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インテントデータとは? | BtoB営業・マーケの成果を変える「顧客の興味」を知る方法

インテントデータとは、顧客のWeb上での行動履歴から「興味関心」や「検討タイミング」を特定するためのデータです。従来の企業属性データでは捉えきれなかった「今、自社サービスを必要としているか」というシグナルを検知することで、BtoB営業やマーケティングの成果は大きく変わります。本記事では、インテントデータの基礎知識から、注目される背景、そして商談率向上や解約防止といった具体的な活用メリットまでをわかりやすく解説します。


はじめに

「せっかく精度の高いターゲットリストを作って営業に渡したのに、まったくニーズがなかったと言われてしまった」 「リードの数は目標を達成しているはずなのに、そこからの商談化率が伸び悩んでいる」

BtoBマーケティングや営業企画の現場にいると、こうしたジレンマに直面することは一度や二度ではないはずです。

あるBtoB向けSaaS企業のマーケティング担当者の話です。彼は自社サービスと相性が良いはずの「従業員数500名以上、製造業」という条件で完璧な企業リストを作成し、インサイドセールスチームに託しました。しかし、結果は散々でした。架電しても担当者につながらないか、つながっても「今は間に合っています」「検討していません」と即座に断られるケースが大半だったのです。営業チームからは「リストの質が低いのではないか」という無言の圧力がかかり、彼は頭を抱えてしまいました。

この担当者の苦悩は、多くの企業で共通しています。従来の業種や売上規模といった企業属性(デモグラフィックデータ)によるターゲティングは、もちろん重要です。これらは「その企業が自社の顧客になり得るか」という適性を判断する基準にはなります。

しかし、そこには決定的に欠けている視点があります。それは、その企業が「今、サービスを必要としているかどうか」というタイミングの情報です。

そこで今、BtoB営業・マーケティングの成果を劇的に変える鍵として注目を集めているのが、インテントデータ(Intent Data)です。

これは、顧客のWeb上での行動から興味関心や購買意欲を読み解くためのデータです。本記事では、インテントデータの基礎知識から、なぜ今BtoBで不可欠とされているのか、そして具体的な活用メリットまでを、現場の視点を交えて詳しく解説します。

単なるリストへのアプローチから、顧客が求めているタイミングを捉えた提案へ。営業効率と成果を変えるための第一歩として、ぜひお役立てください。

インテントデータとは:顧客の「今」の興味を知るデータ

インテントデータとは、直訳すれば意図データとなりますが、マーケティングや営業の文脈では、顧客が何に興味を持ち、どのような購買意図を持っているかを示す行動データのことを指します。

もっと平たく言えば、顧客が発している「これが欲しい」「これに困っている」というデジタル上のシグナルです。

「属性データ」と「インテントデータ」の決定的な違い

これまでBtoBマーケティングで主役だったのは、企業データベースに基づく属性データでした。これとインテントデータはどう違うのでしょうか。両者の役割を整理すると、その違いが鮮明になります。

まず、属性データ(デモグラフィックデータ)です。これは業種、所在地、従業員数、売上規模、設立年数といった、企業そのものの静的な情報を指します。これらは、その企業が自社のターゲット条件に合致するかどうか、つまりFit(適合性)を判断するために使われます。例えば、「当社のツールは従業員100名以上のIT企業に最適だ」という判断をするための基準です。

一方で、インテントデータは動的な情報です。Webサイトの閲覧履歴、特定の資料のダウンロード、検索エンジンでのキーワード入力、比較サイトでの滞在時間などがこれに当たります。これらは、その企業が今、何に関心を持っているか、つまりInterest(興味)やTiming(タイミング)を判断するために使われます。「この企業は今、セキュリティ対策に関心が高まっているようだ」といった推測が可能になるのです。

これを釣りに例えるなら、属性データは「この池にはどんな種類の魚がいるか」を知るための地図のようなものです。対してインテントデータは、「どの魚が今、お腹を空かせているか」を教えてくれる魚群探知機のようなものと言えるでしょう。どんなに魚がたくさんいる池でも、満腹の魚に餌を投げ続けても釣果は上がりません。お腹を空かせている魚を見つけることができれば、成果は大きく変わります。

つまり、属性データがターゲットとしての適性を示すのに対し、インテントデータはアプローチすべきタイミングを教えてくれるものなのです。この両方を組み合わせることで初めて、適切な相手に、適切なタイミングでアプローチすることが可能になります。

