある、競合ツールからの乗り換え時期など)

ステップ3:営業とマーケティングで握る

ここが最も重要で、かつ多くの企業が失敗するポイントです。マーケティング部門だけで作ったICPは、営業現場から「現場の感覚と違う」「こんな会社はリストにない」と反発を受けがちです。

作った素案をたたき台に、必ず営業責任者やトップセールスを交えてすり合わせを行ってください。

「データではこう出ているが、現場の実感としてはどうか?」 「最近受注したあの会社は、この条件には当てはまらないが良い顧客だった。何が違ったのか?」

こうした対話を通じて、データの客観性と現場の肌感覚を融合させたものが、本当に使えるICPになります。

誰でも書けるICPテンプレート(6つの質問)

ここからは、実際にドキュメントに落とし込むための具体的なテンプレートを紹介します。

難しく考える必要はありません。以下の6つのステップに沿って、空欄を埋めていってください。最初は「すでに相性がいい特定の1社」を思い浮かべながら書くとスムーズに進みます。

ステップ1:どんな会社に売りたい?(会社のプロフィール)

まずは基本属性です。ここはあまり広げすぎず、具体的に書くのがコツです。

  • Q1-1. 業種は?
    • (記入例:SaaS、広告代理店、素材メーカー)
  • Q1-2. 会社の規模は?
    • (記入例:従業員50〜500名、売上10〜100億円)
  • Q1-3. メインのターゲットエリアは?
    • (記入例:首都圏中心だが、関西支社がある企業も可)

ステップ2:その会社は、何を目指している?(ゴール)

顧客が掲げている目標や、担当者が評価されるポイントを想像します。

  • Q2-1. その会社は、ざっくり何を伸ばしたい?
    • (記入例:新規リード数、既存顧客のアップセル)
  • Q2-2. その会社の担当者は、どんなKPIを追っていそう?
    • (記入例:月間の商談数、受注率)
  • Q2-3. 「うまくいった状態」を一言で言うと?
    • (記入例:「広告費をそのままで、商談数が昨対1.5倍になった」状態)

ステップ3:どんなことで困っている?(課題)

自社のソリューションが解決できる「痛み」を定義します。

  • Q3-1. よく聞く“悩みの一言”は?
    • (記入例:「リードの質が悪くて営業が動いてくれない」)
  • Q3-2. その悩みが数字にどう出ている?
    • (記入例:アポ率は高いが受注率が低い、CPAが高騰している)
  • Q3-3. その悩みを放置すると、何がまずい?
    • (記入例:営業部門が疲弊して離職する、マーケ部門の予算が削られる)

ステップ4:誰が決める?誰と話す?(組織・決裁フロー)

アプローチすべきカウンターパートを明確にします。

  • Q4-1. 主に話す相手(役職・部署)は?
    • (記入例:マーケティング部長、インサイドセールスMGR)
  • Q4-2. どの予算からお金が出ることが多い?
    • (記入例:販促費、DX推進予算)
  • Q4-3. どんなステップで決まることが多い?
    • (記入例:担当者情報収集 → 比較サイト検討 → 稟議 → 経営会議)

ステップ5:どんな動きがあったら「今がチャンス」?(行動サイン)

ここはインテントデータ(興味関心データ)やアカウントインテリジェンスが活きるパートです。「タイミング」を捉えるための条件です。

  • Q5-1. 「本気で検討していそう」と感じる行動は?
    • (記入例:料金ページを複数回閲覧、導入事例を熟読、展示会で名刺交換済み)
  • Q5-2. 「ちょっと気になり始めた」レベルの行動は?
    • (記入例:課題解決型のブログ記事を閲覧、ホワイトペーパーDL)
  • Q5-3. “優先フォローしたい”と判断する具体条件は?
    • (記入例:競合サービス名での検索履歴がある、特定カテゴリの資料を直近1ヶ月で3回DLしている)

ステップ6:最高の顧客と合わない顧客(良い顧客/NG顧客)

最後に、相性の良し悪しを言語化します。「誰でもいい」から脱却するための重要な項目です。

  • Q6-1. 「最高の顧客3社」を思い浮かべて、共通点は?
    • (記入例:新しいツールの導入に抵抗がない、決裁スピードが早い)
  • Q6-2. 逆に「正直あまり合わなかった」会社の共通点は?
    • (記入例:丸投げ体質、担当者に権限が全くない、安さだけを重視する)
  • Q6-3. その結果、ターゲットを3ランクに分けると?
    • Tier1(ど真ん中):
    • Tier2(条件が揃えば):
    • Tier3(受け身対応):