データの出所による3つの分類

インテントデータと一口に言っても、そのデータがどこから来ているかによって性質や使い方が異なります。大きく分けて、以下の3つのタイプがあることを理解しておきましょう。

一つ目は、1stパーティデータです。これは自社が直接保有しているデータのことを指します。自社のWebサイトへのアクセスログ、問い合わせフォームからの入力情報、自社で運用しているMA(マーケティングオートメーション)ツール内の行動履歴などが該当します。 このデータは自社に対する直接的な興味を示しているため、非常に信頼性が高く、具体的です。「A社の担当者が料金ページの価格表を3回見ている」といった事実は、強い購買意欲の表れと言えます。しかし、弱点もあります。それは、自社サイトを訪れていない企業の動きは一切分からないということです。まだ自社を知らない潜在層のアプローチには使えません。

二つ目は、2ndパーティデータです。これは、パートナー企業やメディアなどが保有している1stパーティデータを、許可を得て共有してもらうものです。例えば、特定の業界メディアと提携し、そのメディアの読者データを活用させてもらうケースなどがこれに当たります。自社だけではリーチできない層の情報を得られるメリットがありますが、提携先との関係性に依存するため、いつでも自由に使えるわけではありません。

三つ目が、3rdパーティデータです。これは外部のデータプロバイダーやアドテクベンダー、メディアネットワークから提供されるデータです。特定のWebサイトに限らず、インターネット上の広範な行動履歴を集約したものです。 「特定のキーワード(例:クラウド会計)で頻繁に検索している」「競合他社の製品比較サイトを閲覧している」といった情報を、IPアドレスなどを元に企業単位で特定して提供されます。 このデータの最大の強みは、自社サイトには来ていないが、市場でアクティブに情報収集をしている企業を検知できる点にあります。まだ自社を認知していない潜在顧客を見つけ出すには、この3rdパーティデータの活用が鍵となります。

これらを組み合わせることで、「自社サイトには来ていないが、競合他社の製品を熱心に調べている企業」や「自社のメルマガには反応していないが、外部のニュースサイトで関連技術の記事を読み漁っている企業」といった、これまで見えなかった顧客の姿が見えるようになります。

なぜ今、BtoBでインテントデータが必要なのか

これまでも優秀な営業担当者は、新聞の人事欄や業界ニュースを見て「この会社は攻め時だ」と判断してきました。ある意味で、アナログなインテントデータを活用していたわけです。しかし今、テクノロジーを用いたインテントデータが不可欠と言われる背景には、BtoB購買プロセスの劇的な変化があります。

購買活動の「デジタル化」と「見えない検討」

かつてBtoBの商材を購入する際は、まず付き合いのあるベンダーや、展示会で名刺交換をした営業担当者に声をかけ、情報を収集するのが一般的でした。営業担当者は、情報提供者として初期段階から検討プロセスに入り込むことができました。

しかし現在はどうでしょうか。皆様自身が何かツールを導入する際の手順を思い出してみてください。まずGoogleで検索し、比較記事を読み、口コミサイトを確認し、各社のWebサイトで機能や料金をチェックするはずです。

実際、多くの調査において、BtoBの購買担当者は営業担当者にコンタクトを取る前に、購買プロセスの60%から70%程度をデジタル上で完了させていると言われています。情報収集、課題の特定、ソリューションの比較検討といったプロセスの大半が、営業担当者のあずかり知らぬところで行われているのです。

顧客がある程度候補を絞り込み、「あとは価格と詳細条件を確認するだけ」という状態になって初めて、ベンダーに問い合わせが来ます。これは営業側からすれば、コンタクトした時点ですでに勝負の大勢が決まってしまっていることもしばしばある、という厳しい現実を意味します。競合他社が有利な状況で比較検討が進んでいれば、そこから巻き返すのは容易ではありません。

「ダークファネル」へのアプローチ

この、営業やマーケティング部門が直接関知できない場所(自社サイト外の検索エンジン、SNS、口コミサイト、外部メディアなど)で行われている検討プロセスのことを、マーケティング用語で「ダークファネル」と呼びます。

従来のやり方、つまり問い合わせや資料ダウンロードといった明確なコンバージョンがあるまで待つスタイルでは、このダークファネルの中にいる顧客の存在に気づくことができません。顧客が水面下で活発に動いているにもかかわらず、企業側からは静まり返っているように見えるのです。

しかし、インテントデータを活用すれば、この暗闇に光を当てることができます。

「特定の業務課題について検索している」 「解決策を探して専門記事を読んでいる」 「競合製品のレビューをチェックしている」

こうした微細なシグナルを捉えることで、まだ問い合わせに至っていない、しかし確実に検討フェーズに入っている企業を特定できます。そして、彼らが最終的な意思決定をしてしまう前に、「お困りではありませんか?」と能動的にアプローチすることが可能になるのです。

待っているだけでは出会えない顧客に、先回りして会いに行く。これが今のBtoB市場でインテントデータが必要とされる最大の理由です。

インテントデータ活用の3つのメリット

概念や必要性は理解できても、実際にビジネスの現場でどのような成果につながるのかが重要です。インテントデータを導入し、活用することで得られる具体的なメリットは、主に以下の3つに集約されます。

1. タイミングの良いアプローチによる商談率向上

営業活動において、タイミングほど重要な要素はありません。どんなに優れた製品でも、課題を感じていない顧客に売り込むのは困難です。逆に、顧客がまさにその課題に直面し、解決策を探している最中であれば、話を聞いてもらえる確率は格段に上がります。

インテントデータを活用すれば、「ちょうどその課題について調べていたところだ」というタイミングを狙って連絡することができます。

あるIT企業のインサイドセールス部門では、それまで無作為に抽出したリストに対して片っ端から架電を行っていました。アポイント率は低く、担当者の疲弊も深刻でした。そこで、インテントデータを用いて「直近でセキュリティ関連のキーワード検索が増えている企業」を抽出し、優先的にアプローチするように切り替えました。 すると、電話口での顧客の反応が変わりました。「実は最近、セキュリティの見直しを検討していて…」という会話が自然に生まれるようになったのです。結果として、アポイント獲得率は以前の数倍に跳ね上がり、営業担当者のモチベーションも大きく改善しました。

闇雲なコールドコール(飛び込み電話)ではなく、ニーズが顕在化しつつある企業に絞ってアプローチできるため、リードの質に対する営業部門の不満解消にもつながります。

2. 優先順位付けによる営業効率化

多くのBtoB企業では、保有しているリード(見込み客)の数に対して、営業リソースが不足しています。数千、数万件あるハウスリストのどこから手をつけるべきか。多くの場合は「過去に名刺交換した順」や「企業規模が大きい順」といった基準で優先順位をつけていますが、それが受注確度と直結しているとは限りません。

インテントデータを使えば、この優先順位付け(トリアージ)の精度を劇的に高めることができます。

例えば、リードスコアリングの仕組みにインテントデータを組み込みます。「企業規模が大きい」という属性点に加え、「直近1週間で関連キーワードを頻繁に検索している」「競合比較サイトを見ている」といった行動点が高い企業を「最優先アタックリスト」として抽出します。

限られた営業担当者の時間を、検討度合いが低い顧客への啓蒙活動ではなく、今まさに購入を検討しているホットな顧客への提案に集中させることができます。これにより、同じ稼働時間でも、受注件数や売上といった成果を最大化することが可能になります。

3. 解約予兆の検知(カスタマーサクセス活用)

インテントデータの活用範囲は、新規顧客の獲得だけにとどまりません。既存顧客の維持、つまりカスタマーサクセスの領域でも大きな価値を発揮します。

契約中の顧客が、自社サービスの活用法について調べているなら健全な状態と言えます。しかし、もし既存顧客が「競合他社のサービス名」や「〇〇サービス 解約方法」「乗り換え キャンペーン」といったキーワードで頻繁に検索し始めたとしたらどうでしょうか。それは、自社サービスに不満を持ち、解約(チャーン)のリスクが高まっている危険なサインかもしれません。

通常、解約の意思は、解約通知書が届くまで表面化しません。営業担当者が定例ミーティングで訪問したときは笑顔で対応していても、裏では着々と乗り換えの準備を進めていることは珍しくありません。

インテントデータでこうした「不穏な動き」を早期に検知できれば、手遅れになる前に手を打つことができます。カスタマーサクセスチームが先回りして連絡を取り、「最近、お困りのことはありませんか?」「新しい活用事例をご紹介します」といったフォローを行うことで、不満を解消し、解約を未然に防ぐアクションが取れるのです。

「データさえあれば売れる」わけではない:活用への現実的な視点

ここまでインテントデータの可能性についてお話ししてきましたが、ここで一度、冷静な視点も提示しておきたいと思います。インテントデータは強力な武器ですが、導入しさえすれば自動的に売上が上がる「魔法の杖」ではありません。