AIを使ってICPの「叩き台」を秒速で作る方法

ここまで読んでも、「ゼロから埋めるのは大変そうだ」「自分の業界のことが客観視できない」と感じる方もいるかもしれません。

そんなときは、ChatGPTなどの生成AIを活用して「叩き台」を作らせるのがおすすめです。以下のプロンプトをコピーして、ご自身のサービス情報を入力するだけで、上記の6ステップに沿った仮説を出力してくれます。

あくまでAIによる仮説ですが、白紙の状態から悩み始めるよりも、はるかに効率的に議論をスタートできます。


以下、コピペ用プロンプト

# Role
あなたは、BtoBビジネスに特化した「ICP(Ideal Customer Profile)設計コンサルタント」です。
ユーザーが提供するサービス情報をもとに、
・最初の叩き台となるICP案を自動で作成し、
・ユーザーがカンタンに修正・調整できるように、
チェックポイントと修正のヒントもセットで提示してください。

# 前提
- ユーザーはマーケティングや営業の専門家とは限らないため、「シンプルな日本語」で分かりやすく説明してください。
- 専門用語を使う場合は、かんたんな一言説明も添えてください。
- 出力は「①〜③の3部構成」でお願いします。

---

# 入力される情報

ユーザーは、次のような情報を「<<SERVICE_INFO>>」で囲んで渡します。

- サービス・プロダクトの概要
- 想定しているターゲット
- 既存の顧客例(もしあれば)
- 単価レンジやビジネスモデル など

例:
<<SERVICE_INFO>>
ここにサービスの説明や、既存顧客の情報が入る
<<SERVICE_INFO>>

---

# あなたが行うこと

## ① サービス情報の要約(まず全体を整理)

1. ユーザーが渡した <<SERVICE_INFO>> を読み、次の項目に分けて短く整理してください。

- サービスの一言説明:
- 提供価値(どんな成果・メリットを出すものか):
- 主な利用部署・利用者像:
- ざっくり単価レンジ・ビジネスモデル:
- 既存顧客の共通点(分かる範囲で):

※ここは「ユーザーにとって、自分たちのサービスを客観視できるメモ」のつもりで、A4半ページ以内のボリュームで簡潔にまとめてください。

---

## ② 想定されるICP(叩き台)の自動作成

次に、以下の「6ステップのフォーマット」に沿って、あなたが考える“現時点のベストなICP案”を作成してください。

### ステップ1:どんな会社に売りたい?(会社のプロフィール)

- 業種:
- 会社の規模(従業員/売上など):
- メインのターゲットエリア(地域):

### ステップ2:その会社は、何を目指している?(ゴール)

- ざっくり、何を伸ばしたい会社か?:
- 担当者が追っていそうなKPI(数字):
- 「うまくいった状態」を一言で言うと?:

### ステップ3:どんなことで困っている?(課題)

- よく持っていそうな悩みの一言:
- その悩みが数字にどう現れそうか?:
- その悩みを放置したときのまずい未来:

### ステップ4:誰が決める?誰と話す?(組織・決裁フロー)

- 主に話す相手(役職・部署):
- どの予算からお金が出ることが多そうか?:
- 決まるまでのざっくりステップ:

### ステップ5:どんな動きがあったら「今がチャンス」?(行動サイン)

- 本気で検討していそうな行動:
- 気になり始めたレベルの行動:
- 営業やマーケが「優先フォローしたい」と判断する具体条件(if条件):

### ステップ6:最高の顧客と合わない顧客(良い顧客/ネガティブICP)

- 「最高の顧客」の共通点(3つ程度):
- 「正直あまり合わない」顧客の共通点(3つ程度):
- Tier1(ど真ん中)条件:
- Tier2(条件が揃えば)条件:
- Tier3(問い合わせがあれば)条件:

※ここでは、
- ユーザーが渡した情報
- 一般的なBtoBマーケ・セールスの知見
をもとに、「仮説ベースでよいので、できる限り具体的に」書いてください。

---

## ③ ユーザー向け:チェック&修正ガイド

最後に、ユーザーが自分でICPを微調整しやすいように、
「各ステップごとに、確認すべきポイント」と
「こうだったら、こう修正して」という例を出してください。

形式は次のようにしてください:

### ステップ1のチェックポイント(会社プロフィール)

- 質問A:「今、実際に一番ハマっている既存顧客3〜5社を思い浮かべたとき、この業種・規模のイメージとズレていませんか?」
  - YES(ズレている)なら → 業種や規模を、実際にハマっている顧客に近い表現に書き換えてください。
  - 修正例:
    - 修正前:『IT企業全般』
    - 修正後:『BtoB向けのSaaSを提供しているIT企業』

…という形で、
- ステップ1〜6それぞれについて、
  - 2〜3個の「確認質問」
  - 「ズレていた場合の修正の方向性」
  - 可能なら「ビフォー/アフターの例(短文でOK)」
を提示してください。

---

# 出力形式

出力は、次の順番で、見出しをつけてください。

1. 「① サービス情報の要約」
2. 「② 想定されるICP(叩き台)」
3. 「③ チェック&修正ガイド」

最後に一言だけ、

「修正したい箇所があれば、ステップ番号と項目名(例:ステップ3の“悩みの一言”)と、直したい内容を教えてください。いっしょにブラッシュアップ案を出します。」

と添えてください。

<<SERVICE_INFO>>
--サービスの概要(ChatにPDF資料を添付した場合はその旨も記載)をここに記載--
<<SERVICE_INFO>>

上記をAIに入れるとICPの叩き台が数秒で出力されます。

よくある質問:「絞り込んだら機会損失になるのでは?」

ここまで読んで、こんな不安を感じる方もいるかもしれません。

「ここまで細かく条件を絞り込んだら、アプローチできる企業の母数が減って、機会損失になるのではないか?」 「営業現場からは『リストが足りない』と怒られるのではないか?」

ごもっともな懸念です。実際、ICPを導入しようとすると、必ずと言っていいほど社内からこの反発が出ます。

これに対する回答はシンプルです。**「絞り込むのは『ターゲット』ではなく『リソースのかけ方』である」**と伝えてください。

ICPを決めたからといって、それ以外の企業からの問い合わせを拒否するわけではありません。Webサイトには誰でもアクセスできますし、問い合わせがあればもちろん対応します。

重要なのは、自分たちから能動的に仕掛ける(アウトバウンドや高額な広告配信をする)対象を絞ることです。

ここで役立つのが、先ほどのテンプレートでも出てきた「Tier(ティア)」の考え方です。

  • Tier1(最優先):ICPに完全に合致する企業。ここにマーケティング予算とトップセールスの時間を集中的に投下する。ABMの対象。
  • Tier2(準優先):一部条件は合う企業。メルマガやセミナーなどで育成し、タイミングが来たらアプローチする。
  • Tier3(その他):基本的にはインバウンド待ち。自動化されたメールなどで対応し、人的リソースは極力割かない。

このように濃淡をつけることで、機会損失を恐れることなく、効率的な活動が可能になります。「捨てる」のではなく「優先順位をつける」と考えれば、現場の理解も得やすくなるはずです。

まとめ:ICPは一度作って終わりではない

ICPは、一度策定したらそれで完成、という種類のドキュメントではありません。

市場環境は変わりますし、自社のプロダクトも進化します。半年前に設定した「理想の顧客」が、新機能のリリースによってガラリと変わることも珍しくありません。

まずは今回紹介したテンプレートやAIプロンプトを使って、Ver.1.0を作ってみてください。そして、四半期に一度くらいのペースで、「最近受注した良いお客さんは、この定義に当てはまっているか?」「逆に、定義から外れているのに受注できた事例はないか?」を見直してみてください。

その繰り返しこそが、組織の営業力・マーケティング力を底上げする一番の近道です。

もし、自社データの分析や、精度の高い企業ターゲティングにお困りの際は、URUTEQのデータベース活用も検討してみてください。私たちが保有する膨大な企業データと分析機能が、あなたの会社の「勝ちパターン」を見つける手助けになるはずです。

まずは、チームメンバーと一緒に「私たちの理想のお客様って、どんな人たちだっけ?」と話し合うことから始めてみましょう。それだけでも、霧が晴れるような発見があるかもしれません。

著者紹介
井上翔太
ウルテク| URUTEQ 事業責任者 ---- 新卒で証券会社に入社し、BtoCのセールスを経験。その後、PR代理店にてBtoB・BtoC企業向けのデジタルマーケティングコンサルティングや新規営業を担当。ログリー株式会社入社後は、BtoBマーケティング向けSaaSの開発やマーケティング、セールスなどを行う。現在は、これまでの経験を活かし、BtoBマーケAIエージェント「アカウントインテリジェンスツール ウルテク」の事業責任者を務めている。

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