導入を検討する際には、次のような懸念や課題に直面することがよくあります。

「データで興味があることはわかっても、現場がどう動けばいいかわからない」 これは非常によくあるケースです。「この会社が興味を持っています」というリストを渡されても、営業担当者が「御社、最近〇〇について検索していましたよね?」と電話するわけにはいきません。それでは顧客に「なぜ知っているのか」と不気味がられてしまいます。 インテントデータはあくまで「裏付け」として使い、アプローチのトーク自体は「最近、御社の業界では〇〇という課題が増えていますが、御社はいかがですか?」といった、自然な仮説提案の形をとる必要があります。データを見るだけでなく、それを活かすためのトークスクリプトや営業シナリオの設計がセットで必要になります。

「データの精度は100%ではない」 インテントデータは、IPアドレスやクッキー情報を元に企業単位で推測するものが多く、必ずしも「決裁権を持つ担当者」が検索しているとは限りません。新入社員が勉強のために調べているだけかもしれませんし、単なる業界研究かもしれません。「興味あり」と判定された企業にアプローチしても、実際には検討していなかったという空振りはゼロにはなりません。 これを「データが間違っているから使えない」と切り捨てるのではなく、「属性データだけで絞り込むよりは、はるかに確度が高い」という確率論で捉える姿勢が重要です。

「コストとリソースの問題」 3rdパーティのインテントデータを提供するツールは、それなりの導入コストがかかります。また、データを分析し、MAツールと連携させ、営業へパスを出すという運用フローを回すための人的リソースも必要です。 いきなり高額なツールを全社導入するのではなく、まずは特定の商材や一部の営業チームでスモールスタートし、費用対効果を検証しながら広げていくのが賢明な進め方でしょう。

このように、インテントデータは「導入して終わり」ではなく、営業とマーケティングが連携し、泥臭い運用と改善を繰り返すことで初めて真価を発揮するものです。しかし、その労力をかける価値は十分にあります。見えない顧客の動きを可視化しようとする努力は、確実に組織の営業力を底上げするからです。

まとめ:顧客の「欲しいタイミング」を捉える営業へ

本記事では、インテントデータの基本概念から、BtoB市場での必要性、そして具体的なメリットと留意点について解説してきました。

インテントデータの本質は、顧客の「属性」だけでなく「行動」を見ることで、最適なアプローチのタイミングを教えてくれることにあります。

  • 属性データ(Fit)とインテントデータ(Intent)を掛け合わせ、ターゲットとしての適性とタイミングの両方を見極める。
  • ダークファネルにいる、これまで見えなかった匿名検討層を見つけ出す。
  • 行動データに基づいて優先順位をつけ、限られた営業リソースで最大の成果を上げる。

これらを実現することで、営業とマーケティングは「数打ちゃ当たる」の消耗戦から脱却し、より戦略的で科学的なアプローチへと進化できるはずです。

これから取り組みを始める方は、まず自社の足元にあるデータから目を向けてみてはいかがでしょうか。「自社のWebサイトにどんな企業が来ているか(1stパーティデータ)」を確認するだけでも、多くの発見があるはずです。また、営業チームに「最近受注した顧客は、契約前にどんな動きをしていたか」をヒアリングし、ターゲット企業が調べそうなキーワードや閲覧しそうなメディアを洗い出すことも立派な第一歩です。

本格的なツールの導入を検討する際は、自社の課題に合ったデータソースや機能を持つものを選ぶことが大切です。まずは情報のアンテナを張り、自社のビジネスにおいて「顧客の興味」をどう捉えるべきか、議論を始めてみてください。

さらに詳しいツールを選定する際のポイント、具体的な活用事例を知りたい方は、以下の記事もぜひ参考にしてください。より実践的なノウハウをまとめています。

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著者紹介
井上翔太
ウルテク| URUTEQ 事業責任者 ---- 新卒で証券会社に入社し、BtoCのセールスを経験。その後、PR代理店にてBtoB・BtoC企業向けのデジタルマーケティングコンサルティングや新規営業を担当。ログリー株式会社入社後は、BtoBマーケティング向けSaaSの開発やマーケティング、セールスなどを行う。現在は、これまでの経験を活かし、BtoBマーケAIエージェント「アカウントインテリジェンスツール ウルテク」の事業責任者を務めている。

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